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♧『いらない子ども』(SIDE 東雲 華包)※R-18 茶道家元X茶道家養子

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~~~~登場人物紹介~~~~


♧東雲 華包(しののめ かほう) 29歳

総一郎の従兄弟。美青年。白い肌、色素の薄い茶色の細い髪。
知的で上品な顔立ち。華やかさがある。
和装の似合うしなやかな細身。中性的な魅力のある男性。
宗繧の弟、箔凪宗華が愛人との間に作った子ども。
東雲家に養子として迎えられた。



♧東雲 龍牙(しののめ りゅうが) 29歳 

東雲家長男。黒髪、肩より少し長いくらいのロン毛。
お茶には全く興味がない。
伝統を生かした日本家屋を専門に扱う一級建築士。茶室の設計を得意とする。
建築事務所を経営する若きやり手社長。周りにはいつも彼を支えたいという支援者が現れる。
家のことは弟の総一郎に任せきり。



♧東雲 宗繧(しののめ そううん) 55歳

総一郎の父。茶道家元、東雲家の現当主。
養子である華包を気に入っており、その色香にやられている。





~~~~~~~~~~~~






久々に総一郎さんが実家に帰って来ると聞いて、

会えるのを楽しみにしていたのに、家に戻ると彼はすでに帰った後だった。


僕は、茶道家元の東雲家の雑用係として、

お弟子さんの身の回りの世話や、イベントごとの裏方などに従事している。


東雲家の養子だ。




東雲家の当主である東雲宗繧は、僕の実の父親、箔凪宗華の兄にあたる。


宗華は華道家元として有名だが、女性関係がだらしなく、僕は愛人との間に生まれた子どもだった。


母親が僕を産んですぐに亡くなり、正妻の怒りを恐れた父は、東雲家の養子にすることでことなきを得た。


東雲家にとっても僕は邪魔者であり、特に三男の白杜君からはひどく嫌われている。


総一郎さんは、そんな僕を気にかけてくれて、優しくしてくれる大好きな弟だ。






僕には好きな人がいる。



東雲家の長男、東雲龍牙。


彼は長男でありながら自由奔放で、家に縛られることなく好きなことをして生きている。



僕と同じ歳だけれど、こんなにも立場や生き方が違う人がいるんだと、彼を見ているといつも羨ましく思う。

僕の人生に、選択肢は多くない。




龍牙さんは茶道には興味がないけれど、茶室が大好きだ。

同じ歳の僕たちは、同じ中学、高校に通い、表向きは兄弟のように育った。


学校から帰ると、毎日のように2人、茶室で過ごしたものだ。


僕が立てたお茶を飲み、龍牙さんは建築士になって僕のために茶室を作る、とよく将来の夢を語ってくれた。



その時の記憶は、いつ思い出しても僕の心を優しく慰めてくれる。




龍牙さんは言葉通り、茶室の設計を得意とする一級建築士になった。

事務所を開いて、事業も安定し、来年からは海外へ進出すると意気込んでいる。



僕はあの時のまま、ここにいる。

この茶室に。


どこへも動くことができず、思い出を胸にこの場所で生きている。








♢♢♢♢♢♢♢♢♢





「華包、今夜私の部屋へ来なさい。」




高校の卒業式を控えた春の夜更。


宗繧に呼び出された私は、彼の寝室へと出向いた。



高校を卒業するのだから、この家を出て行ってもらう。


そう言われるのだろうと、覚悟して彼の部屋へ入った途端、

後ろから抱きつかれた。



驚いて声をあげようとすると、

彼は恐ろしいことを僕に耳打ちした。



「最近のお前はけしからん。こんなに色気を振りまいていたら、周りの男どもをその気にさせてしまうだろう?」




僕は一瞬、何が起きたのか分からず、体が硬直したように固まってしまった。



寝間着の浴衣姿で薄い羽織を肩にかけていた僕を、

舐めるような視線で犯し、畳の上に敷かれた布団になだれ込むように押し倒す。



父として慕っていた宗繧の雄の本能に、僕は圧倒されて声も出なかった。



浴衣の上から、彼が僕の身体を確かめるように弄った。

お尻を何度も撫で回し、覆い被さる。




