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♧『失恋の痛手』(SIDE 神山 海斗)
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~~~~登場人物~~~~
♧神山 海斗(かみやま かいと)
ジェット機のパイロット。副操縦士。
目立ちたがり屋。自分が一番じゃないと気が済まない性格。
イケメンだが、さらにイケメンのルーヴィム機長が目立つので、いつも面白くない気持ちで働いている。
設計課の東雲に想いを寄せているが、素直になれず突っかかってばかり。
ディスパーチャーの桐堂とは犬猿の仲。
♧東雲 総一郎(しののめ そういちろう)27歳
遥の同僚。航空エンジニア。
由緒正しき茶道家元の跡取り息子。正統派男子。和服の似合う色男。
黒髪、サイドをジェルで後ろに流している。優しく穏やかな物腰。
仕事ができて、誰に対しても礼儀正しい誠実な男。いつも敬語で話す。
♧桐堂 要(とうどう かなめ)
フライトプランの作成をするディスパッチャー。フェロモン系のイケメン。よくハーフに間違えられる。長身。
ベージュ系の髪にスパイラルパーマをかけている。妻帯者。妻はフランス人。
女性には優しく紳士的な態度だが、男性相手だところっと変わり、めちゃくちゃ性格も態度も悪い。神山といつも言い争いしている。
~~~~~~~~~~
♧『失恋の痛手』(SIDE 神山 海斗)
「神山さん、これ落としませんでしたか?」
「俺の時計・・・どうして、俺のだとわかった?」
「このブランドの時計が好きだって言ってましたよね。」
東雲 総一郎に恋をしたのは、些細なことがきっかけだった。
飲み会ですっかり酔ってしまった俺は、何故か時計を外したらしくどこかに置いてきてしまった。
酒に弱い俺は、大した量を飲んでいなくても記憶が飛んでしまうことが時々ある。
それほど高級なわけではなかったけれど、デザインが気に入って大切にしていた時計。
フライトで訪れた海外の街で買った限定ものだったので落ち込んでいたら、東雲が俺のものだと気づいて持っていてくれた。
以前、打ち合わせの席で俺が好きだと言った時計のメーカーを彼が覚えていたのだ。
俺はそれ以来、東雲を意識するようになり、気付いたら夢中になっていた。
パイロットの仕事は体力的にも精神的にもきつい。
俺は精神力がある方ではないと自覚しているので、仕事以外で精神的に落ち込むようなことは避けて通っていた。
恋なんてする気もなかった。
特に片思いなんて、絶対にするべきじゃなかった。
人様の命を預かる仕事をしている以上、プライベートでの出来事で仕事に支障が出るようなことだけは避ける。それが俺の信念だった。
自分のことを好きだと言ってくれた相手とだけ、恋愛関係になる。
今まではずっとそうして生きてきたのだ。
自分から好きになって告白するようなことは一度もなかった。
ペアを組んでいる機長がカッコ良すぎるので、最近自信をなくしかけているが、
俺はルックスは良い。
女も男も寄ってくるし、パイロットという職業は多方面から需要がある。
特別扱いされることには慣れていた。
その中から相手を選べばそれでいい。そう思っていたのに。
「神山さんは、どんなお酒が好きですか?」
「フライトで行った先でよくワインを飲むから、最近はワインばかりだな。」
「いいですね。僕は、飛行機が大好きでこの仕事についたので、小さな頃からパイロットは憧れの職業でした。」
お礼にと食事に誘ったら彼は恐縮していたが、割り勘ならと誘いにのってくれた。
屈託なく笑う彼の優しい瞳。穏やかな話し声。柔らかな物腰。
全てが良いと思った。
「パイロットの仕事は結構精神的にキツイし、見た目より華やかな仕事じゃない。」
「そうですよね。きついお仕事なのに、いつも姿勢をピンと伸ばしてフライトに向かっていくパイロットの皆さんは、かっこいいなぁと思います。人の命を預かる仕事ですし、気を抜けないからこそのやりがいがありますよね。」
彼は飛行機の設計に携わっている。
人の命を預かるという意味では、空港で働いている全員が同志だ。
彼の仕事に対する姿勢、人に対して素直に尊敬の念を表せる人柄。
俺は彼のことが大好きでたまらなくなっていた。
フライト前に事務所で顔を合わせるのが楽しみで、いつもソワソワしてしまう。
彼の顔を見ると、癒される。彼の柔らかい雰囲気がフライト前の緊張を和らげてくれる。
そんな一途な想いを抱いていても素直じゃない性格が災いして、俺の恋愛は一向に進展する気配がなかった。
ある日のフライト前、事務所で彼と顔を合わせた。
いつも以上に彼の笑顔が眩しい。
何かいいことでもあったのだろうか、と何気なく聞いたのが間違いだった。
「東雲、今日は随分機嫌が良さそうだな。」
「え・・・、わかりますか。」
「何かいいことでもあったのか?」
「恋人が、出来たんです。」
この時の記憶は、未だに何度も何度もリピートして、俺を苦しめる。
初めて自分から好きになった人に、何もしないままに、振られてしまった。
好きだと打ち明けていれば、何かが違ったのだろうか?
