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『あがる雨』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む「そうだったんだ。弥弦さん・・・半年間アメリカに行っちゃうんだね。」
雫さんにことの顛末を話したら、感情が爆発して止まらなくなった。
「来週のことなのに俺が聞くまで黙ってたんだぜ?信じらんねぇ。」
口調が荒くなる。
周りを思いやれるだけの心の余裕が、今の俺にはなかった。
まだ熱いコーヒーを勢いよく飲み込む。舌が、喉が、ジリジリと焼けて痛んだ。
それでも心の方がずっと痛くて苦しくて、他の痛みで誤魔化すなんて出来ないのだと思い知る。
(どんだけ俺を苦しめたら気が済むんだよ・・あの人は・・)
「恋愛って難しいね。」
「俺にはもう・・・何が何だか全然わかんねぇよ・・・」
「好きな人が・・・自分のことを気にかけてくれて・・・それが伝わるだけで良いのにね。」
窓の外の雨を眺めながら、独り言のように小さくゆっくりと彼が紡いだ言葉。
これ以上感情的になりたくないのに、胸がグッと熱くなる。
長い時間、彼は黙って俺と一緒にいてくれた。
同じ空間に雫さんがいるだけで、気持ちが凪いで行くから不思議だ。
「雨・・・あがりそうだね。」
弱くなっていく雨を見ながら、弥弦さんを想う。
永遠に片想いをしているような、恋だった。
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