幼なじみの第二王子(女装)に甘く迫られています♥

ととりとわ

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第15話 囚われの王と翼を持つ弟

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「らしいね。王族の我々は指を咥えて見てるしかないけど。それとも、私のように世間に顔が知れた人間でも、仮面をつけていればわからないかな?」

 そう言って、美少年めいた兄はほのかに頬を染めた。子供みたいだ。ルシオは複雑な気持ちで兄の背中に手を当てる。

「そのうち替え玉でも用意して遊びにいけばいい。そっくりな兄弟なら僕が手伝ってやれたのに、お役に立てなくて残念だよ」
「お前の方が兄みたいだね」

 くすりと笑ったジュリアスを前に、ルシオは真剣な眼差しを向ける。

「そんなことないよ。兄さんは兄さんだ。じゃ、もう行くよ」

 そう言ってルシオが兄に背を向けたとき、後ろから声がかかった。

「もしも私が死ぬようなことがあったら、あとを頼む」

 ルシオは息をのんだ。背後から聞こえた声は、兄のものとは思えないくらいに低く、暗い。ルシオは眉をひそめて振り返った。

「何か……あったのか?」
「いや。何も」

 さらりと言うジュリアスの顔はいつもと同じで朗らかだ。
 しかし、ルシオには仮面に隠された兄の本当の気持ちが分かる気がした。
 祖父も父も殺されたのだ。次に会う時に、自分が同じ姿で弟の前に立てるかわからない――兄はそう思っているのだろう。傀儡の王権は、今も薄氷の上に立っている。

「王国はどこも治安が悪くなっているらしいな」

 ジュリアスの声にハッとして、ルシオは顔を上げた。返事を考えあぐねていたが、当の兄はいつもの様子に戻っている。ルシオは頷いた。

「ここへ来る途中もいろいろ見聞きしたけど、貴族そのものが狙われているようだ」
「だからその格好か」

 ジュリアスは、ルシオが着ている薄汚れた外套に目をやる。

「ルシオ、くれぐれも気をつけてくれ。僕はいつでも、どこにいたってお前の味方だから」
「ありがとう。兄さんも」

 最後には王国式の敬礼をして、ルシオは王の執務室を出た。



「デローニ。例の件、宰相が手を回してくれるそうだ」

 来たときよりもややゆっくり歩きながら、ルシオが告げる。デローニは簡潔に返事をして、主人の後ろに下がった。
 兄に会ったあとはいつも、虚無感と焦燥感で胸が苦しくなる。穏やかな顔の裏に、玉座に就いたときから生きることを諦めた彼の骸が垣間見えるからだ。それなのに、彼を鳥かごから出してやれない無力な自分に、いら立ちを覚える。
 優しすぎる兄は王の器ではない。死をもって安らぎを手にいれるその日まで、自由を求めて心の中で叫び続けるだろう。

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