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失恋
しおりを挟むこの世界は、戦争ばかりだ。
私の名は、篠田 茉由。軍事組織で事務員として働いている。
争いを好む男たちは人類が滅亡しかけてもなお戦争をやめず、現在戦いの場は仮想空間へと移った。
組織の司令官、丹沢 誠は私の自慢の恋人だ。
「あ・・っ・・・イイ・・・誠さん・・ッ・・・・」
「もう・・中に出すぞ・・・っ・・・あ・・・うっ!!」
組織の人間は、本部内にある居住区域に住んでいる。
休日の深夜、彼は私の部屋にこっそり会いに来て、朝まで愛し合うのがお決まりのコース。
「別れよう。」
「え・・・・?」
「俺の部下で、君に紹介したい男がいる。」
「・・・・え?」
朝まで愛し合った彼が、服を着ながら告げた言葉。
「ど・・・どういうこと・・・・?」
彼が私の能力を利用していただけだということに、たった今気付いた。
どうして気づかなかったのだろう。
彼は冷酷な視線を私に向け、繰り返す。
「君の力を貸してほしい。俺の部下と寝てくれ。」
♢♢♢
「じゃあオーブのために、茉由ちゃんを利用してたってこと?」
先月入隊したばかりの新人、相澤 翠は弟キャラで人懐っこい。
ふわふわの茶髪、中学生と言われても信じてしまうほどの童顔と小柄な身体。
いくつも年が離れているけれど、私と彼はランチ仲間なのだ。
「ひどくない・・・?俺の部下と寝ろ・・・だよ?」
少年のような顔をしている彼に、大人の恋の汚さについて語るのは気が引けるけれど、私には友達と呼べる人間が他にいなかった。
幼い顔立ちとは裏腹に、彼は妙に達観していて、私はついなんでも話してしまう。
「丹沢司令官、すごい鬼畜じゃん。茉由ちゃんのオーブって、エッチすれば俺ももらえるんだ?」
「翠君は、オーブ量充分多いでしょう。」
戦士たちは仮想空間で、「オーブ」と呼ばれる身体エネルギーを元に戦っている。
オーブの量は生まれつき決まっているが、私は常人の10000000倍のオーブ量を持つ特殊体質だった。
その上、男と交わることで、相手にオーブを伝授出来るという特殊能力を持っている。
出会った頃まだ一戦士であった丹沢さんは、私と寝ることで多量のオーブを獲得し、司令官にまで上り詰めた。
「で、誰なの?司令官が茉由ちゃんにあてがった相手って。」
昼時で賑わう食堂の中を、目で探す。
オムライスを頬張りながら、視線で翠に合図する。
「え?橘さん?」
橘 嶺二は、丹沢司令官のお気に入り。
直属の部下であり、若くしてA隊の隊長に抜擢された優秀な戦士だ。
肩まで伸ばした黒髪が、サラリと眩しい長身イケメン。
『俺の部下と寝てくれ。』
私を抱いたすぐ後に、平気でそんな言葉を吐く男を愛していたなんて。
急に全てがバカらしくなる。
(どうせならこの組織の男全員と寝て、あの男を司令官から引きずり下ろしてやるわ・・・!!)
この瞬間、私は自分を捨てた恋人、丹沢 誠に復讐することを決意した。
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