ドルオタ王女は、推しの育成に忙しい

推し

この世界に残った女は、私と莉央りおと真凜まりん、たった３人だけ。
私たちはフルールと呼ばれ、男たちを従えてそれぞれ国を作った。

「莉央りお姉ねえの趣味って、ほんとわかりやすい～♡」

「何よ、そういう真凜こそ雑食が過ぎるわよ。また新メンバー入れてるじゃない。」

「凛りんちゃん可愛いでしょお？いかにもツンデレって感じで、ベッドでも可愛いんだから♡」

「あなたもう手出したの？やめなさいよ、純粋にアイドルグループをプロデュースするのが私たちのモットーでしょ。」

「ヤダお姉様、純粋ってなぁに？真凜わかんない～♡」

少しお堅いお姉様キャラの綺麗系女子、莉央と、ぶりっ子で二面性ありの可愛い系女子、真凜。
アイドルプロデュースには、それぞれの好みと性格がよく現れていて面白い。

私たちは毎月、トップアイドルグループを決めるためだけに、大きなスタジアムに集まる。
そのために作ったトップアイドルスタジアムには、大きな舞台、観客席、そしてフルール３人のための特別観覧席があり、私たちは自分たちがプロデュースしたアイドルたちの一ヶ月の成果を競い合うのだ。

観客席はジャッジのための女子たち（AI） で埋め尽くされている。


「ひさ姉の好きな、朱鳥あすか君、今日ソロパートあるらしいよぉ。」

彼らの活躍が一番よく見える特別観覧席に着くと、真凜が軍服衣装のイケメンたちを指差した。

朱鳥あすかというのは、莉央がプロデュースするCROSSというアイドルグループのリーダー。
軍服モチーフの衣装に身を包んだ、イケメン４人グループ。

黒髪に赤のインナーカラー、細縁のインテリメガネをかけ眼鏡男子好きの女心をくすぐる。
本格的なダンス、歌唱力、笑顔を振りまかず終始ポーカーフェイスで魅せるパフォーマンスは、最高にカッコイイ。

凛としたインテリイケメンの朱鳥君が時折見せる微笑みに、私は呆気なく落とされた。
とんでもない技をぶっ込んできた莉央に感服する。

「好きなんて・・・言ってないし・・・！そりゃあ朱鳥君はかっこいいけど！！CROSSのみんなもカッコいいけど・・・・！！」

それでも素直に「推しです！！」とは言えない。
私にとってはラジェムの皆んなが、一番の推しなのだから。

「軍服とか制服系に弱いもんね、緋紗子ひさこ。うちの子達いいでしょう。」

「認めます！認めますけどぉ・・！！今日こそはラジェムが一番とって見せるから・・！」

「確かに最近ラジェムいいよねぇ♡私は夕雨ゆう君推し♡」

真凜は可愛い系男子が好きで、どこまでも趣味を貫いていた。
プロデュースしているキャンディフロス（キャンフロ）は、童顔で甘ったるい可愛い系男子のみで構成されたアイドルグループだ。

「夕雨は顔可愛いもんね。確かに真凜が推しそうな子ね。緋紗子気をつけてね、真凜ったらすぐ手を出すんだから。」

ああだこうだと騒いでいるうちに、会場が暗くなる。
暗闇に浮かび上がるペンライトの幻想的な光、女性たちの大歓声。

私たち３人が、王女ではなくただのドルオタに戻れる場所。
私はワクワクしながら、彼らの登場を待っていた。