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キスマーク
しおりを挟む「ユミは、どんな男が好みなの?」
食後のスイーツを運んできてくれた美波が、紅茶を淹れながら言った。
「え?」
「うちの男どもがみんなユミに言い寄ってるって聞いて、俺びっくりしたんだよね。あいつらって意外と趣味良いんだと思って。」
私は今まで一度も、モテたことがない。
人生で、一度も。
今まさに我が人生最大のモテ期が到来していることは、間違いなかった。
「会社でも、モテたんじゃない?」
「まさか・・!」
私は思わず正直に、否定の言葉を口にしていた。
ヒーロー所属の組織では、1ミリもモテたことがない。
「ユミの好みをリサーチしておきたいなって思って。俺、本気だからね?」
紅茶を私の前に置いて、彼はにっこりと極上の微笑みを浮かべる。
(う、美しい・・・・)
見惚れてしまうほどの、女性的な美しさ。
黒のロングストレートヘアをポニーテールにしているのが、彼のいつものスタイル。
歩くたびにキラキラと揺れて、眩しいほどに艶がある。
(この組織のイケメンたちって、本当美意識高いよね・・・)
顔の作りが良いのはもちろんだけれど、肌も髪も艶があってとても綺麗だ。
みんながあまりに美しい容姿をしているので、一人地味顔の私は劣等感でいつも押しつぶされそうだった。
「大我が、本命なの?」
「本命とか、そういうのは・・・」
そんなこと、人質の分際で言えるわけがない。
「じゃあ、俺本気で狙っちゃって良いんだ?」
「えっ・・・あ、あの・・・」
「可愛い。赤くなってる。ユミって、ウブなんだね。」
(そりゃあろくに経験もないので・・・!!)
向かい側の席に座る美波は、世にも美しい笑みを浮かべて、私の手を優しく握った。
(手・・!美波君の手・・スベスベだぁ・・・)
自分のカサカサの手が、恥ずかしくなる。
「ユミはさ、恋愛において大事なものってなんだと思う?」
「大事なもの・・・?えっと・・・信頼、かな・・・?」
「ほんっと、可愛いね。」
彼がクスクスと笑う。
その顔が最高にイケメンすぎて、私はうっとりと見惚れてしまった。
本当にこの組織は、顔面偏差値が高い悪人ばかりだ。
「美波君は・・?なんだと思う?」
「恋愛で一番大事なもの・・・教えてあげよっか。」
コツコツとブーツのヒールを鳴らしながら、彼が私の目の前に立った。
私の手を引くと、ベッドへ誘導する。
「美波君・・・?」
黙ってついていくと、いきなりベッドに押し倒された。
「きゃ・・ッ・・・!?」
「一番大事なのはね、身体の相性だよ。」
「んん・・・ッ・・・」
キスされていると気づいた時にはもう、舌が深く絡み合っていた。
「美波・・・君・・・っ・・・」
「その顔、最高にそそるなぁ。」
彼は私の首筋に口付けると、チュウッと音を立てて吸い上げた。
「痛っ・・・」
「俺のものだって、印つけとかなきゃねぇ?」
首に何度もキスを落とす。
チュッと吸われるたびに、ピリッとした痛みが走った。
「美波君・・・ッ・・ダメ・・・・」
ーーーコンコン。
ノックの音に振り返る。美波がチッと舌打ちするのがわかった。
見ると、千畝が扉の前に立っている。
「千畝、いくらお前でも俺の邪魔するなら、容赦しないよ。」
(美波君、男っぽい・・・♡これはこれでイイかも・・♡)
イケメンはどんな態度をとってもカッコイイものだ。
美波の男っぽい一面を見て、キュンとする。
私に迫って来た彼の男らしさに、心底ときめいてしまった。
「せっかく呼びに来てやったのに、それはないんじゃないか、美波。例のミッションの件で、栄華が親秋さんに呼ばれてるぞ。」
「げ、マジかよ。あいつに任せたらロクなことにならない、俺が行かなきゃ。ユミ、ごめん。続きはまた後でね。」
彼は名残惜しそうに、私にキスすると部屋を出ていった。
千畝が、ベッドへ近付いてくる。
「美波はああ見えて、一番雄の本能が強いから気をつけて。」
(女性みたいに綺麗な彼が、一番激しいとか・・萌える・・・・!)
彼は、私の首筋に触れた。
「ん・・・」
くすぐったくて、声が出てしまう。
「こんなにたくさんキスマークつけられて、お前は本当に無防備な女だな。」
無言でキスマークの数を確認していた千畝が、呆れ顔でハァと深いため息を吐き出した。
「この前、宗に襲われかけたこと、もう忘れたのか?」
「・・・その節は、お世話になりました・・・。」
彼がベッドに腰掛ける。ギシッとベッドが軋む音がした。
「それとも・・・本当は、襲われたくてたまらないとか?」
千畝の指が、私の顎をクイッと引く。
息を飲むほどのイケメンが、目の前に迫ってきて、私は呼吸をするのも忘れていた。
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