「・・っ・・・!」




いやだ・・・・・・・・!





体も心も、僕の全てが彼を拒絶している。



唇を重ねられて、彼の舌が入り込んでくる感覚に

激しい嫌悪感が突き上げた。




「や・・・やめてください・・・っ、」




顔を大きく横に向け、ようやく動き出した手足をジタバタと動かして抵抗する。



「華包、静かにしなさい。」



身動き出来ないように、両手を頭の上で押さえつけられて、


恐怖に涙が滲んだ。




「や・・・っ、やだ・・・」




興奮した宗繧の息遣いが、耳に当たって気持ち悪い。


熱く膨れ上がった欲望が、太腿に当たった瞬間、僕の恐怖は頂点に達していた。




「やだ・・・っ、・・やめ・・・っ」




涙が溢れる。


ギュッと目を瞑った次の瞬間、




ドカッ!!



と大きな物音が聞こえて、急に身体が自由になった。





「親父・・・てめぇ、何してんだよ!恥を知れ!」





龍牙さんだった。



彼が、宗繧を思い切り殴り飛ばして、僕を助け出してくれた。



抱き抱えるように、はだけた浴衣を素早く直して、僕を連れ出してくれた。







♢♢♢♢♢♢♢♢♢



彼の部屋は当時から、茶道関係のものはまるでなくて、


ロックギターやら、飛行機の模型やら、ボクシングのグローブやら、男らしいもので溢れかえっていた。




「大丈夫かよ。どこも痛くないか?」




僕の体には触れないように気を使って、彼はそう言った。


彼のベッドの上に座り丸くなっていた僕に、優しい手つきでブランケットをかける。




「親父のやつ、何考えてんだ。信じられねぇ。」



龍牙さんは本気で怒っていて、

僕は自分の身に起きたことへの恐怖より、

彼を怒らせてしまったことへの申し訳なさが強くなっていた。



「龍牙さん、ごめんなさい・・・」



「なんで華包が謝るんだよ。悪いのは全部あの変態親父だ。」




龍牙さんの部屋に来るのは久しぶりだった。



僕たちが一緒に過ごすのは、いつも茶室で、お互いの部屋には立ち入らないようにしていた。

彼は気を遣っていたのかもしれない。


僕はこの家の本当の子どもじゃないから。




高校を卒業したら、龍牙さんはこの家を出ていく。


その事実が、当時の僕をひどくナーバスにしていた。



「なぁ、華包、」


彼は突然切り出した。


「俺と一緒に来ないか?この家を出て、一緒に。」



思ってもみなかった彼の提案に、僕は驚いて言葉を失う。



「お前をこの家に置いていきたくない。同じ部屋で暮らすなら、家賃だってかからないし、俺が稼げるようになるまで、バイトでもなんでもしてどうにかなるだろ。」


「龍牙さん・・・」




僕は、首を縦に振ることができなかった。

本当は嬉しくて、素直に彼についていくと言いたかった。


龍牙さんのことが大好きで、離れることが辛かったから。




それでも当時の僕は、自分がいらない子どもだという、呪いのような概念に囚われていた。




ここまで育ててもらった恩義に尽くさなくてはならない。

自分が我慢して当然だという戒めが、僕の心を不自由にさせていた。


僕はそうやって自分を戒めることで、人生のバランスをとって生きてきた。

今更自由を手にすることが怖かったのだ。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「おう、華包。久しぶりだな。」


龍牙さんは数ヶ月に1、2度、この家に戻ってくる。



僕に会いたいのかもしれない、と

心の中で都合の良い解釈を勝手にして、僕は心のバランスを保つ。




僕は相変わらず龍牙さんのことが大好きで、高校生のあの夜と同じ世界で生きている。




「龍牙さん、お久しぶりです。」





変わってしまったことと言えば、自分の正しい使い道を知ったこと。



布団の上で、快楽に喘ぎ、好きな人の父親と床を共にする。





あの夜泣いて怯えていた子どもの僕はもう居ない。





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