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♧『駆け落ち』(SIDE 東雲 総一郎)

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~~~~登場人物~~~~


♧東雲 総一郎(しののめ そういちろう)27歳

航空エンジニア。
由緒正しき茶道家元の跡取り息子。正統派男子。和服の似合う色男。
黒髪、サイドをジェルで後ろに流している。優しく穏やかな物腰。
仕事ができて、誰に対しても礼儀正しい誠実な男。いつも敬語で話す。


♧菓 茜(このみ あかね) 23歳

グランドスタッフ。引っ込み思案で、コミュ障。人見知りが激しい。ツンデレ。
フェイスラインが隠れる長さのミディアムボブ。笑うとエクボができて八重歯が可愛い。
仕事で失敗することが多く、いつも落ち込んでいる。自分はダメだと思っている。
かわいいものを集めるのが趣味で、空港内にあるガチャガチャの猫さんシリーズを集めている。


♧東雲 宗繧(しののめ そううん) 55歳

総一郎の父。当主。


♧東雲 龍牙(しののめ りゅうが) 29歳 

東雲家長男。黒髪、肩より少し長いくらいのロン毛。
お茶には全く興味がない。
伝統を生かした日本家屋を専門に扱う一級建築士。茶室の設計を得意とする。
建築事務所を経営する若きやり手社長。周りにはいつも彼を支えたいという支援者が現れる。
家のことは総一郎に任せきり。


♧東雲 白杜(しののめ はくと) 22歳

東雲家の三男。


♧東雲 華包(しののめ かほう) 29歳

総一郎の従兄弟。
箔凪宗華が愛人との間に作った子ども。東雲家に養子として迎えられた。

~~~~~~~~~~~~


♧『駆け落ち』(SIDE 東雲 総一郎)

由緒正しき家に生まれつくというのは恵まれているように思えて、実際は面倒なことが多い。
特に自由というものとは縁がなく、いつでも監視されているような人生を歩んできた。

それでも私は次男という立場であるだけマシだった。
長男である兄は、昔から家に縛られ、散々好き勝手な命令を下されてきたけれど、彼の性格上その場に丸くおさまるなんてことはなく、彼は家を飛び出した。

私は父の願いを跳ね除け、自分の好きな職業に就き、願いを成就させ今がある。
少しの罪悪感はあったけれど、長男が継ぐべきという根拠のない呪いを打ち破ってくれた兄のおかげで、とても気が楽になっていた。
弟の白杜や、華包は茶道を愛しており、その名を継ぐ覚悟がある。
父が私に家を継がせたいと願っていることは重々承知しているけれど、自分も兄と同じで家を出ようと心に決めていた。


「父上、僕はこの家を出ます。」

父に面と向かってそう告げた。
父は相変わらず、茜さんとの交際を認めてくれず、私の生き方を否定している。
理解してもらおうというのは甘えだと思った。
誰に祝福されなくても、理解されなくても、私は私の人生を歩もうと決意を固めていた。

自分にとって一番大切なのは、家ではなく、茜さんだということがはっきりしていたから。


「総一郎、そんなこと絶対に許さん。おい、待て。言うことを聞きなさい。」

憤慨する父に背を向けて、私は実家を後にした。


白杜と華包には事前に私の決意を話し、父上は納得しないだろうから、この家のことは二人に全て任せる、と託しておいた。

身勝手だと思う人もいるかもしれない。
けれど、私は私の人生を自分で選び取ると覚悟を決め、その罰はなんでも受けようと思った。



茜さんに私の決意を伝えると、彼は涙を流して反対した。

「そんなの絶対ダメ・・・家族は大切にしてください。」

彼にとって「家族」というのがどれほど尊い存在なのか、私には痛いほどわかっていた。
母親に捨てられたこと、父親が誰かもわからないこと、彼は全てを私に話してくれていた。

それでも、私の愛する人を否定した父のもとで生きていくことはできないと思った。
私のこれからの人生は、茜さんと共に歩んでいきたいというのが、たった一つの願いだったから。

それから茜さんと、何時間もかけて、お互いの想いについて話し合った。
彼は私の考えを受け入れてくれて、理解しようと努めてくれた。


「茜さん、私の家族になってくれませんか?」

「・・・・はい。僕の、家族になってください・・・」


彼は大きな瞳から、大粒の涙を流して、何度も何度も頷いた。





私たちは、職場からそう遠くないところにマンションを借りて、二人で暮らし始めた。

同じ部屋で暮らすということは、ハードルが高すぎて、二人の生活に慣れるまでにかなりの時間がかかりそうだった。

実家暮らしが長かった私と、長いこと一人で暮らしてきた彼。
お互いが同じ家の中にいるという状況に、なかなか適応できない。


「茜さん、次の休みに一緒に買い物に行きませんか?」

お風呂上がりの茜さんと同じ空間で過ごすのは、とても気まずい。

私たちは未だに身体の関係を持てずにいた。

好きすぎて手が出せない、という状況が長く続きすぎて、タイミングがわからなかった。

今は部屋を分けているけれど、今週末には注文したダブルベッドが届く予定だ。


「買い物ですか?いいですよ。」

「お揃いの指輪を・・・買いたいと思っています。」


茜さんの目がパッと輝いて、私を見つめる。


「それって・・・」

「結婚指輪です。お揃いの指輪をしたいなぁと思っているんですが、どうでしょうか?」

「・・・大賛成です。」


駆け落ちをしてでも手に入れたかった茜さんとの生活は、まだ始まったばかりだ。

寝る前と、家を出る前に、キスをするようになったのは、大きな進展。

大事すぎて触れることもかなわないような彼との関係を、これからも大事に育てて行きたいと思う。


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