そんな風にうじうじと考え込む、堂々巡りの日々。
彼の気持ちを手に入れた人間は、どんな奴なのだろう?
同じ空港内で働く人間だと聞いて、さらにショックを受けた。
失恋の痛手から立ち直るにはどうしたら良いのか、経験のない俺にはわからなかった。
「なんだよ、暗い顔してんなぁ。お前。」
桐堂要。
俺の大嫌いなディスパッチャー。
犬猿の仲として、いつもいがみ合っている男だ。
「お前には関係ないだろ。」
フライト前にこいつの顔を見るのが本当に苦痛だった。
「失恋でもしたのか?・・・なんだ、図星かよ。」
俺の顔を見た桐堂は、心底可笑しいという顔で笑う。
「うるせぇよ。黙れ。」
失恋による傷は、早く対処しないと取り返しのつかない事態になる。
俺は数時間後、自分の身を以てそう知ることになった。
♧神山 海斗(かみやま かいと)
ジェット機のパイロット。副操縦士。
目立ちたがり屋。自分が一番じゃないと気が済まない性格。
イケメンだが、さらにイケメンのルーヴィム機長が目立つので、いつも面白くない気持ちで働いている。
設計課の東雲に想いを寄せているが、素直になれず突っかかってばかり。
ディスパーチャーの桐堂とは犬猿の仲。
♧東雲 総一郎(しののめ そういちろう)27歳
遥の同僚。航空エンジニア。
由緒正しき茶道家元の跡取り息子。正統派男子。和服の似合う色男。
黒髪、サイドをジェルで後ろに流している。優しく穏やかな物腰。
仕事ができて、誰に対しても礼儀正しい誠実な男。いつも敬語で話す。
♧桐堂 要(とうどう かなめ)
フライトプランの作成をするディスパッチャー。フェロモン系のイケメン。よくハーフに間違えられる。長身。
ベージュ系の髪にスパイラルパーマをかけている。妻帯者。妻はフランス人。
女性には優しく紳士的な態度だが、男性相手だところっと変わり、めちゃくちゃ性格も態度も悪い。神山といつも言い争いしている。
~~~~~~~~~~
♧『失恋の痛手』(SIDE 神山 海斗)
「神山さん、これ落としませんでしたか?」
「俺の時計・・・どうして、俺のだとわかった?」
「このブランドの時計が好きだって言ってましたよね。」
東雲 総一郎に恋をしたのは、些細なことがきっかけだった。
飲み会ですっかり酔ってしまった俺は、何故か時計を外したらしくどこかに置いてきてしまった。
酒に弱い俺は、大した量を飲んでいなくても記憶が飛んでしまうことが時々ある。
それほど高級なわけではなかったけれど、デザインが気に入って大切にしていた時計。
フライトで訪れた海外の街で買った限定ものだったので落ち込んでいたら、東雲が俺のものだと気づいて持っていてくれた。
以前、打ち合わせの席で俺が好きだと言った時計のメーカーを彼が覚えていたのだ。
俺はそれ以来、東雲を意識するようになり、気付いたら夢中になっていた。
パイロットの仕事は体力的にも精神的にもきつい。
俺は精神力がある方ではないと自覚しているので、仕事以外で精神的に落ち込むようなことは避けて通っていた。
恋なんてする気もなかった。
特に片思いなんて、絶対にするべきじゃなかった。
人様の命を預かる仕事をしている以上、プライベートでの出来事で仕事に支障が出るようなことだけは避ける。それが俺の信念だった。
