声優彼氏

aika

文字の大きさ
上 下
10 / 18

第9話 『無茶振り』

しおりを挟む


(俺の家に声優さんが来るなんて、なんか変な感じ・・・)

真白は言葉通り本当に家まで着いてきた蒼士を目の前に、自分の家なのに落ち着かない気持ちになっていた。

この部屋に遊びに来る人間は、暁だけだ。
暁以外の人間が、自分のベッドの上に腰掛けている状況に真白は居心地の悪さを感じていた。

「ねぇ。早速練習しようよ。」

彼はボソリ、と小さな声で呟く。
無表情で無口な彼の心理状況がまるで読めない真白は、どう距離をとっていいものかまるで掴めずにいた。

「えっと、そうだな。台本持ってる?」

「もちろん。持ってきてる。」

「可愛い顔立ちのムードメーカーいつも明るいワンコ君攻めX無口で無表情愛想のない優等生受け」というコンセプト。

「え?台本見ないの?」

「それくらい頭に入ってる。いいから始めて。」

(え・・マジで、蒼士君すげー!!!)

真白は大きく深呼吸してから、演技を始める。


『なぁ、俺だってお前とそういうことシてみたいって・・本当は思ってる。』

『そういうことって・・・何・・?』

『だから~・・・、頭の良い優等生君ならわかるだろ?』

『・・わかんないよ・・・ちゃんと航の口から言ってくれなきゃ・・・』

『な・・・なんでそんな可愛い顔すんの・・・?俺、我慢してたのに・・・』

『え・・っん・・・んぅ・・・・航・・・・急に・・・あ・・・っ何・・』

『お前が悪い。そんな可愛い顔されたら・・俺我慢できなくなっちゃうよ』

『んぁ・・・航・・っ、・・・んん・・・ッ』

『湊・・・好きだよ・・・・』

「ちょっと待って。」

蒼士が真顔でストップをかける。

「なんかイマイチ役に入り込めない。」

「そう?すごいうまいって思ったけど、俺。」

「リアリティが無いっていうか・・・真白君、キスしたことある?」

「え!キ・・キス・・・?」

「もちろん男とのキスね。」

「いや~・・・・それは・・・」

ある。暁にこの部屋でキスされた経験が。でも「ある!」と大きな声で返事できない自分がいて、真白はそれとなく濁した。

「無いでしょ。俺たち二人とも男同士でキスしたことがないから、リアリティも何もないんだよ。」

「いや、でも役ってそういうもんじゃ・・・?」

「真白君、僕にキスしてみてよ。」

「え・・・?え・・っ?!」

「真白君が攻めだから、早く・・・キスして。」

(冗談・・・だよな・・・?)

蒼士はいつも通りの無表情でじっと真白を見つめたままだ。

(え・・・?本気・・・・・?!)

受けキャラの無茶振りに、攻め慣れていない真白は沈黙するしかなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

俺様ボスと私の恋物語

福山ともゑ
BL
東京で生まれて一度は引っ越した福山友明は、現在は東京に戻り大学医学部の3年生になった。 あと1ヵ月で合気道の段試合を控えてた、あの日。 ベンツに当てられてしまい、もしかして段試合を棄権する羽目になる? そのベンツ野郎は日独のハーフで俺様な院長(ボス)をしている福山博人。 友明は大学では『ボス』と呼ばれてる。 その2人の物語です。  (注:ブログ投稿した小説ですが、編集校正してます)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

処理中です...