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『ドキドキ』(SIDE 雫)
しおりを挟むドキドキが、止まらなかった。
ときめくっていうのはこういうなのかと、今更理解する。
『俺、お前のこと好きになっちゃいそうなんだけど。』
至近距離に迫る泰莉君の熱い瞳に、本気で動揺してしまった。
俺を見つめる彼の目が真剣すぎて、本物の感情なのではと錯覚してしまいそうになる。
本当にキスされるかと思った。
これは、演技の練習なのに。
自室に戻って、ペタンと床に座り込む。
(あんなふうに見つめられたら・・・腰が抜けちゃうよ・・・)
泰莉君の声。
低いのに甘い、独特なハスキーボイス。耳の奥にこびりついて、離れない。
同性の俺から見ても思わずドキッとするような、ハンサムなルックス。
素っ気なく荒っぽい口調なのに、言動の端々から感じられる優しい人柄。
泰莉君にとって、これは間違いなくハマり役だ。
彼を見て女の子たちがキャーキャーいう理由がわかった気がする。
この瞳に見つめられて求められたら・・・断れる女性は、きっといない。
「雫・・・どうした?」
どれくらいそうしていたのだろう。
部屋に巧が戻ってきたことにも気づけなかった。
「え?あ・・・何でもない。」
「悩み事か?」
巧は鋭い。
鈍感な男性だけれど、長年一緒にいるせいで俺のことだけは顔を見れば何でもわかってしまうのだ。
それがとても居心地良くて、彼を好きな理由の一つだったのに。
今は煩わしくさえ思えるから不思議だ。
「ううん。何でもないよ。」
彼の浮気を知ってしまったあの日から、俺は巧に本心を伝えるのが下手になった。
自分が変わってしまったことを寂しいと嘆くのは、巧への未練だろうか。
(弥弦さんが俺と泰莉君を見て怒ったのは、彼への執着なのか、それとも愛情・・・なのかな・・・)
泰莉君がこれ以上彼に傷つけられないように、俺はそっと心の中で祈っていた。
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