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♤『ミルク味の』(SIDE 椎堂 獅)

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~~~~登場人物紹介~~~~



♤椎堂 獅(しどう れお) 24歳 

ロックバンド「ジュネス」のボーカル。フランスと日本のハーフ。金髪、青い瞳。
筋肉質で胸板が厚くがっしりとした体、190センチの長身。
女遊びが激しい俺様男。いつも偉そうな態度。声がでかい。
元同じバンドだったSAWの綾と仲が良い。


♤八神 雷(やがみ らい) 19歳

ロックバンドSAWのボーカル。
赤髪のウルフヘア、黒のインナーカラー。肩下10センチの長髪。
小柄だが声量がものすごい。
きつい印象を与える目力があるが、童顔で可愛い顔立ちなのがコンプレックス。八重歯がかわいい。
性格はキレやすく攻撃的。舐められないように肩肘を張って生きている。
人見知り、ツンデレ、天邪鬼だが、根はとても繊細、純粋で傷つきやすい。寂しがり屋。


♤三浦 綾次(みうら あやつぐ) 27歳

ロックバンドSAWのベーシスト。リーダー。
肩下30センチ以上ある、紫色のふわりとしたロングヘア。
ボリュームのあるパーマをかけている。
面倒見が良く、涙もろい。
最年少メンバーの雷と蛍をいつも気にかけ、可愛がっている。
ジュネスの椎堂獅とは元同じバンドで仲が良い。



♤早川 亮(はやかわ あきら)23歳

ロックバンドSAWのギタリスト。
黒髪に白メッシュ。タレ目だが目力のあるイケメン。
いつも仏頂面で、眉間にシワを寄せている。愛煙家。
雷の一番の理解者で、弟のように可愛がっている。




~~~~~~~~~~~


♤『ミルク味の』(SIDE 椎堂 獅)


昔から、思い通りにならない方が燃えるタイプだ。


すぐに手に入るものには興味がない。



そういう意味で、八神雷は俺の興味をそそる奴だった。



生意気で、威勢がよく、いちいち突っかかってくる。

素直とは程遠く、いつも何かにイラついている繊細な男。



ボーカルとしても興味があった。


あんなに小さい体で、よくあんな声が出せるもんだ。

初めてあいつの歌声を聴いた時、そう感心した。



あとはルックス。

単純に、俺好みの顔だった。



雷には弟がいる。

アイドルをしている三つ子の弟、


八神陸。


以前音楽番組で見かけた時、声をかけた。


「俺、あんたみたいなガツガツした俺様な男嫌いなんだよね。」


可愛い顔して毒舌。業界では性格が悪くて有名らしい。

あちこちに男がいると聞いて興醒めしてしまった。

尻軽は嫌いだ。



同じ顔をしている雷は、俺の好みど真ん中だった。


経験が少なそうなところも、人を寄せつけようとしない頑なさも


屈服させたい、という俺の欲望に火をつけた。





フェスの後、
一人夕陽を見ながら、
切なそうな顔をしているあいつにキスをした。


殴りかかってきた雷は、最高にそそる顔をしていた。


それから、俺はあいつのことばかり考えている。




あの生意気なガキを屈服させて、俺のもんにしてしまいたい。


俺の欲望は大きくなるばかりだった。






うちのバンドメンバーとSAWのメンバーが全員揃って、

合同練習という名目で、山奥の別荘に数泊することになった。


合宿やレコーディングに使うために防音設備、機材を揃えた別荘。

俺が数年前に建てたものだ。



「なんでだよ!なんで俺がこいつなんかと・・・!」


「雷、ここを使わせてもらってる身だから俺たちは。今回は文句無しでいこうね~。」



晩飯の買い出し係に、俺と雷で行くことになった。

ラッキー!と口にした俺とは真逆のブーイングで、グダグダ駄々を捏ねている雷を、綾が諭す。



綾はSAWのリーダーで、昔俺と同じバンドにいたのでいまだに仲が良い。

雷のことをめちゃくちゃ可愛がっている。



「獅、お前雷には手出すなよ。」


キーを片手に早速出かけようとした俺に、綾が耳打ちする。



「それは約束できねぇなぁ。」


「本気じゃないなら、絶対手ぇ出すな。」


ギターの亮もそうだが、雷にはみんな甘いらしい。







「うわ~お前が乗ってそう。見るからに。」


今日は山奥にくるからと、アメリカ製のゴツいSUVで来ていた。

俺は車が好きで、何台も所有している。

女を乗せる時はスマートなフォルムの車を選ぶことが多いが、ゴツい車の方が好きだ。



「乗り込めるか?チビ。」


小柄な雷にはシートが高すぎるか、と思ったが、

当の本人はバカにすんな!と吐き捨ててすぐに乗り込んでいた。



山の麓にあるスーパーは、

キャンプ客と思しき家族連れや、若い連中で賑わっている。


海外から参入してきた大型のスーパーで、キャンプ用品、日用品、食糧、なんでも揃う。



「お~い、迷子になるなよ。おチビちゃん。」


手を引くと、思い切り振り払われた。


「子ども扱いすんな!」


いちいち可愛い反応で、俺を煽る。


「あ?雷、亮に電話しろ。人参って何本?数書いてねぇわ、あいつ。」


亮が書いた買い物リストを見ながら、カートに食料を次々入れていく。


「人参の数?ちょっと待って、」


雷はスマホを取り出して、亮にかける。


「亮、人参ってどれくらい必要?数書いてないって、あ~うん、」

亮と話している時の雷は、俺に対してより素直で可愛い。

信頼関係が伝わってきて、子供が母親に甘えているような気の許し方が見て取れる。



可愛い。


戦闘モードを解いて、気を抜いている時の雷の幼い表情。



「獅、人参10本だって。」


「10本?ったく、何作るつもりだよ、あいつ。」





食料と日用品を買い込んで、車に戻る。


子どもを数十人乗せられそうな大きさのショッピングカートから、荷物を移動する。


車のバッグドアを開けたところで、危ないから下がってろ、と言うと、

雷は珍しく素直に従って、日用品の一部を後部座席に詰め込んだり、ちょこまかと動いていた。



「獅って、どうやって鍛えてんの?その身体・・・」



車に最後の荷物を積み込むのを、一歩後ろに下がって見ていた雷がポツリとつぶやいた。


「あ?なんだって?」


バッグドアを閉めながら、聞き返す。


「すげー身体してるよなって。どうやって鍛えてんの。」


「別に。筋トレと走り込みしてるだけ?」


「嫌味なやつ・・・・」



雷は目線を逸らして、拗ねたように呟く。

車に乗り込もうと、助手席のドアに向かって歩き出した。



「俺の身体に興味があるなら、教えてやろうか?」




助手席のドアを開けようとした雷を遮って、ドアの前に立ちはだかる。

あいつは驚いたように俺を見上げて赤面した。



「・・・・そういうわけじゃ、ねぇし・・・」



距離を縮めると、雷はすぐに赤くなる。


俺に対してだけだ。



夏や文都が近づいてもそうはならない。

こいつは俺に気があるはずだ。

俺はそう読んでいた。





自惚れでも構わなかった。

元々自意識は過剰な方だ。


こいつを手に入れたい。自分のものにしたい。

俺はいつでも自分の欲望に忠実なんだ。







「あ、あそこアイスクリーム屋がある。」


帰り道、少し遠回りしてドライブしていると、雷が目ざとく看板を見つけた。


「あ?寄るか?」


「いいの・・??」


いちいち可愛い反応。

アイス一つでこの顔って、やっぱり子どもじゃねえか。



ミルクソフトクリームが食べたいと言うので買ってやると、

助手席で嬉しそうに頬張っている。



「獅は食べないのかよ?」


「俺はいらねぇよ、子どもが食うもんだろ」


「うまいのに、食べないなんてバカだな、」


「じゃあ一口くれ、」



雷が手に持っているソフトクリームにかぶり付く。



距離が近づいた瞬間、雷がまた驚いたように赤面した。



こんな顔見せるなんて、

我慢なんてできるわけねえだろ。




そのまま雷の唇に噛み付いてやった。




「ん・・・っ、は・・・ぁ・・・ッ」


舌を絡めると、甘いミルクソフトの味が広がっていく。



抵抗してもやめてやらねぇ。

そんな無防備な顔を晒してる、お前が悪い。




助手席の方に身を乗り出して、

雷の後頭部に手を回し、より深く口内を堪能する。



目が潤んで、苦しそうに顔を歪めた雷を見て、俺は完全に欲情してしまった。



止まらない。



「や・・・・やめ・・ッ、はぁッ・・・レ・・オ・・・」



何度も何度も舌を絡めて、深いキスを繰り返す。


雷はふやけきったとろりとした表情で、

はぁはぁ、と肩で苦しそうに息をしている。



「な・・・何すんだよ・・・ッ、」



拒絶の言葉を吐いても説得力がない。

雷は物欲しそうな目で俺を見ていた。



「好きだ。お前を俺のものにしてぇ。」


「・・・っ、なんだよ・・、それ・・っ、」


「絶対俺に夢中にさせてやるから、お前は黙って俺に従ってろ。」


「お前・・・どこまで俺様なんだよ・・・っ」



雷は赤くなったまま、YESともNOとも明言せず、目を伏せた。



もう一度、キスをする。

雷は黙って、唇を受け止めた。



いつの間にか、ソフトクリームはベタベタに溶けてしまっていた。









♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「やっぱりここのソフトすげー美味い。」


帰り道。

運転する俺の隣で、

雷は上機嫌で2個目のソフトクリームを頬張っていた。



俺のせいで溶けてしまったからと、もう一つ買わされた。



「明日も食べたい。」


雷は子どもだ。いちいち可愛い。



「明日もキスして欲しいって、意味か?」



「な、、何でそうなるんだよ・・っ」



「明日も連れてきてやるよ。」




信号待ち。



もう一度雷に口付ける。



甘ったるいミルクの味がした。








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