BOYS2️⃣

aika

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♤『元恋人』(SIDE 水松 夏)

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~~~~登場人物~~~~

♤水松 夏(すいしょう なつ) 21歳 ギター

ロックバンド「ジュネス」のギタリスト。
アシンメトリーで前下がりの赤毛、サイドは耳が隠れるくらいの長さ。
猫目が特徴のツンデレ男子。群れず、愛想がないので、生意気に見られがち。
ツンツンしている印象だが実は寂しがり屋。
同じバンドで、ルームメイトの文都にずっと想いを寄せていたが、セフレ扱いを受けて離れる決意をする。
亮と半同棲状態。


♤早川 亮(はやかわ あきら)23歳 

ロックバンドSAWのギタリスト。
黒髪に白メッシュのミディアムヘア。タレ目だが目力のあるイケメン。いつも仏頂面で、眉間にシワを寄せている。愛煙家。
Crossのギタリスト慎は、同棲していた元恋人。慎への気持ちを引きずっている。


♤三浦 綾次(みうら あやつぐ) 27歳 ベース

ロックバンドSAWのベーシスト。リーダー。
肩下30センチ以上ある、紫色のふわりとしたロングヘア。
ボリュームのあるパーマをかけている。
面倒見が良く、涙もろい。
最年少メンバーの雷と蛍をいつも気にかけ、可愛がっている。
ジュネスの椎堂獅とは元同じバンドで仲が良い。


♤椎堂 獅(しどう れお) 24歳 ボーカル

ロックバンド「ジュネス」のボーカル。フランスと日本のハーフ。金髪、青い瞳。
筋肉質で胸板が厚くがっしりとした体、190センチの長身。
女遊びが激しい俺様男。いつも偉そうな態度。声がでかい。
元同じバンドだったSAWの綾、Crossの黒木凌司と仲が良い。
雷と恋人同士。


~~~~~~~~~~~

♤『元恋人』(SIDE 水松 夏)

最近、亮の様子がおかしい。
あいつは口下手だし、自分の気持ちに鈍感。
思っていることがあったとしても、相手に伝えようなんて最初から思っていない。
何を聞いても「なんでもない」の一点張りだ。

彼のことを理解したいと思っている俺からしたら、そういう態度に出られるとお手上げだしたまらなくもどかしい。
文都みたいにヘラヘラと嘘ばかり口にする奴も問題だけど、せめて思っていることくらいは伝える努力をしてほしいと思う。

それでも部屋にセフレを連れ込んだり、誰彼構わず手を出してしまう倫理観が欠如した男よりはよっぽどマシだ。
俺の恋愛観の全ては文都を軸としているから、そもそもとても歪んでいるし普通じゃない。
大抵のことは許せるし、普通に接してもらえるだけでとても大切にされているように感じる。
亮が部屋にセフレを連れ込まないってだけで、俺を特別扱いしてくれているように思えてしまうから困りものだ。

贅沢言ってはいけないと思う。
自分だけが一方的に我慢して成り立っているような関係に慣れてしまうと、相手にどこまで求めていいのかわからなくなる。
相手が何を考えているかなんて結局はわからない。
言葉が全て本当とは言えないし、何も言わないから不誠実とも限らない。

セックスの途中、俺の上から降りて横になった亮の腕を枕にすると、彼が「悪い」と小さく呟いた。
人間なんて勝手なもんで、文都に散々裏切られて逃げ出してきたくせに、目の前にいつも安定した愛情を置かれるとそれはそれで物足りないと感じたりする。
大切に扱われたいと願っていたくせに、ライバルがいないと刺激がないなんて思ったりする。

不満があるのはお互い様だ。

「亮・・他に好きな奴が出来たら、早めに言ってほしい。」

何気なくそう言うと、彼は一瞬気まずい表情を浮かべた。
まさか当たりか?と急に不安になる。
こういう業界にいると出会いが多い。新しく好きな人が出来たとしてもおかしくない。

「そうじゃない。そう感じさせたなら悪かった。」

「答えになってない・・・・冷めたとか・・?」

そもそも冷める、という表現がしっくりくるような恋愛関係でもない。
熱烈に燃え上がるような恋じゃないからこそ、冷静に安定した関係を築いていけると思った。
一時の感情や刺激、欲望、ましてや肉体関係から始まる恋なんてろくなもんじゃないから。

「冷めたなんて思ってない。」

これ以上聞いたところで自分が納得いくような言葉を引き出すのは無理だろう。
嘘ばかりつく男と、無口な男。
中間の男っていないのかな。そんなことを思ってみる。
どんな奴が相手だって、結局はないものねだりばかりするんだろう。


♢♢♢♢♢♢


「亮に新しく好きな人?いや~、無い無い。」

獅に誘われて晩飯を一緒に食っていたら、綾が合流した。
獅は雷とうまくいってないらしい。呼び出されたからと急に帰ってしまい、綾と二人きりという奇妙な状況になった。

綾は亮と仲が良いから何か知ってるかと思い、それとなく探りを入れる。

「なんか変なんだよな、様子が。」

「あ~この前crossと音楽番組で一緒になったから、それのせいかな。何かあるとすれば。」

「cross?」

雷の兄貴がボーカルを務めているバンドだ。

「慎と何か話してたみたいだったから。」

「慎?」

「あ?あ~、ごめん。」

綾がまずい、という顔をした。俺に言ってはいけないことがあったらしい。

「慎のこと、聞いてなかったか?」

「慎ってcrossのギタリストだろ。亮と何かあるのか?」

「亮が話してるかと思ってつい口が滑った。悪い。俺が言ったって言わないでくれるか・・?」

「おう。俺も綾にコソコソ亮のこと聞いたとか思われたくないし、もちろん言わねぇよ。」

「・・・慎は、亮と同郷で、元恋人なんだよ。」

「元、恋人・・・・」

綾の言葉を確かめるように、繰り返す。

「もうかなり前に別れてるし、慎はボーカルの流風と公認の仲だから、とっくに終わったことだぞ?」

「そうなんだ。」

全然大丈夫。
俺は自分に言い聞かせるように、言葉にした。

白鳥 慎。
Crossのギタリスト。
亮の元恋人。

亮は彼に未練があるのだろうか?

胸の奥でザワザワと不穏な感情が膨らんでいった。
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