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♧『言い訳』(SIDE 慶寺 遼介)※R-18 航空エンジニア 課長X課長

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~~~~登場人物~~~~~


♧慶寺 遼介(けいじ りょうすけ) 45歳

航空エンジニア。課長。歴木とは所属会社が違うが、学生時代からの親友。
インテリ。細くフレームのない眼鏡がよく似合う美形。
頭が良く、クールな色男。美しい髪。襟足が長い茶髪。
女性のように繊細で美しい顔立ちだが、大人の男の色気がある。物腰が柔らかく、穏やかに話す。いつも冷静。女性にモテモテ。
歴木に一途な想いを寄せており、独身を貫いている。


♧歴木 大河(くぬぎ たいが) 45歳

航空エンジニア。課長。遥、東雲の上司。ぶっきらぼうで男っぽい。
無精髭、髪は固めて上げている。細かいことが苦手で大雑把だが、部下の面倒見がよく頼りになるので信頼されている。男気のあるタイプ。
バツ2。二人目の妻の連れ子を実の娘のように可愛がっている。


♧蒼葉 理仁(あおば りひと) 24歳

慶寺の部下。天才肌。個性的で我が道をいくタイプ。青い髪。
物怖じせず、何事も空気を読まずにそのまま口に出す。
「青あたま」と呼んでくる大河に、よくなついている。
無邪気で可愛い、犬のように甘える一面も。





~~~~~~~~~~~~~~






「慶寺課長とだったら私、本気で結婚したいです!」


「恋人にしてください。・・あ、お試しからでも良いです!!」


「恋人候補として、連絡先交換だけでも、してもらえませんか?」




慶寺 遼介。45歳、独身。

職業、航空エンジニア。




女性たちのエネルギーには、いつも圧倒されている。




可愛くて、キラキラしていて、


夢も希望もあふれた彼女たちが、


どうして私に興味を持つのか、いつも不思議だった。





女性から告白されるのは嬉しいけれど、



私にはずっと前から、一途に想っている相手がいる。




恋人になれる望みは、ほとんど無いというのに、


それでも諦められずに、


ずっとそばにいたい人。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢





「なぁ、慶寺、おかしいと思わねえか?」




酒に弱いくせに、すぐに飲みすぎて絡んでくるこの男。



歴木大河。45歳。バツ2。




私が20年以上もの間、想いを寄せている相手だ。






「大河、いい加減飲み過ぎだ。そろそろ帰ろう。」




大河は大学時代の同級生。


彼が結婚する時も、離婚する時も、いつもそばで見守ってきた。




失いたくない気持ちが強すぎて、


愛を伝えることさえ出来ない自分が情けなくもあるけれど、


親友としてそばにいられる今の関係を壊したくない、


という言い訳を重ねて、ここまできてしまった。






「ん~、遼介、」




酔った時だけ、私を名前で呼ぶのは、大学時代からずっと変わらない。



酔って私に甘えてくる大河は、とても可愛いくて愛おしくて、


このポジションを絶対に失いたくないと、



今はそれだけを願って生きている。





「大河、ほら、ベッドについたぞ。」




腕に抱えていた彼を、ベッドに寝かせようとすると、


甘えたように首に手を回したまま、なかなか離れようとしない。





「遼介、、今日は、泊まれよ~・・・なぁ、」





いつもは男気に溢れている大河が、


2人きりの時にだけ見せるこの表情に、私は弱い。




これ以上一緒にいるのは身体に毒だ。



親友というポジションで重要なのは、程良い距離感を保つこと。





「大河、明日遅刻しないように。」



彼の目覚ましをセットして、冷たく言い放つ。




大河が離婚して引っ越した当初に渡された合鍵で、


しっかり戸締りをして帰る。





いつか諦められるだろうと、

ぼんやり思いながら生きてきたけれど、

彼以上に私を夢中にさせてくれる人間は、未だに現れない。





同じ職場で働いて、毎日顔を合わせているのだから、

告白するタイミングはいくらでもあったのだけれど、

大人になると、色々とややこしいことが多すぎる。






♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「大河さん、大河さん」



昨年新卒採用で入社してきた


蒼葉 理仁は、私の部下として配属されたばかり。




彼は個性的で、空気を読まず、常に我が道を行くタイプで、面白い。


仕事はと言うと、ものすごく優秀で、何事も直感的に理解してしまう天才肌だ。




所属する会社は違うけれど、大河のことを慕っていて、

まるで尻尾を振った犬のように、いつも周りを追いかけて回っている。



「お~青あたま、今日も元気だな~!」



大河も彼をとても可愛がっている。



髪を青く染めている彼のヘアスタイルが、とても気に入ったらしい。



「理仁って呼んでください!もう~何回言ったらわかるんですか?」



大河は、

拗ねるように唇を尖らせる彼の頭を

ガシガシと撫でた。




「俺大河さんのことマジで大好き!」



理仁はとても直球で、いつも真っ直ぐに

心の内を大河に曝け出す。






蒼葉 理仁を見ていると、つくづく思うことがある。




若さとは、

向こう見ずで、エネルギーがあって

何にも縛られずに自由で、素晴らしい。



彼はとても可愛らしくて、眩しかった。










大河とは、学生時代に初めて関係を持った。





彼女に振られて自暴自棄になっていた大河と、


すでに彼に夢中だった私は、


酒の勢いで関係を持ってしまった。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢



「遼介・・・・っ、」


潤んだ目で見つめられた瞬間、


私の中で、プツリと何かが切れたような音がした。




普段は理性で押さえ込んで、


見ないように処理している感情の全てが、


一気に欲情として身体から溢れてきて、


もう止められなかった。




大河は男気があり、話し方も男らしいタイプだが、

本当はひどく寂しがり屋で、繊細な一面を持っている。




誰かに甘えたい、という大河の欲求は、

時々私にだけ見せてくれるもので、

そういう瞬間を目の当たりにするたびに、

私は彼の魅力にどっぷりとハマって行った。




「大河・・・ッ」



冷静さを失い、

彼の唇を貪る。



「・・あ・・・っ、遼・・介・・ぇ・・ッ」



鼻にかかったような、

大河の甘い声。



友人たちの前で男らしくぶっきらぼうに喋る、

いつもの彼とのギャップが、

私の優越感を満たして、独占欲を煽った。




大河の熱っぽい視線。

ふやけたような表情。

抱きしめた体の感触。



大河は初めて感じる痛みに叫びながらも、

最後には私の熱を求めて自ら腰を振り、

腕の中で同時に果てた。



大河と初めて繋がった、あの夜。







次の日、

事態の重大さに気付いた大河が、

真剣な表情で何か言おうとして、私の目を見つめていた。


「遼介、俺、」




しばらくの沈黙の後、

彼が伝えようとした言葉を遮って、

私は言った。




一夜の過ちを犯してしまったのは、

傷心の彼を慰めるためだったと。




言い訳だった。





その後も、妻と別れて傷心の大河と数回寝た。




言い訳がないと、抱きしめることさえ敵わない、

そんな関係が出来上がってしまっていた。



自業自得だ。







蒼葉理仁が、大河に対していつも直球なのは、

若いから、ではないのかもしれない。



彼は恐れを知らず、勇気のある人間なのだろう。




私は学生時代から、相手が大河となると

臆病になってしまい、今と変わらないスタンスだったことを思い出していた。






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