9 / 53
『疑惑』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む「おはよう、泰莉君。」
「おはよう・・・・雫さん・・巧・・さん・・」
心臓が止まるかと思った。フリーズした頭を無理やり動かす。
雫さんの部屋から、どう見ても今起きたばかりの2人が一緒に出てくるのを目撃してしまった。
慌てるでもなくいつも通りの2人を見ると、彼らにとって一緒の部屋で眠るのはごく普通のことなんだろう。
「いや、ヤってないでしょ。あの2人は。」
「なんでわかるんすか。同じベッドで寝ます?いくら幼馴染で仲良くても。」
絶対おかしいですって!と力説する俺を軽くあしらって、弥弦さんはフレンチトーストを頬張った。
蜂蜜をたっぷりかけた甘々フレンチトースト。
弥弦さんのリクエストには全力で従うのが、俺たちのルールだ。
「俺と泰莉だって同じベッドで寝るんだし、普通じゃん?」
「いや、普通じゃないし、用が済んだら俺をベッドから追い出すでしょあんた。」
「何?泰莉、朝まで俺と同じベッドで眠りたいの?」
真顔で見つめられて、ドキッとする。
性格は極悪だしワガママ放題理不尽極まりないダメ男だけれど、顔だけは超絶イケメンな弥弦さんに、俺は弱い。
「仮にあの2人がヤってたからって何が困るわけ?俺たちが朝同じ部屋から出てきたとしても、なんの疑問も持たない2人と暮らせるって、ラッキーじゃん。」
珍しくそれらしいことを言う弥弦さんに、俺は反撃の言葉が思いつかず黙り込んだ。
「神崎、迎えにきたよ。」
朝からキラッキラの万能オーラ全開で現れた美影さんに、内心チッと舌打ちする。
弥弦さんの相方、千種 美影。
綺麗な黒髪、切れ長の瞳。アメリカの有名大学を出たインテリ男。
ルックスや頭脳に恵まれただけでなく、音楽の才能まで持ち合わせているなんて、憎たらしい。
がっしりとした肩幅、背中から腰にかけて引き締まった綺麗なライン、スラリと長い手足。
いつだって自信に満ち溢れた表情、話し方、立ち振る舞い、一つ一つの仕草、全てが知性に裏付けられている。
その上、世界的に有名なギタリスト。
この男と対等に渡り合える男を探すのは難しい。
彼は毎朝弥弦さんを迎えにやって来る。
「今朝は随分早いっすね。」
「夏弥の仕事が早くてね。先に送ってきたんだ。」
皮肉を込めて言うと、涼しい微笑みが返ってきた。落ち着き払った態度が、鼻につく。
俺と弥弦さんの貴重な時間を削るのはやめて欲しい。
夏弥というのは、美影さんが溺愛している恋人だ。
他事務所のアイドルが恋人だと聞いた時は、心底驚いた。
「夏弥は俺の方が先に目つけてたのに、先輩の鬼畜加減マジで引くわ~。」
弥弦さんは、彼のことを「先輩」と呼ぶ。
甘えるような態度が透けて見えて、俺はいつもイライラした。
「神崎、根に持つのはやめて、いい加減機嫌直してくれないか?」
夏弥は小柄で目がくりっと大きく、可愛い系男子代表みたいな顔をしている。
犬みたいにコロコロと人懐っこい笑顔で、性格も良いと評判のアイドルだった。
「つうか、恋人の俺の前でそういうこと言う?弥弦さん。」
「俺は本来ああいう可愛い子が好きなの。夏弥ってなんなの?天使?」
「弥弦さん、ひでぇ。俺だって本来は可愛い女子が好きだわ。」
本当のところ、弥弦さんが密かに思いを寄せている相手は、美影さんなんじゃないかという疑念が、ずっと拭えずにいる。
美影さんを見つめる彼の目が、時々ひどく熱っぽいから。
ステージ上で音楽を生み出す瞬間はいつも、2人はお互い熱く見つめあっていて、誰かが入る余地なんてまるでない。
俺はいつだって誰かの身代わりで、弥弦さんが心から求めている相手じゃない。
そんな疑念が頭の片隅に居座っていた。
20
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる