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♤『天使』
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天城 流華は、いつもの帰り道を歩いていた、
はずだった。
どこで道を間違えてしまったのだろう。
いつの間にか、見慣れない森の中に迷い込んでいた。
あたりは霧で覆われて、視界がぼんやりと霞んでいる。
白昼夢を見ているのだろうか。
そんな違和感が、身体を覆う。
現実味を感じない世界の中、ただ前へ前へと
歩いてゆく。
霧の中、急に視界がひらけ、
濃い緑の木々の向こうに、煉瓦造りの洋館が不気味に浮かび上がった。
深い緑色の蔦が、びっしりとまとわりついた壁面。
屋根には煙突のように、何本もの尖塔が突き出ている。
庭には神話をモチーフとした彫刻が、数体立ち並んでいた。
少女の彫刻。
手に乗っている小鳥の目は、
まるで涙が出ているように不気味にひび割れ、
長い年月誰も住んでいないのだとわかる。
こんなところに洋館なんて、あっただろうか?
気味が悪い。
けれど、好奇心が流華を奥へ、奥へと突き動かす。
洋館の入り口、
両開きの大きな扉は、美しい花の豪華絢爛な彫刻が施され、
住んでいた人物の権力の大きさを象徴していた。
ギギギギイイィ
音に驚いて顔を上げると、洋館の入り口が開いている。
こんな重い扉、風で開くわけがない。
「誰・・・?」
この建物、知っている気がする。
デジャブのような感覚に導かれるように奥へ進むと、
縦長の丸く大きな鏡がキラリと光を反射した。
「誰かいるのか??」
綺麗な花や葉の装飾が施された、鏡の奥。
泣き声のような、かすれ声が聞こえてきた。
怖い、という感覚は不思議となかった。
「泣いてるの・・?」
泣き声は、
鏡の奥から聞こえるようだ。
鏡の奥を覗き込むと、
暗闇の中に、人の顔が浮かび上がった。
誰、だっけ。
懐かしい、そんな気がする。
『誰・・・?誰かいるの・・・?』
鏡の奥から声が聞こえる。
そうだ。
俺は、この声を知っている。
そんな確信が芽生えた。
再び、鏡に日の光が反射し、
光の強さに、目が眩んだ。
『君は誰・・・・?』
鏡の中に、少年の姿が浮かび上がる。
天使みたいだ。
そう思った。
幼さの残る綺麗な顔立ちをした少年は、
羽をもがれた天使のように、
ほんのりとピンクに染まる透き通った肌を、涙で濡らしていた。
はずだった。
どこで道を間違えてしまったのだろう。
いつの間にか、見慣れない森の中に迷い込んでいた。
あたりは霧で覆われて、視界がぼんやりと霞んでいる。
白昼夢を見ているのだろうか。
そんな違和感が、身体を覆う。
現実味を感じない世界の中、ただ前へ前へと
歩いてゆく。
霧の中、急に視界がひらけ、
濃い緑の木々の向こうに、煉瓦造りの洋館が不気味に浮かび上がった。
深い緑色の蔦が、びっしりとまとわりついた壁面。
屋根には煙突のように、何本もの尖塔が突き出ている。
庭には神話をモチーフとした彫刻が、数体立ち並んでいた。
少女の彫刻。
手に乗っている小鳥の目は、
まるで涙が出ているように不気味にひび割れ、
長い年月誰も住んでいないのだとわかる。
こんなところに洋館なんて、あっただろうか?
気味が悪い。
けれど、好奇心が流華を奥へ、奥へと突き動かす。
洋館の入り口、
両開きの大きな扉は、美しい花の豪華絢爛な彫刻が施され、
住んでいた人物の権力の大きさを象徴していた。
ギギギギイイィ
音に驚いて顔を上げると、洋館の入り口が開いている。
こんな重い扉、風で開くわけがない。
「誰・・・?」
この建物、知っている気がする。
デジャブのような感覚に導かれるように奥へ進むと、
縦長の丸く大きな鏡がキラリと光を反射した。
「誰かいるのか??」
綺麗な花や葉の装飾が施された、鏡の奥。
泣き声のような、かすれ声が聞こえてきた。
怖い、という感覚は不思議となかった。
「泣いてるの・・?」
泣き声は、
鏡の奥から聞こえるようだ。
鏡の奥を覗き込むと、
暗闇の中に、人の顔が浮かび上がった。
誰、だっけ。
懐かしい、そんな気がする。
『誰・・・?誰かいるの・・・?』
鏡の奥から声が聞こえる。
そうだ。
俺は、この声を知っている。
そんな確信が芽生えた。
再び、鏡に日の光が反射し、
光の強さに、目が眩んだ。
『君は誰・・・・?』
鏡の中に、少年の姿が浮かび上がる。
天使みたいだ。
そう思った。
幼さの残る綺麗な顔立ちをした少年は、
羽をもがれた天使のように、
ほんのりとピンクに染まる透き通った肌を、涙で濡らしていた。
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