BOYS2️⃣

aika

文字の大きさ
上 下
32 / 52

♧『着物姿』(SIDE 東雲 龍牙)

しおりを挟む
~~~~登場人物~~~~


♧東雲 龍牙(しののめ りゅうが) 29歳 

東雲家長男。黒髪、肩より少し長いくらいのロン毛。
茶道家元の息子ながら、お茶には全く興味がない。
伝統を生かした日本家屋を専門に扱う一級建築士。茶室の設計を得意とする。
建築事務所を経営する若きやり手社長。周りにはいつも彼を支えたいという支援者が現れる。
家のことは総一郎に任せきり。


♧東雲 華包(しののめ かほう) 29歳

美青年。白い肌、色素の薄い茶色の細い髪。
知的で上品な顔立ち。華やかさがある。
和装の似合うしなやかな細身。中性的な魅力のある男性。
箔凪宗華が愛人との間に作った子ども。東雲家に養子として迎えられた。
長男の龍牙を一途に想っている。



♧蓮乗 志信(はすの しのぶ)

東雲龍牙の建築事務所の社員。
一級建築士の資格も持ちながら、インテリアデザイナーとして活躍している。
デザイン系に強いマルチな能力の持ち主。雑誌の取材も多い。
営業力もあり、企業とのコラボなど、次々と新たな企画を立ち上げる。
フェロモン系。泣き黒子が色っぽい印象を与える。肩下までの長さのウェーブヘア。黒髪。
龍牙のことが好きで、彼のためならなんでもやる。龍牙の優秀なビジネスパートナーであり、精神的支えでもある。
龍牙と半同棲のような生活をしている。


♧畝井 諒一(うねい りょういち)

呉服屋の息子。着物姿の色男。やり手の社長。
細縁のメガネ、七三に綺麗になでつけられた髪型。
鋭い切れ長の瞳。知的な顔立ち。
抑揚のない声で話す、冷たい印象の美男。
志信に惚れている。


~~~~~~~~~~~




♧『着物姿』(SIDE 東雲 龍牙)

着物のモデルとして華包がショーに出てくれることになった。
茶道家元の養子である華包はその儚く美しいルックスから、自らがモデルとなり東雲家の広報を務めている。
話題性もあり、茶道の普及活動にもなるということで、親父の許可を得て華包が出演してくれることになった。

彼の華やかさは、群を抜いている。

志信や畝井の大人の男の色気も素晴らしく、日本男性の魅力あふれる着物姿ではあるが、華包の美しさは独特な雰囲気を纏っていた。
幼さが少し残るような甘酸っぱさと、女性っぽい色気も兼ね備えているその立ち姿は、思わず見惚れてしまうほどの妖艶さを漂わせている。

俺にとって華包はやはり特別な存在なのだと否応なしに認めざるを得ない。
そんな実感を伴う感情が、胸を熱くしていた。


青春時代、俺は彼にただならぬ情愛を抱いていた。
彼の全てが欲しくて、一つになりたくて、そばにいたくて、たまらなかった。
どうしてこれほど彼を欲しいと思うのか、自分で自分がわからないほど、求めていた相手。

親父が彼に手を出そうとした時は、殺したいほど憎いと思った。
彼に触れる奴は、誰だって許せないという激しい独占欲と、情欲が俺を突き動かす。
理性じゃなく感情が、潜在意識が彼を求めているのだと思った。


大人になると同時に、その感情は捨て置いた。
仕事に没頭し、志信というパートナーを得たことで、俺は彼への未練を打ち切った。
はずだった。

「龍牙さん、どうですか・??」

時間を忘れて彼に見惚れていた俺は、話しかけられようやく我にかえる。

「似合ってる、華包はやっぱり綺麗だ。あの頃と変わらない。」

彼の着物姿は自宅で見慣れていたが、いつもとは違う。
彼には高級な着物がとても映える。天性の色香があった。

「華包さん、とてもお似合いです。」
志信が俺と華包の間にスッと入ってきて、着物のチェックをする。

「サイズもぴったりみたいですね。」

「ありがとうございます。素晴らしいデザインの着物を着せていただいて、嬉しいです。」

華包は嬉しそうに鏡の中の自分を見る。後ろから彼を見ていた俺と鏡の中で目が合い、アイコンタクトするように可愛らしく微笑んだ。

俺は華包の美しさにすっかり心を奪われていた。
彼の美しさ。妖艶さ。
手を触れてはいけない、禁断の果実のような魅力。
いけないと思えば思うほど、彼に恋焦がれるこの気持ちは、止めることはできない。


