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♡『パートナー』(SIDE 樽馬 嶺)
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♡樽馬 嶺(たるま れい)39歳
愛治医療センターの心臓外科医。銀髪。切れ長の瞳。インテリメガネ。
長身でモデルのようにすらりと長い手足。
知的、クールで無口なキャラで一見とっつきにくそうだが、中身は熱い。
先輩の湊にいつもいじられている。湊には頭が上がらない。
♡湊 京(みなと けい) 41歳
愛治医療センターの優秀な心臓外科医。
肩まで伸ばしたロン毛。青光りする黒髪。
医者とは思えないチャラチャラした軽い雰囲気。いい加減で荒っぽい喋り方。
人を小馬鹿にした話し方をする。
患者に対しては、優しく紳士的。
♡角 静(すみ しずか) 34歳 整形外科医
ベージュ色のサラサラヘア。腰までの長髪を後ろで一つに纏めている。
女性のようにきめ細かい白肌、繊細で綺麗な顔立ち。細身の高身長。
若き天才心臓外科医として脚光を浴びていた。
道原院長に見染められしつこいアタックの末、引き抜かれ整形外科医として勤務している。
いつまでも妻と別れない道原に嫌気がさしている。
普段は敬語で穏やかに話すが、本性は毒舌で攻撃性がある超ドS男。
~~~~~~~~~~~
『パートナー』(SIDE 樽馬 嶺)
湊さんが、手術のパートナーとして俺を選んでくれた日のことを思い出す。
助手として、俺を指名してくれた。
彼のことは医師として尊敬しているし、特別な人だ。
性的な対象として特別な想いを抱いている相手でもある。
彼が僕にしてくれることはなんでも嬉しいし、たとえ悪口であったとしても俺に何か言ってくれることがあればそれは大切な言葉になる。それくらい彼が好きだ。
医者になってからずっと彼だけを一途に想っている。
どうして俺を選んでくれたのか、彼の口から聞きたい。
そう思うことは何度もあった。
うちの病院に心臓外科医はたくさんいる。
湊先生に関することは、なんでも知りたい。
後輩医師として、俺をどう評価しているのか。
男として、好きになってくれる可能性はあるのか。
それでも臆病な俺は、実際に行動に起こすことはできなかった。
「樽、開場は何時だった?」
今回の学会は湊さんと二人で出席する。
数年ぶりの二人きりの出張に、俺は内心浮かれまくっていた。
湊さんを独り占めできる。
同じ学会に出て、一緒に食事をし、同じホテルに泊まる。
部屋は別だけれど違う土地に二人きりで来るなんて、まるで旅行みたいだ。
「13時です。」
「まだ時間あるな。飯どこで食う?」
彼はいつも俺に任せきりだ。
一緒に外食する時も、どこかへ出かける時も、いつも俺任せ。
自分で店を決めたり、行き先を決めたりすることはほとんどない。
俺を信頼して任せてくれていると思うと嬉しい。
彼の部屋に置いている本棚さえ、俺が選んで購入したものだ。
ランチは俺がチェックしておいた店で食べた。
湊さんが言いそうなことは、先回りしていつも調べておく。
それが医師になってからの俺のスタンスだった。
仕事でもプライベートでも同じ。
学会が始まる時間が近づいて、ホテルのロビーが急激に混雑し始める。
心臓外科医だらけだ。見知った顔も多い。
「おう、静。」
ロビーの椅子に座って資料に目を通していた湊さんが、通りかかった男性に声をかける。
角 静。
元同僚。愛治医療センターで心臓外科医として一緒に働いていたことがある医師だ。
ベージュ色のロングヘア 。遠目からでも彼とわかってしまうルックスの良さ。
これほどたくさんの人がいる中でも、彼は一際目立つ。
「ご無沙汰しています。」
「お久しぶりです。」
「つか、お前さぁ、もう心臓外科じゃねぇだろ。」
なんで学会に出席してんだよ、と湊さんが親しみを込めた態度で言った。
二人は仲が良い。角先生が同じ職場にいた頃は、よく皮肉や冗談を言い合っていた。
今でも時々連絡を取り合っているみたいだ。
ーー静。
湊さんが彼をそう呼ぶたびに、俺は恨みがましい気持ちになった。
俺の方が長い付き合いなのに、下の名前で読んでもらったことがない。
「整形外科より、心臓に興味があるもので。」
角先生は意味深な笑みを浮かべている。
冗談なのか本気なのかいつもわからない。
「お前、心臓外科に戻るのか?」
「そういう選択もありだとは思ってます。」
「お前とまた仕事したいもんだな。いつでも待ってる。」
角先生に向けられた湊さんの視線は本気に見えた。
心がざわざわする。湊さんは角先生の腕を信頼している。
「あれ、湊君?久しぶりだね。」
爽やかな長身の男性が、湊さんに挨拶した。
誰だろう。毛先が緩やかにウェーブした茶髪の男性。深い緑色の細縁メガネ。
長身にグレンチェックのスーツがよく似合っている。
大人の色香を感じさせる、40代半ばの男性。
「志恩さん、ご無沙汰しています。」
普段院内で見られる湊さんの顔とは、違った表情。
学会に来ると色々な人物に会う。湊さんのいつもと違う一面を観れるのは嬉しいけれど、なんだか心がざわつくのはどうしてだろう。
「樽馬先生。湊先生のパートナーは大変でしょうね。」
角先生はあまり俺のことをよく思っていないのだと思う。
彼を研修医時代から知っているけれど、俺に対しては少し言葉が固い気がする。
湊さんが言うにはこれは気に入られている証拠らしいけれど、俺は彼が苦手だった。
「最初は大変でしたけど、今はうまくやってます。」
「私が転院することになって、ご迷惑をおかけしたみたいですみません。」
「角先生のような優秀な医師がいなくなるのは、うちの病院にとって大きな損失ですね。」
「湊先生のパートナー。樽馬先生に押し付ける形になってしまって申し訳なくて。」
「え?」
「俺にやって欲しいって何度も湊先生から頼まれていたのですが、急に転院することになったので・・・。」
「角先生が・・・パートナーになるはずだったんですか?」
「知らなかったんですね。湊先生、何も言ってませんでしたか?」
失礼しました、と付け加えた彼は、どこか優越感に浸っているように見えた。
頭を殴られたような衝撃で、俺はしばらく呆然としてしまった。
湊さんが、俺をパートナーに選んでくれたのだとばかり思っていた。
勝手にそう思い込んでいた自分が恥ずかしい。
湊さんが、角先生とパートナーを組みたいと熱望していたなんて、まるで知らなかった。
「樽、おい、どうした?」
戻ってきた湊さんと、角先生が言葉を交わしていたけれど、俺の頭には全く何も入ってこなかった。
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