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『選択肢』(SIDE 雫)
しおりを挟む「雫さん、ごめん。乱暴に抱いて・・悪かった。」
「ううん、いいよ。大丈夫。」
泰莉君からの謝罪の言葉。
心底怯えているのに、俺は何もなかったように赦しの姿勢を見せるしか出来ることがなかった。
巧の時とは違う。
泰莉君に何をされたとしても、俺にはただ「許す」しか選択肢がないのだ。
浮気をされたとしても、彼が他の人を愛していたとしても。
どんなことが起きても、俺は泰莉君が好きだから。
逃げ場の無い愛。
苦しいけれど、彼と出会えた奇跡に涙が溢れる。
「悪い、雫さん、泣くなって。」
「ごめんね、泣くつもりなんて全然なくて。」
泰莉君を責めてるみたいになって誤解されたくないのに、涙が止まらなかった。
俺の涙を拭う彼の手つきが優しいから、まだここに愛があるのだと安堵する。
「今日・・・夏弥と話して・・すげぇ打ちのめされた気分になって、」
「夏弥君・・・?」
想像とまるで違う方向に進み始めた会話に、彼の次の言葉を待つ。
「夏弥が・・・美影さんに浮気されてることを知ってて、それでも本気で愛してるって言うから・・俺の弥弦さんに対しての愛情はやっぱり半端だったんだなって納得して・・・」
想いを辿るように紡がれる彼の言葉が、最終的にどこへ着地するのか不安でたまらない。
「ずっと考えてた。」
弥弦さんへの気持ちが再燃して揺れているとしても、俺は受け入れるから。
彼じゃなくて俺を選んでくれるように、努力するから・・・そばに居てよ。
頭では次から次に色々な言葉が浮かぶのに、声に出せない。
「今・・俺が雫さんを想ってる気持ちは、中途半端なんかじゃないから。」
「え・・?」
勝手に早とちりして暴走していたから、彼の言葉の意味をすぐには理解できなかった。
「ずっと考えてた。雫さんへの気持ちは本気の愛だって、胸張って言えるのかって。」
「泰莉君・・・」
「雫さんが他の男と浮気して、俺を裏切ったとしても・・・俺は絶対アンタを選ぶ。」
強い口調なのに彼の目がひどく優しくて、俺はまた泣いてしまった。
「俺は雫さん以外、他に選択肢なんてねぇから。」
「泰莉君・・・っ・・・俺も・・・」
同じこと考えてた。
伝えたいのに言葉にならなくて、胸が苦しい。
「どんなことが起きても、俺は雫さんが好きだ。」
愛してる、と言葉を続けた彼が力一杯抱きしめるから、俺は子どもみたいに彼にしがみついて泣いてしまった。
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