今日の僕と明日の僕は、違う男をアイシテル

aika

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♤『俺の世界』 ※R-18

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目が覚めると、流華は自分のベッドに横たわっていた。






「え・・要?」


俺は元の世界に戻ってきたらしい。


恋人の要がいつものように裸で、俺の隣に眠っている。




「おはよう、流華。昨夜は最高だったよ。」



彼はいつもののんびりとした口調で、寝起きとは思えない爽やかな笑みを浮かべた。



「昨夜?」




まさかこいつ、咲羅に手出したのかよ。


あの純真無垢な天使に、いつも俺にさせているような淫らな行為をさせたのか?





よくわからない怒りがふつふつと湧いてくる。





「覚えてないなんて、言わせないぞ。昨夜の流華は可愛くて何度も求めさせられた。」




いつの間にか要は俺の上に乗り、胸元に優しいキスを落とす。


カッとなった俺は、要の胸板を思い切りグーで殴った。




「どうした?今日はご機嫌斜めかな、俺の天使。」




冗談でも笑えない。




「何すんだよ、このエロ魔神!!」




朝から俺の怒りは頂点に達していた。







♢♢♢♢♢♢♢♢♢





「一体どうしたんだ?昨夜は俺のことを、要さん、なんて可愛く呼んでいたのに。」




俺がどんなに怒っていても、要はまるで動じない。




コーヒーを入れて、トーストを用意し、普段通り俺の前に皿を置く。


いつもの朝食風景の出来上がり。






常に自分のペースで、我が道をいく。


そういう男は成功する。




俺の恋人たちは、社会的経済的に大きな成功を収めた男ばかりだけれど、

共通点は異常なまでのマイペースさ。これに尽きる。



彼らは皆、自分の世界を持っている。





中身が咲羅に変わっていることにさえ気付かずに、

一夜を楽しんだ要に、腹を立てている自分がいた。




これは嫉妬、だろうか?


