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番外編 ただ君が愛しくて(星見視点)

ただ君が愛しくて③

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 明かりを落として、ふたり布団に入った。
 マンションだからさほど寒くはない。しかも、菜のかの柔らかい身体がぴたりとくっついているせいで、身も心もあたたかく感じる。

「こういうのもたまにはいいな。なんか、距離が近くて……」

 腕の中で、菜のかが小さく頷いた。こうしていると、かわいさのあまり押し潰すほど強く抱きしめたくなる。

「ちょ、了さん……息が荒いっ」

 彼女はくすくすと笑うが、これだけ密着していれば男なら全員欲情するはずだ。彼女はまだ、男の生理についてわかっていない。
 菜のかが身じろぎして後ろを向いた。赤ん坊のように丸くなったので、腰に硬くなったものを押し付ける。

「ん……だめ」
「なんで。いいだろ?」

 彼女のうなじに鼻先を埋めると、ふんわりとシャンプーの匂いがした。そのまま後ろから手を回し、胸に指を伸ばす。どうやらブラはつけていないようだ。

「あ……ん、了さん、てば」

 乳首に指が触れると、それはすぐに硬くなった。柔らかな肉をやわやわと揉みしだき、人差し指と中指で先端を摘む。菜のかの息遣いが荒くなってくる。堪え切れずに布団に口を押し付けたのを見て、欲望に更に火が付いた。
 胸をまさぐっていた手を下に滑らせ、太腿からヒップにかけてを撫でる。通常ならショーツのラインがあるはずだが、それが指に触れない。

「まさか、履いてないのか?」
「だって……お風呂に入ったのに替えないなんて嫌だったんだもん」
「確かにな」

 俺のスウェットは兄貴のを借りた。下着は未開封のストックがあった。
 菜のかもパジャマは綾子さんのものを借りたが、下着は未使用のものがなかったらしい。
 気がつけば、彼女の首筋に口づけを落とし、後ろから股間を擦りつけていた。
 こうなると男は止められないものだ。しかし、まさかこんなことになるとは思っていなかったから、避妊具を持っていない。ウェディングドレスを彼女に着せてやりたいという思いが、なんとか俺を踏み止まらせている。
 こうなったら菜のかだけでも、と思ってしまうのは男の悪い癖だ。彼女が着ている借り物のパジャマのボタンを、ひとつひとつ外していく。

「ね、了さん、何してるの?」
「しっ。声抑えて」
「ちょっ……ぁ……んっ――」

 淡いピンク色の突起に吸い付くと、菜のかは小さく震えて仰け反った。
 硬くなった乳首と対照的に、重みで流れた乳房が柔らかい。
 彼女を仰向けにし、それを手で寄せれば、綿菓子のようなその感触に心が沸き立つ。

「んっ、ん……んんっ」

 音を立てないよう、口の中で乳首を転がした。時々優しく歯を立てると、菜のかが俺の腕を強く握ってくる。

「り、了さん……っ、これ以上は、だっ……ん、む」

 うるさいので口づけで唇を塞いだ。口内を艶めかしく蹂躙しながら、固く閉じた彼女の太腿のあいだに、自分の膝を割り込ませる。
 俺の腕を掴む手にますます力が籠った。菜のかは何かを予感しているらしい。彼女の抵抗を振り切って、借りたパジャマのウエストに俺は空いた手を忍び込ませた。

「んんっ――」

 口の中にいっぱいに、甘い喘ぎが響き渡る。
 指に絡みつく、あたたかな粘液。
 菜のかの秘所は、蜜壺から溢れるものですでにぐっしょりと濡れていた。指を前後に動かすと、ぬるりと滑って、そのたびに彼女は小刻みに震える。

「どう? 気持ちいい?」

 あわいの上端にある粒を、指の腹で優しく摘んだ。それは触れるごとに、こりこりと硬さを増す。

「あ、あ、だっ……だめぇっ……」
「大丈夫だよ。大きな声を出さなければいい」
「む……り……っ」
「じゃ、いくときに口塞いであげるから」

 ぷくりと尖った乳首を再び口に含み、濡れそぼった蜜園に愛撫を続ける。
 くちくちという淫らな音が、耳に絡みつく。
 俺自身、欲望を抑えることにそろそろ限界を感じている。

