幼なじみの第二王子(女装)に甘く迫られています♥

ととりとわ

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第9話 不埒な男

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 スタンフィルが隣で咳払いをしたので、エレイナはアデルを追っていた視線を彼に戻した。

「エレイナさん。いや、エレイナ……と呼んだ方がいいかな?」

 急に馴れ馴れしくなった彼の態度に、瞬間的に不快な気持ちがもたげる。しかしそれを心の隅に押しやって、エレイナはよそ向きの笑顔をこしらえた。

「なんでしょう、スタンフィル様」
「まずはダンスでもいかがでしょう。お話はそのあと、どこかでゆっくりするとして」
「かまいませんわ」

 そう応えると、スタンフィルはいそいそと手を差し出した。彼の手に自分の手を重ねたところ、小刻みに震えが伝わってくる。エレイナが踵の高い靴を履いているせいで、横に並ぶと背丈がそう変わらないようだ。

 ふたりが広間の中央へ向かって歩き出したところで、ちょうど演奏が終わった。すぐに新しい曲が準備され、ダンスの集団に紛れる頃にふたたび演奏が始まる。
 ややアップテンポの明るく踊りやすい曲だ。しかし、ふたりは華麗にステップを……というわけにはいなかった。エレイナ自身、ダンスにはあまり自信がないが、スタンフィルの腕前はもっと酷い。

 彼のダンスはどことなくぎこちなかった。ふつうは女性の体格や動きに合わせて、無理のない姿勢で踊れるよう男性がリードをするが、彼の場合、力が入り過ぎているのかちっとも融通が利かない。会話をするどころか、視線を合わせる余裕すらないようだ。そのうえ足を踏み出すタイミングが毎度ワンテンポ遅れるので、いつ足を引っかけるかと気が気でない。

 ――なんだか、板切れと踊ってるみたいだわ。

 彼が他の客の動きを目で追っていて余裕がないのをいいことに、エレイナは眉をひそめた。これからは彼と何度となく踊ることになるのだから、ダンスの先生をつけてもらわないと。

 長く感じた曲が終わって、エレイナは彼に気づかれないよう、ほっと息をつく。スタンフィルはエレイナの手を取ったまま、次の曲が始まる前にと、急いで広間の端へと誘導した。一曲踊っただけで疲れてしまったのだろうか? ダンスに誘ったのは彼の方なのに。
 ちょうど給仕が通りかかって、ふたりでグラスに入ったパンチを受け取る。彼はそれをぐっとあおり、喉を鳴らして一気に飲み干してしまった。思わずエレイナは目を丸くする。

「豪快ですわね」
「そうかな。ちょっと、喉が渇いてしまって」

 彼をよく見ると、真っ赤に上気した顔には玉の汗が浮かんでいた。空になったグラスを持つ手は震えているし、やたらとそわそわしているので心配になってしまう。

「あの……大丈夫ですか?」

 彼はどんぐりのように小さくて丸い目をこちらへ向けたが、すぐに視線を外した。

「いや? 何も問題はありません」
「でしたらいいのですけど――」

 少し様子がおかしい。今日はじめに会った時にはずいぶん堂々として見えたが、やはり緊張しているのだろうか。

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