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『挑発』(SIDE 雫)
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数週間は驚くほど穏やかに過ぎ去っていった。
巧と距離を置いていたせいもある。
別れの言葉を口にした俺に、彼はしばらく考えさせて欲しいと一言呟いた。
休日の朝、コーヒーの良い香りで目が覚める。
リビングへ行くと、泰莉君がキッチンでコーヒーを淹れていた。
ヘッドホンで音楽を聴いている彼は、俺が来たことに全く気づいていない。
彼の後ろ姿を見て、胸がキュンと痛んだ。
(これはどういう感情なんだろう・・・)
少し距離をとって彼を見つめてみる。
(泰莉君、スタイルいいなぁ・・・ただコーヒーを淹れているだけで、すごくかっこいい・・・)
広い背中、逞しい腕、きゅっと締まった腰・・彼の後ろ姿をゆっくり見る機会なんて、今までなかった。
あの夜、朝まで俺を抱きしめてくれた彼の優しさを思い出すたびに、トクンと胸が高鳴る。
もっと彼を知りたいと思う。もっと彼に近づきたい。
むき出しの感情をぶつけてもらえるくらい、俺を側に置いてくれたらいいのに。
色々な想いが、浮かんでは消えていく。
そんなふうに逡巡していたら、いつの間にか弥弦さんが2階から降りてきた。
「泰莉、俺のためにコーヒー淹れてくれたんだ?」
「弥弦さん、危ねぇって・・、ひっつくな・・・!」
ヘッドホンを外そうとした泰莉君の手首をとって、弥弦さんが口づける。
「・・・っ・・・」
こちらに背を向けている泰莉君は、ヘッドホンのせいで俺がいることに気付いていない。
「やめろって・・・こんなとこ見られたら・・・っ・・・」
弥弦さんは抵抗する泰莉君を制止して、有無を言わさず抱きしめた。
(やだ・・・こんなの・・・見たくない・・・・)
一刻も早くこの場を去りたいと思っているのに、ショックで身体が動かない。
弥弦さんは挑発するような視線で俺を見つめながら、不適な微笑みを浮かべていた。
巧と距離を置いていたせいもある。
別れの言葉を口にした俺に、彼はしばらく考えさせて欲しいと一言呟いた。
休日の朝、コーヒーの良い香りで目が覚める。
リビングへ行くと、泰莉君がキッチンでコーヒーを淹れていた。
ヘッドホンで音楽を聴いている彼は、俺が来たことに全く気づいていない。
彼の後ろ姿を見て、胸がキュンと痛んだ。
(これはどういう感情なんだろう・・・)
少し距離をとって彼を見つめてみる。
(泰莉君、スタイルいいなぁ・・・ただコーヒーを淹れているだけで、すごくかっこいい・・・)
広い背中、逞しい腕、きゅっと締まった腰・・彼の後ろ姿をゆっくり見る機会なんて、今までなかった。
あの夜、朝まで俺を抱きしめてくれた彼の優しさを思い出すたびに、トクンと胸が高鳴る。
もっと彼を知りたいと思う。もっと彼に近づきたい。
むき出しの感情をぶつけてもらえるくらい、俺を側に置いてくれたらいいのに。
色々な想いが、浮かんでは消えていく。
そんなふうに逡巡していたら、いつの間にか弥弦さんが2階から降りてきた。
「泰莉、俺のためにコーヒー淹れてくれたんだ?」
「弥弦さん、危ねぇって・・、ひっつくな・・・!」
ヘッドホンを外そうとした泰莉君の手首をとって、弥弦さんが口づける。
「・・・っ・・・」
こちらに背を向けている泰莉君は、ヘッドホンのせいで俺がいることに気付いていない。
「やめろって・・・こんなとこ見られたら・・・っ・・・」
弥弦さんは抵抗する泰莉君を制止して、有無を言わさず抱きしめた。
(やだ・・・こんなの・・・見たくない・・・・)
一刻も早くこの場を去りたいと思っているのに、ショックで身体が動かない。
弥弦さんは挑発するような視線で俺を見つめながら、不適な微笑みを浮かべていた。
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