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『宣戦布告』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む雨に濡れた雫さんの姿が目に焼き付いて、昨夜はなかなか眠れなかった。
元々誰かと懇意になること自体が、俺にとっては珍しい。
雫さんとは距離感をうまく保つことができなくて、モヤモヤしている。
彼に近づきたいけれどどこまで近づいていいのか、どこまでが友人として許される距離感なのか、掴めなかった。
「雫に構うのやめてもらえませんか。」
家を出ようと玄関で靴を履いていると、巧さんが後ろに立ってそう言った。
振り返って、彼の顔を見る。
「それ、どういう意味?」
「そのままの意味です。」
いつも淡々としている彼が、さらに感情の見えない冷静な口調で答えた。
「巧さん、なんか勘違いしてるみたいだけど、俺と雫さんはただの友達で、それ以上でもそれ以下でもねぇし。」
「ならいいです。俺と雫はうまくいってるんで、泰莉さんの心配には及びません。」
紛れもない、宣戦布告。
そんなにムキになるならもっと彼を大事にすればいいのにと、頭にくる。
俺には口を出す権利なんてもちろんないし、それを雫さんも望んでなんかいないのだ。
告げ口するみたいで気が引けたけれど、巧さんに言われたことを雫さんに話した。
二人がうまくいっていないのは知っていたけれど、雫さんがこの状況を打破するきっかけを探しているように見えたから。
昨日カフェで話してくれた「浮気の経験」ってやつは、きっと巧さんとの間に起きたことだ。
2人は幼馴染だという関係性を考えても、雫さんの初めての相手は巧さんなのだろう。
「巧が・・・・?」
「すげー怒ってんぞ、多分。昨日、俺らがイチャイチャ?してたこと」
「イチャイチャ・・・してたね、確かに。」
雫さんが意味深な目で俺を見るから、俺はまた妙な気持ちになる。
流されそうになる気持ちをなんとか抑えて、彼に向き直った。
「雫さんのこと誰にも渡したくないって、顔に書いてあった。」
真剣な表情。
腹は立ったけれど、誰にも取られたくないという気持ちは痛いほど知っている。
「そう・・・なんだ・・・。」
雫さんがどう受け取ったかはわからない。
それでも俺は、彼の心の傷が1日でも早く癒えるように祈らずにはいられなかった。
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