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『タイムリミット』(SIDE 雫)
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「雫さん、ホラーなんて見れんの?」
「なんで?苦手そうに見える?」
「なんとなく。俺の勝手なイメージ。」
泰莉君が出演した映画のDVDが発売になったので、購入した。
本当は映画館で上映している時に見に行ったのだけれど、ホラーが苦手な俺はほとんど直視できずに終わったのだ。
泰莉君の部屋、ソファーに二人並んで鑑賞会。
映画館さながらにポップコーンとコーラを用意して、休日前の夜を楽しむ。
巧も弥弦さんも居なくなった二人きりの家で、俺たちは期限付きのルームシェアを楽しんでいる。
来月あたりには出ていかなければと、つい先日二人で話したところだった。
(泰莉君とこうして過ごす時間も、もうすぐ終わっちゃうんだな・・・)
タイムリミットが決まっているのに、好きという気持ちを抱えたまま俺は何も出来ずにいる。
「・・・っ・・!!」
巨大スクリーンじゃなくても、やぱり怖いものは怖い。
幽霊に襲われる泰莉君のかっこよさを見届けたいけれど、反射的に目が閉じてしまう。
「やっぱ怖ぇんじゃん。」
苦笑しながら俺の肩を抱いた彼に、一瞬見惚れる。
整った顔も、強気で荒っぽい口調も、甘ったるいハスキーボイスも、俺を見つめる瞳も全て、洗練されていてかっこいい。
「泰莉君って、こんなに色男だったっけ?」
「何?今更俺の魅力に気付いた?」
遅くね?と茶化した彼の表情さえ全部この目に焼き付けたいと思ってしまう俺は、かなり重症なのかもしれない。
俺の心は完全に、泰莉君のものになってしまった。
巧と別れて数ヶ月だというのに、こんなふうに変わってしまう自分が信じられない。
弥弦さんと別れて傷心だった泰莉君も、最近は少しずつ日常を取り戻しているように見えた。
(神様、試練ばかり与えないで・・・一度で良いから俺に本物の幸せをください。)
こっそりと彼の横顔を見つめながら、そう願う。
「どうだった?」
「え・・・?」
「この映画、つうか俺の演技?・・って怖くてそれどころじゃなかったか。」
くく、と笑いながら、ポンポンと俺の背中を撫でる彼が眩しい。
「何回も見てから、ちゃんと感想言うね。」
「雫さんのそういう真面目なとこ好きだわぁ。別に無理して見なくて良いって。また映画のオファー来てるし。」
「そうなの?え?どんな映画?いつから撮影始まるの?」
矢継ぎ早に質問を繰り出す俺に、泰莉君はふっと優しく微笑んだ。
「雫さん、」
微笑んだ彼があまりに綺麗でかっこよくて、言葉が出ない。
「一緒に暮らさねぇ?」
彼が自然な表情でそう口にしたので、俺はその言葉の意味をすぐには理解出来なかった。
「なんで?苦手そうに見える?」
「なんとなく。俺の勝手なイメージ。」
泰莉君が出演した映画のDVDが発売になったので、購入した。
本当は映画館で上映している時に見に行ったのだけれど、ホラーが苦手な俺はほとんど直視できずに終わったのだ。
泰莉君の部屋、ソファーに二人並んで鑑賞会。
映画館さながらにポップコーンとコーラを用意して、休日前の夜を楽しむ。
巧も弥弦さんも居なくなった二人きりの家で、俺たちは期限付きのルームシェアを楽しんでいる。
来月あたりには出ていかなければと、つい先日二人で話したところだった。
(泰莉君とこうして過ごす時間も、もうすぐ終わっちゃうんだな・・・)
タイムリミットが決まっているのに、好きという気持ちを抱えたまま俺は何も出来ずにいる。
「・・・っ・・!!」
巨大スクリーンじゃなくても、やぱり怖いものは怖い。
幽霊に襲われる泰莉君のかっこよさを見届けたいけれど、反射的に目が閉じてしまう。
「やっぱ怖ぇんじゃん。」
苦笑しながら俺の肩を抱いた彼に、一瞬見惚れる。
整った顔も、強気で荒っぽい口調も、甘ったるいハスキーボイスも、俺を見つめる瞳も全て、洗練されていてかっこいい。
「泰莉君って、こんなに色男だったっけ?」
「何?今更俺の魅力に気付いた?」
遅くね?と茶化した彼の表情さえ全部この目に焼き付けたいと思ってしまう俺は、かなり重症なのかもしれない。
俺の心は完全に、泰莉君のものになってしまった。
巧と別れて数ヶ月だというのに、こんなふうに変わってしまう自分が信じられない。
弥弦さんと別れて傷心だった泰莉君も、最近は少しずつ日常を取り戻しているように見えた。
(神様、試練ばかり与えないで・・・一度で良いから俺に本物の幸せをください。)
こっそりと彼の横顔を見つめながら、そう願う。
「どうだった?」
「え・・・?」
「この映画、つうか俺の演技?・・って怖くてそれどころじゃなかったか。」
くく、と笑いながら、ポンポンと俺の背中を撫でる彼が眩しい。
「何回も見てから、ちゃんと感想言うね。」
「雫さんのそういう真面目なとこ好きだわぁ。別に無理して見なくて良いって。また映画のオファー来てるし。」
「そうなの?え?どんな映画?いつから撮影始まるの?」
矢継ぎ早に質問を繰り出す俺に、泰莉君はふっと優しく微笑んだ。
「雫さん、」
微笑んだ彼があまりに綺麗でかっこよくて、言葉が出ない。
「一緒に暮らさねぇ?」
彼が自然な表情でそう口にしたので、俺はその言葉の意味をすぐには理解出来なかった。
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