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♤『不機嫌』(SIDE 椎堂 獅)
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♤椎堂 獅(しどう れお) 24歳 ボーカル
ロックバンド「ジュネス」のボーカル。フランスと日本のハーフ。金髪、青い瞳。
筋肉質で胸板が厚くがっしりとした体、190センチの長身。
女遊びが激しい俺様男。いつも偉そうな態度。声がでかい。
♤八神 雷(やがみ らい) 19歳
ロックバンドSAWのボーカル。
赤髪のウルフヘア、黒のインナーカラー。襟足が長く、肩下10センチの長髪。
小柄だが声量がものすごい。きつい印象を与える目力があるが、童顔で可愛い顔立ちなのがコンプレックス。
八重歯がかわいい。性格はキレやすく攻撃的。舐められないように肩肘を張って生きている。
人見知り、ツンデレ、天邪鬼だが、根はとても繊細、純粋で傷つきやすい。寂しがり屋。
初恋のギタリスト臣(オミ)を三つ子の弟に取られたことがトラウマで、恋愛には臆病。
~~~~~~~~~~
♤『不機嫌』(SIDE 椎堂 獅)
最近、雷の様子がおかしい。
気分屋だし神経質な奴だから、ちょっとしたことで拗ねたり怒ったりは今まで何度もあった。
俺は小さいことは全く気にならない体質だ。
いつだって今、目の前で起きていることが一番大事で一番重要。
そう思って生きている。
過去がどうだとか、将来が大事だとか言う奴は多い。
過去にも未来にも構ってる暇はねぇ。
今を全力で生きる奴だけが、勝ちだとそう信じて生きてきた。
生き方は人それぞれだから、何が正しいとか間違ってるとかは言えない。
だけど、自分と明らかに違う考えの人間に恋をした場合はどうするべきなのか。
「なぁ、なんでそんな態度なんだよ。お前。」
「・・・別に。」
付き合い始めて数ヶ月。
気分屋の恋人は、俺には全く理解が出来ない理由で、突然不機嫌になる。
聞いても簡単には理由を教えてくれない。
正直、面倒くせえ奴、というのが俺の感想の全てで、それ以上にもそれ以下にも思っていなかった。
自分と全く違う人間が何を考えているかなんて、俺にわかるはずがない。
深く考えても仕方ない。そう思った。
久々に俺の部屋で過ごす二人の時間。
彼はずっと仏頂面でソファに座り、雑誌を読んでいる。
昨日発売になったばかりの、俺らのバンドが巻頭カラーで特集されている音楽関連の雑誌。
「不機嫌になるのはいいけど、その理由をちゃんと話せよ。」
「だからなんでもないって、」
「ないわけねぇだろ。」
腕を掴んでキスすると、雷は顔を赤くして黙り込んだ。
「何があった。話してみろ。」
恋人にこんな態度を取られるのは面白くない。
それでも向き合おうと思うのは、相手がこいつだからだ。
初めて本気で関係を築きたいと思った相手。
俺なりに大事にしているつもりだった。
「お前・・陸のことが、好きだったのかよ?」
雷は親の仇でも見るような形相で、俺を睨みつける。
「陸?」
「俺の弟だよ。」
今更その話かよ。
雷の怒っている理由がわかったのはいいけれど、拍子抜けだった。
「ああ、それがどうした?」
「な・・・っ、どうしたじゃねぇよ。陸にしつこくアタックしたけど、なびかなかったから同じ顔の俺にしたのかよ・・!」
ああ、面倒くせえ。
そんな昔の話を今更蒸し返して、何を怒ってんだ。このガキは。
「確かにちょっかい出したけど、あいつめちゃくちゃ性格悪いだろ。顔は好みだったけどな。」
「それで同じ顔の俺を選んだわけか・・・」
それの何がそんなにいけないことなんだ?
俺にはこいつの怒りが全く理解できなかった。
「お前の顔は好みだけど、それだけで選んだわけじゃねぇよ。」
「俺はあいつとは違う。あいつの代わりに選ばれたくなんかない。」
「はぁ?お前、意味わかんねぇ。陸の代わり?お前が?んなわけねぇだろ。」
雷は思い込みが激しい。自分でそうだと思い込んだら、誰が何を言おうが聞かない。
結局こいつは自分のことしか信じていないんだ。
「陸がいいなら、陸のとこへ行けよ。」
「だから~、俺の話聞いてたか?」
埒が明かない。子どもみたいに、同じことを何度も繰り返す。
「俺はお前が良いって、言ってんだろうが。」
腕を押さえつけて、ソファに押し倒した。
「やめろ・・・っ、俺とヤってる時も・・陸のこと想像してたのかよ・・・っ」
「ああ?んなわけねぇだろ。俺はお前が好きなんだよ。わかんねぇか?」
「俺の顔が好きなだけなんだろ。」
雷はいつの間にか涙目になっている。本当にこいつは子どもだ。
自分に自信がなくて、いつも何かを恐れている。見えない敵と戦っている。
「じゃあなんで・・っ、俺を選んだんだよ・・・っ」
「お前の声に惚れた。・・・あとはそういうわけわかんなくて面倒くせえとこも、すぐ泣いて子どもみたいに駄々こねるとこも、可愛いって思えるくらい、好きなんだよ。」
んなこと言わせんな。
雷は目をまあるくして、俺を見る。
俺様がこんなに甘い顔を見せるのは、お前だけだっていい加減に気付けよ。
彼がこうやって駄々こねたり拗ねたりするたびに、俺はこの恋に本気なのだと思い知る。
「お前は?顔だけで俺のこと好きになったのかよ?」
「そんなわけ、ねーだろ。顔は別に好みじゃねぇし。」
生意気。
こんな態度さえ可愛くて、愛おしい。
「だろ?顔だけでこんなに好きになれる訳ねーんだよ。」
深くキスをする。
何度キスを重ねても、身体を重ねても、慣れることのない彼の初々しい態度。
素直じゃない強がりも、臆病ですぐに攻撃を仕掛けてくる弱さも、全部まとめて欲しいと思う。
「獅・・ぉ・・・苦し・・っ」
俺を困らせたお仕置きだ。
心の中でそう呟いて、もう一度深く口付けた。
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