「菜のか、俺のも触って」

 そう囁くと彼女は、熱くなった俺の昂りを細い指で握りしめた。
 煮えたぎった彼女の中に、ゆっくりと中指を沈めていく。
 するりとのみ込む様子は、まるで俺を待っていたかのようだ。
 一本じゃ足りないだろう、とすぐに二本に増やす。そして丹念に、一定のペースで、襞のあいだを探っていく。
 それと同時に、自身の指の動きに合わせて、菜のかの手に握られたものを前後に動かした。こうすると、彼女の中にいるような気がして快感が酷く増すのだ。
 どうやら俺も、激しい欲望の渦に飲み込まれそうになっているらしい。
 このまま彼女の手をすり抜けて、膨れた肉鞘の中に己を突き入れてしまいたかった。そしてそのまま、奥の壁に熱いものをぶちまけたい――。

 やがて、菜のかの手の動きが止まりがちになった。
 激しく喘いで、声を洩らさないよう必死に耐えている。
 吐息で唇が渇くのか、時折かわいらしい舌でちろりと舐める――。
 それが色っぽくて、おそろしくそそられた。
 さくらんぼに似たぽってりした唇。
 舌。
 小さな歯。
 白い喉元。
 じっと見ていると、握られた中心が暴発しそうになる。
 彼女が薄っすらと目を開けて、視線が絡み合った瞬間、辛抱が限界に達した。

「……んっ!!」

 驚いたような彼女の声に、ハッとする。
 気づけば思わず指を引き抜いて、彼女の蜜口に先端を突き付けていた。

「ごめん」

 すぐさま自分のものを彼女から抜き去る。
 正直なところ、男にとって途中で退くのは、相当辛いものがある。
 しかし、菜のかを辛い目に遭わせてはいけないという気持ちが勝った。
 たった一度で子供ができるとは思わないが、俺は彼女の夢をなんとしても叶えてやりたいのだ。
 自分を諌めるためにも、もう一度口づけから始める。
 柔らかな唇を吸い、ちょっと甘く噛んでみる。そうしながら、再び彼女の中に指を沈める。
 菜のかの呼吸はすぐに荒くなり、声を逃すように激しく唇を求めてきた。
 背中が弓なりに反る。握りしめた俺の腕に爪が立てられる。
 そして、びくびくと痙攣しながら、彼女は達した。
 陶酔に浸る彼女の美しい顔をじっと見ながら思う。

 ――俺は、菜のかのことが心から愛しい。

 腕の中に抱きしめた彼女の髪に、何度も口づけた。
 そうするうちに、俺の腕を掴む彼女の手から、徐々に力が抜けていく。
 しかし、半裸になった彼女と密着しているせいで、俺のものは一向に萎えそうになかった。彼女の手がずっとそこを握っているから、余計に。

「俺……ちょっとドラッグストアに行ってきていいかな」

 逡巡の果てに言ってみる。すると菜のかは、声には出さずに「えっ」という顔をした。

「遅くまでやってる店がこの近くにあるんだ。すぐに戻るから」

 そう言って、布団から抜け出す。着て来た服に着替え、静かに廊下に出た。
 このマンションはオートロックじゃないから、兄を起こす必要はないだろう。と、玄関で靴を履いていたところ――。

「あれ? どうした?」

 突然声をかけられて、心臓が飛び跳ねた。たった今自室から出てきたのか、真後ろに兄がいる。

「いや……菜のかが、化粧品がないって言うから、ちょっとドラッグストアに」
「ああそうか、急な泊まりだと女の人は大変だな。ちょうどいいや。俺も一緒に行くよ」

 えっ。
 ……それはまずい。菜のかのために化粧品を買いに行くというのはただの口実だ。避妊具を買いに行くのに兄を同伴するなんて話は、聞いたことがない。

「俺が買ってくるよ。何が欲しい?」
「酒だよ。お前飲まないからわからないだろう? 自分で見て選ぶから、一緒に行こう」

 そう言って兄はいそいそと財布を持ってきて、俺をドアの外に押し出した。
 これはまったく想定外の出来事だ。一体どうやって兄に気づかれずにあれを手に入れようか――ドラッグストアへの道すがら、そればかり考える俺だった。
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