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『夢結とタロット城の支配人』

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私は「夢結ゆめゆい」。
運命の主人様アルジさまの幸せを、今日もタロット城から祈っている。

人生を決定づける「お告げ」を解釈し、夢の中で愛する彼に運命を結びつける。

どんなに想っても、恋焦がれても、手に入らない永遠の片思いみたいに、
いつも彼の幸せを祈っている。


「オリヴァー、あなたは本当に素敵な人ね。大好き。」

「俺も、めぐるが好きだよ。もっと、君を知りたい。」


私の運命の主人様、オリヴァーとはここでしか会えない。
彼の夢の中、潜在意識の奥深くにある、秘密の花園。

私たちはここで、ほんのひとときの逢瀬おうせを楽しむ。


大好きな彼のそばにずっと居たいけど、私の人生は全て・・・タロット城の中にあるのだ。



♢♢♢


主人様との逢瀬を終えた私を迎えるのは、タロット城の支配人ルーク。
長身で、スタイルが良い、インテリメガネの知的イケメン。

暖炉の前で1人がけの立派なソファーに座り、読書をしながら私の帰りを待っている。

パタン、と分厚い本を閉じた彼が、私の元へ歩み寄った。


「めぐる、おかえり。今日の逢瀬はどうだったかな。」

「全て順調、問題なし!!」

「俺が何も知らないと思ってる?甘い男じゃないのは、よおくわかってると思うけど。」

知的イケメンの顎クイに、ときめいている場合じゃない。
彼は、私の仕事にあまり口出ししない主義だけど、全てを把握してお仕置きの瞬間を密かに楽しみにしているようなドS男。

「それとも、俺にお仕置きされるのが、クセになったとか?」

緑色の綺麗な髪がサラリと揺れる。
細縁のメガネを指先で整えながら、彼がにっこりと恐ろしい笑みを浮かべた。


彼は、「お告げ」と「解釈」の調和が取れているかどうか監視し、夢結の仕事をサポートしてくれる、この城の支配人。
私が「運命の主人様」をあるべき方向へ導けるように、見守ってくれている。


「大丈夫だから、心配しないで。」

「彼の香りがする・・・。彼と寝るのは禁止だよ。」

私の額に口付けたルークは、長い黒髪にその美しい顔を埋めた。


「ね、寝てなんて、いるわけないじゃない。」

主人様との逢瀬中は、お互いの身体に触れ合うことが出来る。
夢の中、潜在意識の奥深い場所にいる時間、夢結は主人様と寝ることだって出来るのだ。


「疲れたから、少し眠るね。」

「お仕事お疲れ様。良い夢を。」

私は慌ててルークから離れると、自室に向かって歩き出した。



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