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aika

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♧『正義感』(SIDE 前旗 列)

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~~~~登場人物~~~~


♧前旗 列(まえはた れつ)

管制官。優等生で、潔癖症。曲がったことが大嫌い。正義感が強い。
パイロットの城に片思いをしている。
無口で扱いにくい上司の香月をロボットみたいなやつだと思っている。



♧香月 怜二(こうづき れいじ)
管制官。超ドSの変態。
艶黒髪、色白のイケメンだが、表情がない。高身長で、体格が良い。
血が通っていないと言われるほど、淡々と顔色を変えずに仕事をこなす。
優秀な仕事人間だと思われているが、乱れた私生活を送っている。



♧城 隼人(じょう はやと)

ジェット機のパイロット。正統派の色男。一途で誠実な性格がルックスにもにじみ出ている。
がっしりとした体型、長身で、日本人離れしたスタイル。
顎くらいまでの長さの黒髪、ウェーブ。国際便のパイロットなので、海外フライトでよく留守にする。
整備士の西とは恋人になって数年。溺愛し、大切にしている。


♧四条 理(しじょう おさむ)

整備係。作業服がブカブカで合うサイズがないほど細身。
無口で無表情。色の無い目をしている。関西人。抑揚のない淡々とした喋り方。
サラサラの茶髪、襟足が長い。童顔で可愛い顔立ちだが、目に力がなく暗い印象。
何考えてるのかわからないタイプ、といつも言われる。
人にひどく裏切られた過去があり、人を信用できず何も期待していない。
パイロットの城と恋人同士で溺愛されているが、優しすぎる相手に物足りなさを感じて浮気に走る。

~~~~~~~~~~



♧『正義感』(SIDE 前旗 列)


俺の上司はロボットみたいな男だ。
人間性に欠けている。
仕事に関して優秀なのはわかる。判断力はずば抜けているし、いつでも冷静。
ルックスが良いから、女性には人気がある。
高身長で高収入。
中身が最悪な奴でも、見てくれが良ければ良いという価値観は理解できない。

航空管制官という仕事は、ストレス耐性が低い人間には難しい。
咄嗟の判断力や、非常時に落ち着いていられる精神力。
ストレスを感じやすい俺には向いていないと、常々思っている。

香月 怜二という男は、きっとストレスなんて感じたことがないと思う。
いつでも自分の思い通りに相手を動かすし、わがまま放題。
冷酷で、横暴。
人を平気で見下す、冷たい視線。
突然仕事の締め切りを今日にすると言い出したり、協調性や思いやりというものが皆無だ。
優秀すぎるので周りは誰も文句を言うことができず、いつも振り回される。
そんな男が上司の俺は、自分の運のなさを呪うしかなかった。


「四条、こんなところでどうしたの?」

同期入社の四条しじょう おさむとばったり会った。
整備の更衣室と、管制官の更衣室は全く別の場所に位置するので、彼と会う機会は少なかった。

「人を待ってる。」

「誰?」

「・・・香月さんって人。」

四条の口からその名前を聞いたとき、俺はピンときてしまった。


「香月?香月怜二?」

「知ってるの?」

「知ってるも何も、俺の上司だよ。」


俺の上司だと伝えた時の、四条の顔色を見て、それは確信に変わってしまった。
俺は昔から、人の嘘に敏感なんだ。

四条は俺の上司と、浮気している。




俺には入社して以来、ずっと思い続けている相手がいる。

城 隼人。国際線のパイロットで、素晴らしい男性だ。
彼は俺の理想の男性像そのものだった。
一途で誠実。正統派の色男で、社内での信頼も厚い。
ものすごく仕事が出来るのに、謙虚で低姿勢。偉ぶることもなく、誰に対しても分け隔てなく優しい。ルックスも抜群で、茶色のウェーブヘア、高身長、手足も長く日本人離れしたセクシーさで、常に人目を集めるイケメンだ。

