BOYS2️⃣

aika

文字の大きさ
上 下
16 / 52

♧『失恋の痛手』(SIDE 神山 海斗)

しおりを挟む
~~~~登場人物~~~~


♧神山 海斗(かみやま かいと)

ジェット機のパイロット。副操縦士。
目立ちたがり屋。自分が一番じゃないと気が済まない性格。
イケメンだが、さらにイケメンのルーヴィム機長が目立つので、いつも面白くない気持ちで働いている。
設計課の東雲に想いを寄せているが、素直になれず突っかかってばかり。
ディスパーチャーの桐堂とは犬猿の仲。


♧東雲 総一郎(しののめ そういちろう)27歳

遥の同僚。航空エンジニア。
由緒正しき茶道家元の跡取り息子。正統派男子。和服の似合う色男。
黒髪、サイドをジェルで後ろに流している。優しく穏やかな物腰。
仕事ができて、誰に対しても礼儀正しい誠実な男。いつも敬語で話す。


♧桐堂 要(とうどう かなめ)

フライトプランの作成をするディスパッチャー。フェロモン系のイケメン。よくハーフに間違えられる。長身。
ベージュ系の髪にスパイラルパーマをかけている。妻帯者。妻はフランス人。
女性には優しく紳士的な態度だが、男性相手だところっと変わり、めちゃくちゃ性格も態度も悪い。神山といつも言い争いしている。





~~~~~~~~~~


♧『失恋の痛手』(SIDE 神山 海斗)



「神山さん、これ落としませんでしたか?」


「俺の時計・・・どうして、俺のだとわかった?」


「このブランドの時計が好きだって言ってましたよね。」



東雲 総一郎に恋をしたのは、些細なことがきっかけだった。




飲み会ですっかり酔ってしまった俺は、何故か時計を外したらしくどこかに置いてきてしまった。
酒に弱い俺は、大した量を飲んでいなくても記憶が飛んでしまうことが時々ある。

それほど高級なわけではなかったけれど、デザインが気に入って大切にしていた時計。
フライトで訪れた海外の街で買った限定ものだったので落ち込んでいたら、東雲が俺のものだと気づいて持っていてくれた。

以前、打ち合わせの席で俺が好きだと言った時計のメーカーを彼が覚えていたのだ。
俺はそれ以来、東雲を意識するようになり、気付いたら夢中になっていた。


パイロットの仕事は体力的にも精神的にもきつい。
俺は精神力がある方ではないと自覚しているので、仕事以外で精神的に落ち込むようなことは避けて通っていた。

恋なんてする気もなかった。
特に片思いなんて、絶対にするべきじゃなかった。


人様の命を預かる仕事をしている以上、プライベートでの出来事で仕事に支障が出るようなことだけは避ける。それが俺の信念だった。


自分のことを好きだと言ってくれた相手とだけ、恋愛関係になる。
今まではずっとそうして生きてきたのだ。
自分から好きになって告白するようなことは一度もなかった。


ペアを組んでいる機長がカッコ良すぎるので、最近自信をなくしかけているが、
俺はルックスは良い。
女も男も寄ってくるし、パイロットという職業は多方面から需要がある。
特別扱いされることには慣れていた。

その中から相手を選べばそれでいい。そう思っていたのに。



「神山さんは、どんなお酒が好きですか?」


「フライトで行った先でよくワインを飲むから、最近はワインばかりだな。」


「いいですね。僕は、飛行機が大好きでこの仕事についたので、小さな頃からパイロットは憧れの職業でした。」



お礼にと食事に誘ったら彼は恐縮していたが、割り勘ならと誘いにのってくれた。
屈託なく笑う彼の優しい瞳。穏やかな話し声。柔らかな物腰。

全てが良いと思った。


「パイロットの仕事は結構精神的にキツイし、見た目より華やかな仕事じゃない。」

「そうですよね。きついお仕事なのに、いつも姿勢をピンと伸ばしてフライトに向かっていくパイロットの皆さんは、かっこいいなぁと思います。人の命を預かる仕事ですし、気を抜けないからこそのやりがいがありますよね。」

彼は飛行機の設計に携わっている。
人の命を預かるという意味では、空港で働いている全員が同志だ。
彼の仕事に対する姿勢、人に対して素直に尊敬の念を表せる人柄。



俺は彼のことが大好きでたまらなくなっていた。
フライト前に事務所で顔を合わせるのが楽しみで、いつもソワソワしてしまう。
彼の顔を見ると、癒される。彼の柔らかい雰囲気がフライト前の緊張を和らげてくれる。

そんな一途な想いを抱いていても素直じゃない性格が災いして、俺の恋愛は一向に進展する気配がなかった。



ある日のフライト前、事務所で彼と顔を合わせた。
いつも以上に彼の笑顔が眩しい。
何かいいことでもあったのだろうか、と何気なく聞いたのが間違いだった。


「東雲、今日は随分機嫌が良さそうだな。」


「え・・・、わかりますか。」


「何かいいことでもあったのか?」


「恋人が、出来たんです。」



この時の記憶は、未だに何度も何度もリピートして、俺を苦しめる。

初めて自分から好きになった人に、何もしないままに、振られてしまった。


好きだと打ち明けていれば、何かが違ったのだろうか?

そんな風にうじうじと考え込む、堂々巡りの日々。

彼の気持ちを手に入れた人間は、どんな奴なのだろう?

同じ空港内で働く人間だと聞いて、さらにショックを受けた。



失恋の痛手から立ち直るにはどうしたら良いのか、経験のない俺にはわからなかった。



「なんだよ、暗い顔してんなぁ。お前。」


桐堂要。
俺の大嫌いなディスパッチャー。

犬猿の仲として、いつもいがみ合っている男だ。


「お前には関係ないだろ。」


フライト前にこいつの顔を見るのが本当に苦痛だった。


「失恋でもしたのか?・・・なんだ、図星かよ。」

俺の顔を見た桐堂は、心底可笑しいという顔で笑う。


「うるせぇよ。黙れ。」


失恋による傷は、早く対処しないと取り返しのつかない事態になる。




俺は数時間後、自分の身を以てそう知ることになった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【※R-18】αXΩの事情

aika
BL
※エロ、グロ、治療行為など何でもありのため苦手な方はご注意願います。α、Ωに関する特別設定あり 男性しか存在しない世界・・少子化に追い打ちをかける事件事故が頻発し、人類は滅亡の危機を迎えていた。α、Ω、二つの性が現存するこの世界で、政府は一定の年齢に達した男性全員に生殖能力を上げるための検査、治療を義務化すると発表する。 研究施設で働く美濃琥珀は、生殖分野の第一人者として成人男性たちの治療と研究に明け暮れる日々を送っていた・・・・ α、Ωそれぞれの視点から、検査、治療、妊娠、出産・・・を描く。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

処理中です...