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弦楽器の音色
しおりを挟む痺れるように、音が響く。
どこか懐かしい音色に、私は耳を澄ました。
ボロン、と空気を震わせるその音は、優しい音色なのに不気味な気配を持って耳に届く。
「この世界の男は、みんな君に夢中だよ。」
弦楽器の音の合間合間に、囁かれる彼の言葉。
声の方を見ると、私が寝転んでいる天蓋付きの大きなベッドの横、ヴェールの向こう側に弦を弾く男の姿がある。
「抗おうとしても、無駄なのさ。」
赤髪の、アシンメトリーな髪型。
片方だけ、長く伸びた髪。
もう片方の髪は、側頭部まで刈り上げられている。
薄暗い部屋の中に、彼の青い瞳が光っていた。
彼の目は、闇夜に潜む獣のように、私の不安を掻き立てる。
黒の透けた薄い生地でできた服。
ふわりと膨らんだ袖の下、彼の白い肌が不気味に浮かび上がっていた。
彼はボロンと、まあるい弦楽器を指で鳴らす。
「君が欲しくて、たまらない。」
彼の声は、静かなのに情熱的だ。
少年なのか大人なのかわからないような、不思議な声色。
「君を手に入れるためだったら、どんなことでもやるだろうねぇ。」
ヴェールの隙間から目を凝らして、彼の様子を盗み見る。
ベッドサイドに座る彼は、楽器を置いて、テーブルに視線を移した。
細かな模様が刻み込まれた銀の盃に、真っ赤な液体が満ちている。
彼は血のようなその液体をクイっと一気に飲み干した。
液体が滴り、彼の口元を赤く染める。
「生きるために、食べたり飲んだりするだろう?それと同じことさ。」
黙り込んでいる私にはお構いなしで、彼は続ける。
「いや・・・それ以上に、この世界の男は皆、君の身体を欲している。君無しじゃあどうにも生きられない。」
情熱的な彼の言葉に、ドクンと胸が高鳴った。
心臓が、不穏なリズムを刻む。
胸がザワザワと波立つ。
「それくらいの渇望なんだよ。」
彼はベッドの周りを囲んでいる、黒のヴェールに手をかけた。
不気味なほどに白い肌が、空間を割ってこちらへ入り込んでくる。
「君にわかるかねぇ?」
彼は虚な瞳で、私を見つめていた。
分厚い二重瞼の下、青く光を放った彼の目が、私を捕らえて離さない。
ゆっくりと伸びてきた白く長い指が、私の頬に触れた。
「君が欲しい。僕に身体を開いてくれるかい?」
(綺麗な顔・・・・魅力的な青い瞳・・・ザインの目と似てる・・・)
思わずうっとりと見惚れてしまいそうな、魅惑的な彼の顔。
青い瞳を見つめていると、吸い込まれそうだった。
声を出そうと口を開いても、どうしてか声は出ない。
彼の唇が、私の頬に触れた途端、プツンと何かが切れるように身体が自由になる。
「あなたは・・・誰なの・・・?」
声が出るようになり、覆いかぶさるようにベッドに乗ってきた彼を見上げると、ふっと彼の口角が上がった。
「僕はルーブル。君に恋焦がれる、ただの男さ。」
「みんなは?どこにいるの?ザインは・・?ハーシムはどこ・・?」
もう一度、彼らに会いたかった。
この世界のことを、もっと知りたい。
「僕のベッドで他の男の話なんて、感心しないな。」
「ルーブル、お願い。この世界のことを、知りたいの。」
彼の腕に、縋るように手を伸ばす。
「焦らないで。これからじっくり教えてあげるよ。」
彼の舌がゆっくりと、私の体に入り込んでくる。
ゾワゾワとまるで媚薬のように、背筋を熱が通り抜けた。
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