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第9話 『無茶振り』
しおりを挟む(俺の家に声優さんが来るなんて、なんか変な感じ・・・)
真白は言葉通り本当に家まで着いてきた蒼士を目の前に、自分の家なのに落ち着かない気持ちになっていた。
この部屋に遊びに来る人間は、暁だけだ。
暁以外の人間が、自分のベッドの上に腰掛けている状況に真白は居心地の悪さを感じていた。
「ねぇ。早速練習しようよ。」
彼はボソリ、と小さな声で呟く。
無表情で無口な彼の心理状況がまるで読めない真白は、どう距離をとっていいものかまるで掴めずにいた。
「えっと、そうだな。台本持ってる?」
「もちろん。持ってきてる。」
「可愛い顔立ちのムードメーカーいつも明るいワンコ君攻めX無口で無表情愛想のない優等生受け」というコンセプト。
「え?台本見ないの?」
「それくらい頭に入ってる。いいから始めて。」
(え・・マジで、蒼士君すげー!!!)
真白は大きく深呼吸してから、演技を始める。
『なぁ、俺だってお前とそういうことシてみたいって・・本当は思ってる。』
『そういうことって・・・何・・?』
『だから~・・・、頭の良い優等生君ならわかるだろ?』
『・・わかんないよ・・・ちゃんと航の口から言ってくれなきゃ・・・』
『な・・・なんでそんな可愛い顔すんの・・・?俺、我慢してたのに・・・』
『え・・っん・・・んぅ・・・・航・・・・急に・・・あ・・・っ何・・』
『お前が悪い。そんな可愛い顔されたら・・俺我慢できなくなっちゃうよ』
『んぁ・・・航・・っ、・・・んん・・・ッ』
『湊・・・好きだよ・・・・』
「ちょっと待って。」
蒼士が真顔でストップをかける。
「なんかイマイチ役に入り込めない。」
「そう?すごいうまいって思ったけど、俺。」
「リアリティが無いっていうか・・・真白君、キスしたことある?」
「え!キ・・キス・・・?」
「もちろん男とのキスね。」
「いや~・・・・それは・・・」
ある。暁にこの部屋でキスされた経験が。でも「ある!」と大きな声で返事できない自分がいて、真白はそれとなく濁した。
「無いでしょ。俺たち二人とも男同士でキスしたことがないから、リアリティも何もないんだよ。」
「いや、でも役ってそういうもんじゃ・・・?」
「真白君、僕にキスしてみてよ。」
「え・・・?え・・っ?!」
「真白君が攻めだから、早く・・・キスして。」
(冗談・・・だよな・・・?)
蒼士はいつも通りの無表情でじっと真白を見つめたままだ。
(え・・・?本気・・・・・?!)
受けキャラの無茶振りに、攻め慣れていない真白は沈黙するしかなかった。
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