自分のことを好きだと言ってくれた相手とだけ、恋愛関係になる。
今まではずっとそうして生きてきたのだ。
自分から好きになって告白するようなことは一度もなかった。
ペアを組んでいる機長がカッコ良すぎるので、最近自信をなくしかけているが、
俺はルックスは良い。
女も男も寄ってくるし、パイロットという職業は多方面から需要がある。
特別扱いされることには慣れていた。
その中から相手を選べばそれでいい。そう思っていたのに。
「神山さんは、どんなお酒が好きですか?」
「フライトで行った先でよくワインを飲むから、最近はワインばかりだな。」
「いいですね。僕は、飛行機が大好きでこの仕事についたので、小さな頃からパイロットは憧れの職業でした。」
お礼にと食事に誘ったら彼は恐縮していたが、割り勘ならと誘いにのってくれた。
屈託なく笑う彼の優しい瞳。穏やかな話し声。柔らかな物腰。
全てが良いと思った。
「パイロットの仕事は結構精神的にキツイし、見た目より華やかな仕事じゃない。」
「そうですよね。きついお仕事なのに、いつも姿勢をピンと伸ばしてフライトに向かっていくパイロットの皆さんは、かっこいいなぁと思います。人の命を預かる仕事ですし、気を抜けないからこそのやりがいがありますよね。」
彼は飛行機の設計に携わっている。
人の命を預かるという意味では、空港で働いている全員が同志だ。
彼の仕事に対する姿勢、人に対して素直に尊敬の念を表せる人柄。
俺は彼のことが大好きでたまらなくなっていた。
フライト前に事務所で顔を合わせるのが楽しみで、いつもソワソワしてしまう。
彼の顔を見ると、癒される。彼の柔らかい雰囲気がフライト前の緊張を和らげてくれる。
そんな一途な想いを抱いていても素直じゃない性格が災いして、俺の恋愛は一向に進展する気配がなかった。
ある日のフライト前、事務所で彼と顔を合わせた。
いつも以上に彼の笑顔が眩しい。
何かいいことでもあったのだろうか、と何気なく聞いたのが間違いだった。
「東雲、今日は随分機嫌が良さそうだな。」
「え・・・、わかりますか。」
「何かいいことでもあったのか?」
「恋人が、出来たんです。」
この時の記憶は、未だに何度も何度もリピートして、俺を苦しめる。
初めて自分から好きになった人に、何もしないままに、振られてしまった。
好きだと打ち明けていれば、何かが違ったのだろうか?
そんな風にうじうじと考え込む、堂々巡りの日々。
彼の気持ちを手に入れた人間は、どんな奴なのだろう?
同じ空港内で働く人間だと聞いて、さらにショックを受けた。
失恋の痛手から立ち直るにはどうしたら良いのか、経験のない俺にはわからなかった。
「なんだよ、暗い顔してんなぁ。お前。」
桐堂要。
俺の大嫌いなディスパッチャー。
犬猿の仲として、いつもいがみ合っている男だ。
「お前には関係ないだろ。」
フライト前にこいつの顔を見るのが本当に苦痛だった。
「失恋でもしたのか?・・・なんだ、図星かよ。」
俺の顔を見た桐堂は、心底可笑しいという顔で笑う。
「うるせぇよ。黙れ。」
失恋による傷は、早く対処しないと取り返しのつかない事態になる。
俺は数時間後、自分の身を以てそう知ることになった。
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