「龍牙、打ち合わせしたいんだけど、いいかな。」

志信が何か言いたげな顔で、俺を見ている。
パートナーの彼を差し置いて、華包に見惚れているなんて許されない。
頭でそう理解していても、身体がいうことを聞かなかった。

彼を見ていたい。
華包の美しさを、この目で堪能し尽くしたい。

「・・龍牙?」

「あぁ、悪い。今行くよ。」


志信は大人の男だ。
パートナーとしては最高。俺のことを理解して立ててくれるし、先読みして動いてくれる。
彼のサポートなしでは、俺の仕事はうまく進まない。
余裕のある態度で多少のことは許してくれるし、焦らずそばで見守ってくれている。



♢♢♢♢♢♢



「龍牙さん、僕そろそろ帰ります。」

自分の着物に着替え終えた華包が、帰り際声をかけてくれる。

先ほどまでの華やかな着物とはまた違った落ち着きのある着物。
彼は本当に和装が似合う。

「華包、送っていくよ。」

「え・・あ、でもお仕事まだあるんじゃないですか・・・?」

彼は俺と志信を交互に見た。

リストのチェック作業をしている志信が顔を上げて、目が合う。


「あとは俺がやっておくから、大丈夫。龍牙、たまにはお父様にも顔見せないとね。」

志信は大人の余裕を感じさせる微笑みを浮かべる。

「華包さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。本番もよろしくお願いします。」




♢♢♢♢♢♢


「素敵な方ですね。」

車が走り出すと、助手席に座った華包がそう呟いた。

「ん?何か言ったか?」

「志信さん、素敵な方ですね。」

「そうだな。いつもよくやってくれて、本当に助かってるよ。」

志信の余裕の微笑みには参った。本当に大人で成熟したいい男だ。
改めてそう感じた。

志信が畝井と親しくしているのを見た俺は、あからさまに嫉妬したというのに。
今更ながら自分の未熟さが恥ずかしくなる。

「僕もあんなふうに、大人の素敵な男性になりたいです。」

目を伏せてそう言った華包の表情は儚げで色香を感じてしまう。
先ほど見た彼の妖艶な着物姿が思い出されて、変な気分になった。

志信というパートナーがいながら、華包の美しさに触れてみたいと願うなんて。
俺は本当に未熟だ。

「華包には華包の良さがあるから、そのままで良い。」

本心だった。
彼にはそのままでいて欲しい。
少年のような青く幼い部分を感じさせつつ、大人の色香を併せ持つ彼のギャップ。
男をたまらない気持ちにさせる、彼独特の雰囲気。

「・・・嬉しいです。」

目を伏せたまま顔を赤くした華包が視界に入る。
心をかき乱される。

彼の清純さ。
ウブな彼の態度が、男の欲望を刺激する。

「華包・・・」

手を伸ばして助手席に座る彼の手を掴んだ。

運転中なので、視界は前を見たまま、彼の手を握る。

「龍牙さん・・・」

「何か困ったことがあれば、いつでも俺に相談してくれよ。」

「あ・・ありがとうございます。」


俺には志信がいる。
彼のことは大好きだし、性的対象として魅力を感じている。
パートナーとしてずっと大切にしたいし、仕事の相棒としてもそばにいて欲しい。

心からそう思っているのに。

俺は、華包の美しい着物姿にやられてしまっている。
いけないと思いながらも、彼に触れたいという欲望が膨れ上がるのを抑えられない。

キスしたい。
触れたい。

床の間でウブな彼の身体を暴いてしまいたい。


酒を飲んでいるわけでもないのに、どうかしている。

男の身勝手で醜い欲望。俺は運転に意識を集中させる。



恥ずかしそうに硬直していた華包の手が、俺の手をギュッと握り返した。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

我慢できないっ

滴石雫
大衆娯楽
我慢できないショートなお話

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

処理中です...