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家庭教師
しおりを挟む夢のBL総モテ生活。花奈は幸せの絶頂の中で鼻歌を歌っていた。
もはや前世の記憶など、どうでもいいこと。思いを馳せることはほとんど無くなっていた。
見渡す限り広がるイケメンたち。あれもイケメン、これもイケメン。
イケメンで埋め尽くされた、素晴らしきこの世界。
「わ♡イケメン!」
鏡の中の自分もイケメン。うっとりと自分の顔に手を当て見惚れる。
そんな毎日だ。
「ライト、何してるの?もう結城先生が来てるよ。」
洗面台の鏡を見つめてうっとりしていると、兄のリヒトが覗きにきた。
結城 楓はライトの家庭教師の先生だ。
某有名大学に通う現役大学生。艶のある茶色のウェーブヘアで、目元にある泣きぼくろがセクシーさを醸し出している。無口でおとなしい彼の、大人な色気にライトは夢中だった。
「ライト君、この問題解いてみて。」
先生は文系学部らしい。同級生たちとは違う穏やかで余裕のある大人な態度に、ライトは好奇心を抑えられない。
問題を解くフリをしながら、チラチラと先生の顔を盗み見る。
ライトの部屋の真ん中に置いてあるローテーブル。
カーペットの上に座る先生が、正座から胡座へ足を組み替える瞬間を見るのが楽しみだった。
(イケメンの胡座ってなんかいやらしいのよね・・・)
花奈の性癖が普通なのか異常なのかはわからないが、その瞬間を見逃さないようにそちらに意識を集中しているせいで、問題はさっぱり解けない。
「難しいかな?」
「ねぇねぇ、先生って恋人いるの?」
問題が解けないことを誤魔化そうと、ライトは気になっている質問を率直にぶつけてみた。
先生はライトに気がある。花奈はそう確信していた。
BL願望が強すぎてそう思い込んでるのかもしれないが、結城先生の足がテーブルの下でライトの足に触れてくるたびに、花奈は期待に震え上がった。
頭の中は問題集どころではなく、ラッキースケベ妄想をどこまでも繰り広げている。
「恋人はいないよ。問題、難しい?」
先生は質問には答えてくれたけれど、すぐに勉強に話を切り替えてきた。
トントン、とノートを指で叩く。
「先生はどんな人がタイプ?」
「そういう話は勉強が終わってからにしようね。」
取り合わない彼の態度に、花奈はますます燃え上がってしまう。
「教えてくれたら勉強する。結城先生のこと知りたい。」
イケメンであるが故に多少強引であっても嫌悪感は抱かれない。ライトの顔はいわばフリーパスのようなもので、なんでも許されるに違いなかった。
先生は真顔でライトの目をしばらく見つめて沈黙すると、ハァと大きなため息を吐き出す。
彼は隣に座っているライトの髪を触り、耳にかけるように指で流した。
突然触れられて驚いたライトは身体の動きを止める。
吐息が感じられるほど近くに彼の身体があった。
至近距離にいると良くわかる。彼の強烈なフェロモン。大人の香り。
「俺に、何を教えて欲しいの?」
普段のおとなしい穏やかな雰囲気とは一変、彼の目には雄のギラギラとした欲望が宿っていた。
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