入社してすぐに彼と話す機会があり、色々と教えてもらってから、俺は彼の大ファンになってしまった。

そんな人がどうして四条の恋人なんだ。


表向きは普通に接しているけれど、俺は入社した当初から四条のことが苦手だった。
いつも冷めた口調で、気怠そうな態度。やる気も破棄も感じられず、無表情で無口な男。

彼と、隼人さんが恋人同士だと知った時は、ショックだった。


仕事帰り、ロッカーで着替えて空港の長い廊下を歩いていたら、隼人さんにばったりあった。
今日一日中彼のことを考えていたので、彼が実際に目の前にいることが信じられなかった。
会うのは何ヶ月ぶりだろう。国際線のパイロットは忙しく、なかなか顔を合わせる機会がない。


「あれ、列君?久しぶりだね。」

「隼人さん、お疲れ様です。お久しぶりですね!」

「四条は一緒じゃないんですか?」

「連絡したんだけど、今夜は友達の家に泊まるらしくてね。」


俺はいつもの正義感が働いてしまい、四条の浮気を隼人さんが知っているのかどうしても確かめたくなってしまった。
隼人さんが恋人なのに、香月なんかと浮気する四条が心底憎たらしかった。


隼人さんと空港近くのレストランで食事。久々に会ったからと、彼が誘ってくれた。
彼の車に乗って、彼と食事に行くなんて、まるで夢みたいだ。


「最近理の様子が変なんだ。いつもぼんやりしていて、上の空という感じでね。」


四条とのことをそれとなく聞き出したら、やっぱり関係はうまくいっていないようだった。


「彼、俺の上司とよく会ってるみたいです。」

「香月君と?」

「そうです。この前管制塔の近くで四条にばったり会って。聞いたら香月さんと約束してるって言ってました。」


四条は香月さんと何かある。俺の勘はよく当たる。

誰かが悪いことをしている時は特に。



「どう思いますか・・?隼人さんが留守の間に、うちの上司と・・・なんだか親密そうで、俺、気になってしまって。」

「いつも僕が留守にしているから、一人の部屋に帰りたくないんだろうな。」


「でも・・・隼人さんがいるのに、そんなの・・・・」


俺だったら絶対にそんなことしない。隼人さんのことだけ大切にするのに。

子どもの頃から優等生気質の俺は、曲がったことが大嫌いだった。
人を裏切るのは、正しくないことで、僕の正義感に反する。
無駄に正義感が強くて、融通が効かない。

人生はそんなに簡単じゃないし、正義感や理性だけで綺麗に割り切れることはほとんど無いのに。


「理は寂しがり屋なんだよ。」


ふっと、優しく笑う隼人さんの顔を見て、自分が傷付いたのだと分かった。

俺の入る隙なんてどこにもない。
隼人さんは四条のことを、心から愛しているのだと思い知った。


「俺だったら・・・俺が隼人さんの恋人だったら・・・・フラフラなんて絶対しないのに・・」


思わず口に出してしまっていた。

苦しかった。


自分の想いが片思いとして完結してしまうことが決定的になった今、胸にあるこの想いはただ苦しみしか生み出さない。


「ありがとう。列君は優しいな。」


ぽんぽん、と隼人さんが優しく俺の頭を撫でた。

誰にでも優しくて、そこが好きだった。
けれど、誰にでも優しいというのは、ひどく残酷なことなのだと、俺は今身にしみてわかった。




失恋。

人生初めての片思いが、失恋という幕引きで終わってしまった。



こんなに苦しいものなんだ。
好きな人に、自分の想いを伝えることさえできずに、好きだという気持ち自体を葬らなければならない。
せめて想いを口に出して伝えれば良かったのかもしれない。
そしてこっぴどく振られれば、もっと楽になったのかも。


大好きだった彼の笑顔が、この世で一番見たくないものに変わっていくのを俺はただぼんやりと傍観していた。


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