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『怒り』(SIDE 泰莉)
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「泰莉・・・お前、なんで電話に出ねぇんだよ?」
喧嘩したあの日以来、俺は弥弦さんからの着信を無視し続けている。
怒りに任せてドン!と俺の胸を押す彼は、相変わらず力の加減が出来ない。
手にしていたマグカップが床に落ちて、ガチャンと大きな音を立て砕け散った。
「危ねぇだろ!雫さん、怪我してねぇ?」
「俺は・・・大丈夫だよ。泰莉くんは?」
足元に散らばったガラスの破片から、慌てて雫さんを遠ざける。
彼は自分のことよりも、俺の怪我を気にして歩み寄った。
「飼い犬に手を噛まれるって、こういうことを言うんだろうね?」
俺たちを見て、弥弦さんはチッと舌打ちし顔を歪める。
「裏切ったのはアンタの方だろ!なんでも俺のせいにすんの辞めろ。いい加減うんざりなんだよ!」
雫さんの前だというのに、抑えが効かない。
弥弦さんの身勝手さに心底嫌気がさしていた。
「俺がお前のこと本気で好きだとでも思ってた?おめでたい奴だよな。お前と俺じゃ釣り合わねぇだろ。立場わきまえて物言えよ、バカが。」
弥弦さんは完全に頭に血が昇っている。こうなるともう手がつけられない。
感情に振り回されて取り返しのつかない言葉を吐き捨てる。
いつものことだと慣れてしまっている自分が怖い。
「弥弦さん・・謝ってください。」
雫さんが俺を庇うように、弥弦さんの前に歩み出る。
いつも穏やかな彼が本気で怒っているのがわかって、俺はなぜか急に胸が苦しくなった。
「雫さん、いいって、」
「泰莉君に、謝ってください。」
雫さんの目は真っ直ぐに弥弦さんを捉えて、離さない。
彼の視線に、弥弦さんが一瞬怯んだのがわかる。
「雫、悪いけど・・これは俺と泰莉の問題だから、部外者は口出さないでもらえるかな。」
弥弦さんはものすごい力で俺の手を掴むと、リビングから自分の部屋まで引っ張って行った。
雫さんにこれ以上醜態を晒すのが嫌で、俺は黙って彼についていく。
俺と弥弦さんの関係は、今夜ここで終わるかもしれない。
こんな状態になってまでなんとか彼を繋ぎ止めたいと思ってしまう弱い自分を精一杯押し込める。
俺は、ようやく覚悟を決めた。
喧嘩したあの日以来、俺は弥弦さんからの着信を無視し続けている。
怒りに任せてドン!と俺の胸を押す彼は、相変わらず力の加減が出来ない。
手にしていたマグカップが床に落ちて、ガチャンと大きな音を立て砕け散った。
「危ねぇだろ!雫さん、怪我してねぇ?」
「俺は・・・大丈夫だよ。泰莉くんは?」
足元に散らばったガラスの破片から、慌てて雫さんを遠ざける。
彼は自分のことよりも、俺の怪我を気にして歩み寄った。
「飼い犬に手を噛まれるって、こういうことを言うんだろうね?」
俺たちを見て、弥弦さんはチッと舌打ちし顔を歪める。
「裏切ったのはアンタの方だろ!なんでも俺のせいにすんの辞めろ。いい加減うんざりなんだよ!」
雫さんの前だというのに、抑えが効かない。
弥弦さんの身勝手さに心底嫌気がさしていた。
「俺がお前のこと本気で好きだとでも思ってた?おめでたい奴だよな。お前と俺じゃ釣り合わねぇだろ。立場わきまえて物言えよ、バカが。」
弥弦さんは完全に頭に血が昇っている。こうなるともう手がつけられない。
感情に振り回されて取り返しのつかない言葉を吐き捨てる。
いつものことだと慣れてしまっている自分が怖い。
「弥弦さん・・謝ってください。」
雫さんが俺を庇うように、弥弦さんの前に歩み出る。
いつも穏やかな彼が本気で怒っているのがわかって、俺はなぜか急に胸が苦しくなった。
「雫さん、いいって、」
「泰莉君に、謝ってください。」
雫さんの目は真っ直ぐに弥弦さんを捉えて、離さない。
彼の視線に、弥弦さんが一瞬怯んだのがわかる。
「雫、悪いけど・・これは俺と泰莉の問題だから、部外者は口出さないでもらえるかな。」
弥弦さんはものすごい力で俺の手を掴むと、リビングから自分の部屋まで引っ張って行った。
雫さんにこれ以上醜態を晒すのが嫌で、俺は黙って彼についていく。
俺と弥弦さんの関係は、今夜ここで終わるかもしれない。
こんな状態になってまでなんとか彼を繋ぎ止めたいと思ってしまう弱い自分を精一杯押し込める。
俺は、ようやく覚悟を決めた。
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