【※R-18】イケメンとエッチなことしたいだけ

二つの世界

「僕たちと宵闇の彼らは、はじめは同じ世界で生きていました。」

アザトが、一つ一つゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
どうして彼らと争うようになったのか・・私がずっと気にしていたことだ。

「人間には色々なタイプがいます。穏やかで争いを好まない人間もいれば、好戦的で奪い合いを好む人間もいる。」

どちらが良くてどちらが悪いということを言いたいのではない。
彼がそう思っているのが、伝わってくる。

「僕たちの間には、少しずつ溝ができていきました。真美まみ様がこの世界に降臨される前、その時期が近いという預言に、その溝は決定的になり、争いが絶えなくなった・・・・。」

アザトは悲しそうに、長いまつ毛を伏せながら続ける。

「これ以上お互いを傷つけないために、僕たちはこの世界を二つに分けることにしました。少し時空をずらして、二つの世界を作った。そして・・・光のある時間は僕たちが、闇が訪れる時間は彼らが、あなたを独占できるという契約をした。お互いの意思疎通ができるように、宵闇の時間帯だけは二つの世界を自由に行き来できるように決めました。」

「だから彼らは宵闇の者たち、って呼ばれてるのね。」

「彼らから見ても、僕たちは宵闇の者たちなんです。顔を合わせることができるのは、宵闇の時間帯だけなので・・・僕たちはお互いをそう呼んでいます。」

なるほど、そういうことだったのか。
私は何も知らなかった。私が現れるより前から、彼らが私をめぐって争い合っていたことを。

「まだ私がこの世界に来ていないのに・・・そんな争いが起きていたのね・・・」

「僕たちはそれだけ長い間、真美様がこの世界に降臨されることだけを希望に生きてきたんです。」

（やっぱり私が最強のチートじゃん・・・！！イケメンたちが私の降臨だけを希望に生きていたなんて・・・・♡嬉しすぎて死にそう・・・♡）

恐ろしく恵まれている自分の境遇に、叫び出したいほどの歓喜が込み上げてきた。

「ある時、彼らが契約を破って、僕たちの世界に現れるようになったんです。本来なら僕たちと彼らが顔を合わせることが出来るのは宵闇の時間帯だけのはずでした。そして・・またあちこちで争いが起こるようになった・・・。」

「そうだったんだ・・・。」

「僕たちは契約を破った彼らが許せなかった。だから彼らがもうこちらの世界に接触できないように、特殊な結界を張ったんです。」

「結界・・・？」

「そうです。彼らは真美様の降臨を知って、僕たちがあなたを独占していることが許せなかったんでしょう。だから結界を破って、こちらの世界へ干渉してきた。」

「ザインが宮殿に現れたのは、そういうことだったのね。」

「先に契約を破ったのは彼らです。それでも、真美様を独占している僕たちが許せないという気持ちはわかります。」

こんなに複雑な因縁があったとは。
私がいなければ、彼らは争わずに済んだのだろうか。

いや、どんな状況でも人が集まれば争いが起きる。
これは人間の悲しい性なのかもしれない。

「本当は真美様を彼らに会わせたくない。それが僕の本心です。でも・・・」

「でも・・・？」

「真美様をお慕いしているこの気持ちは、彼らもきっと同じなんです。その気持ちだけは痛いほどによくわかる・・・だから、最初の契約通り・・・光のある時間帯は僕たち、闇が訪れる時間帯は彼らが真美様を・・・」

「アザト・・・？」

黙り込んだ彼の頬に、涙が伝っている。

「それが一番平和的な方法だと思うのに・・・っ・・・僕はどうしても嫌なんです。真美様と1秒だって離れたくない・・・っ・・・そんなふうに思うなんて、僕は身勝手です・・・ッ」

「ア・・・アザト・・泣かないで・・・！」

涙を流しながら彼は苦しそうに言葉を吐き出す。
私はどこまでも純粋で健気な彼を力一杯抱きしめた。