妙な感覚だった。










今日の日付を確認する。


やはり昨日1日が丸々抜け落ちていた。




俺が咲羅の世界で一日を過ごしていたのは間違いない。





今日は名月と会う約束をしている日だった。






「やぁ、流華。久しぶりだね。」


見るからに怪しい雰囲気を漂わせる、この男。



法堂 名月(ほうどう なつき)と会うのは半年ぶりだった。



目がほとんど隠れている重めの前髪、スパイラルパーマをかけて

丸メガネをしているこの長身男は、かなりのキレ物。


一年のほとんどを中国で過ごしている。




先祖代々公言できない危ない仕事を手掛けている家系で、

幼い頃からいつも命を狙われてきたらしく、武術も堪能。



俺は彼から中国武術や、銃の扱い方を教わった。



師匠兼、愛人。





カンフー映画を思わせるような立ち襟、紐ボタンの服は、

見るからに高級な生地で仕立てられている。



黒地にゴールドの刺繍が施された独特な形の服だが、

彼の鍛えられた長身の体躯には驚くほどしっくりと馴染んでいた。





服に包まれた彼の身体を想う。


最後に寝たのは半年前だ。




この身体を堪能できるのかと思うと、

下半身が熱く疼いてくる。






「早速かい?相変わらずだな。まずは久々に手合わせを、と思ったんだけどな。」



彼は俺の視線の意図に気付いて、不敵な笑みを浮かべた。






オフィスビルの最上階。


彼が数百持っている、滞在先の一つ。



毎回会う場所が変わる。



命を狙われている彼は、常に護衛をつけているが、

日本滞在中は警備を解いて、俺と二人きりになる。



以前銃撃されたことがあったが、

彼はその状況さえ楽しんでいるように見えた。



好奇心の塊のような彼の瞳は、

いつも俺を夢中にさせる。




束の間の逢瀬。




日本に滞在している間だけ、俺は彼を独占できる。

それくらいの距離感が俺たちにはちょうどよかった。







「ぅあ・・・ッ、あぁ・・・」


久々に与えられる刺激に声が抑えられない。



名月は中国鍼灸に精通している、身体のスペシャリストだ。

他の男とのセックスでは得ることができない痛みと快楽を、

俺に与えてくれる。



痛みと快楽は紙一重。


彼との交わりは麻薬のように俺の身体を侵食し、

彼なしでは生きられないと思うほどに、

依存性の高い快楽を与えてくれる。




溺れる、とはまさにこういう行為を指すのだろう。




「鍛錬をサボっていたね、流華。身体が鈍ってるよ。」



肋骨から腹部にかけて、筋肉を確かめるようになでる。

彼の指先から電流が出ているのかと錯覚するほど、ビリビリと刺激が駆け抜けていった。


気功というものだろうか。


彼に触れられると、体中の欲望が開放されてエネルギーが充満していくような感覚に襲われる。




もう待てない。

その指で、俺の奥深くにビリビリと耐え難い快楽を与えてほしい。



懇願するように腰を揺らすと、彼が満足したように笑った。




「半年ぶりだもんね。今、開放してあげるよ。」




オフィスのような部屋。


社長が座るような大きな椅子に、デスク。

その後ろには、高層ビルが丸々見えるガラス張りの壁。



社長椅子に座った名月は、

俺の顔をデスクに押し付け、剥ぎ取るように下着をおろす。



無防備な秘部が彼にさらされ、彼の動きが何も見えない俺は緊張で息を飲んだ。




これから与えられる、狂おしいまでの快楽に、俺は耐えられるだろうか?



自分が自分でなくなるような、おぞましいほどの快楽。






彼の指が体内に侵入してきた途端、激しい電流が脳内を暴れ回った。



「あ~~っ、うぁ・・・ッ、あぁッ!!」


穴の奥に指が差し込まれ、電流のスイッチを押されたように体がビクビクと震える。



同時に、射精していた。


ビュ、ビュ、と彼の指の動きに合わせて、体液がデスクを濡らす。





「名月・・・っあ・・・っ」



「相変わらず威勢がいいな。流華の身体・・何度抱いてもそそるよ。」




はぁ、と息を乱している名月に、俺は興奮してわけがわからなくなっていた。





くねくねと、彼の指が体内で動く度に、気持ち良すぎて頭がイカれてしまいそうになる。




叫び出したいほどの快楽が脳内を犯して、尊厳も何もかもどうでもよくなって、


快楽だけに従順な、ただの動物になってしまう。





「名月の・・・っ、それ・・欲しい・・・っ」




懇願するように、彼の股間に手を伸ばす。






「これでもっと狂わせてやるから、覚悟しろよ。」



ハハッ、と嘲笑した後、彼は男らしい低い声で俺の脳内を犯した。




太腿に擦り付けられた名月の熱は、破裂しそうなほどにパンパンに膨れ上がっている。






「う・・っあ、ぉ・・・あぁ・・・うぁ・・・ッ・・」


声にならない獣のような呻きが、室内に重く響き渡る。



ガラス張りの壁の前で、俺は動物のように腰を振って快楽に耽っていた。





名月のペニスが俺の中に入り込むと、

そのほかのことはもうどうでも良くなってしまう。





快楽は与えられすぎると、気持ちイイのか苦しいのかわからなくなる。



喘ぎ声というよりは、動物の鳴き声に近い

自分の喉から発せられる音に、恥ずかしいと思う余裕さえ残されていなかった。




「名月・・・ぃ・・・」




名月との交わりは、服従の行為だ。


俺は名月に服従する。




「名月・・・なつき・・ぃ・・・」




「今注いであげるよ、俺の流華。」




彼に種付けされる快楽に、俺は溺れる。






「あ~~、あ~~ッ、うぅ・・・ッあ、・・・・っ!!!!」




身体の相性が良い。


そんな言葉では片付けられないほどの狂おしい快感が

俺の中を駆け抜けていった。




彼の体液をお腹の奥に感じた瞬間、同時に俺も勢いよく白濁を吐き出す。



ビュビュビュッビュ、ビュルッ、ビュル・・・!!



何度にも分けて体内から放出された精液は、まるで毒素のように排出されて、

身体に心地よい開放感を残した。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢





「それは不思議な夢だな。」



ピロートークというにはあまりに色気のない、いつもの俺たちの会話。


武術の話や、銃撃された話、仕事の話がほとんどだった。


今日は俺が夢の世界で一日過ごした話。


名月は超現実主義者に見えて、不思議な話が嫌いじゃない。

頭ごなしに否定したり、馬鹿にしたりしない。


中国にも古代から不思議な話がたくさん残っていると、以前話してくれたことがあった。




「桜雅っていう兄貴がいて、城みたいなデカイ家に住んでて、」



「桜雅・・・・」




名月が 神妙な顔つきで黙り込んだ。


何かを思い出そうとしているような表情。




「どこかで聞いたことのある名前だな、と思って、」



「桜雅って名前?」



「ああ。気のせいかもしれない。思い出したら伝えるよ。」



一瞬不穏な空気が流れた。





名月と次に会えるのはいつになるだろう。



名残惜しい。



彼が与えてくれる快楽は、会えない間も俺の身体を蝕んで、


縛りつける。




名月に会いたくて、抱かれたくて、たまらなくなる。





狂おしいほどの欲望を植えつけて、


この男はまた俺の前から姿を消すんだ。



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