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『シェアハウスの住人』(SIDE 雫)
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泰莉君に初めて会った時、昔飼っていた犬のことを思い出した。
ゴールデンレトリバーのポーチ。
当たり前のようにいつもそばにいて、良いも悪いもなく俺を受け入れてくれる親友だった。
シェアハウスに住まないかという話を持ってきたのは、小学校時代の同級生。
俺の恋人、巧とのギクシャクした関係を見兼ねて提案してくれたらしい。
渡された住所に辿り着くと、ただのシェアハウスと聞いていたお家があまりに大きなお屋敷で驚いた。
手入れの行き届いた中庭の美しさに一瞬にして心を奪われ、花壇の前にしゃがみ込む。
花の香り、緑のある空間。
うまくいかない現実、仕事も恋人との関係も、全てを忘れられるような気がした。
靴音がして振り返る。
そこには長身の男性が立っていた。
ベージュの綺麗な髪をかき上げるその仕草に、俺は一瞬見惚れてしまったのだと思う。顔が小さく手足が長いモデルのような体型のその男性は、いつまでも見ていたいと思うほど美しい瞳をしていた。
「こんにちは。ここのお家の方ですか?」
話しかけた瞬間、彼はムッとしたように俺を睨んだ。
「そうだけど、あんたは?」
この世界の全てに文句があるとでも言いたげな仏頂面で俺を見つめる彼の目力に、ふと懐かしさを感じたのを覚えている。
動物のようにオモテも裏もない純粋さ。
どんなに怖い顔で凄まれても、目を見ればわかってしまう。
不審者だと思われたのかもしれない。
彼のぶっきらぼうな物言いに初めてその考えに行き当たり、俺は名前を告げる。
「今日からお世話になる月館 雫です。」
「俺は・・・小城元 泰莉。」
「泰莉君、今日からよろしくお願いします。」
親しみを込めてそう呼ぶと、彼が明らかに気分を害したという顔をした。
思ったことがそのまま顔に出る素直さに、好感を覚える。
「よろしく。」
彼は一瞬躊躇しながらも、差し出した手を握り返してくれた。
友好の印として握手しているつもりなのに、彼が俺を信用しまいと警戒しているのがわかる。
彼の目に宿るネガティブな感情に、俺は共鳴してしまったのだと思う。
良い友達になれるかもしれない。
そんな予感を抱えながら、シェアハウスの中に足を踏み入れた。
ゴールデンレトリバーのポーチ。
当たり前のようにいつもそばにいて、良いも悪いもなく俺を受け入れてくれる親友だった。
シェアハウスに住まないかという話を持ってきたのは、小学校時代の同級生。
俺の恋人、巧とのギクシャクした関係を見兼ねて提案してくれたらしい。
渡された住所に辿り着くと、ただのシェアハウスと聞いていたお家があまりに大きなお屋敷で驚いた。
手入れの行き届いた中庭の美しさに一瞬にして心を奪われ、花壇の前にしゃがみ込む。
花の香り、緑のある空間。
うまくいかない現実、仕事も恋人との関係も、全てを忘れられるような気がした。
靴音がして振り返る。
そこには長身の男性が立っていた。
ベージュの綺麗な髪をかき上げるその仕草に、俺は一瞬見惚れてしまったのだと思う。顔が小さく手足が長いモデルのような体型のその男性は、いつまでも見ていたいと思うほど美しい瞳をしていた。
「こんにちは。ここのお家の方ですか?」
話しかけた瞬間、彼はムッとしたように俺を睨んだ。
「そうだけど、あんたは?」
この世界の全てに文句があるとでも言いたげな仏頂面で俺を見つめる彼の目力に、ふと懐かしさを感じたのを覚えている。
動物のようにオモテも裏もない純粋さ。
どんなに怖い顔で凄まれても、目を見ればわかってしまう。
不審者だと思われたのかもしれない。
彼のぶっきらぼうな物言いに初めてその考えに行き当たり、俺は名前を告げる。
「今日からお世話になる月館 雫です。」
「俺は・・・小城元 泰莉。」
「泰莉君、今日からよろしくお願いします。」
親しみを込めてそう呼ぶと、彼が明らかに気分を害したという顔をした。
思ったことがそのまま顔に出る素直さに、好感を覚える。
「よろしく。」
彼は一瞬躊躇しながらも、差し出した手を握り返してくれた。
友好の印として握手しているつもりなのに、彼が俺を信用しまいと警戒しているのがわかる。
彼の目に宿るネガティブな感情に、俺は共鳴してしまったのだと思う。
良い友達になれるかもしれない。
そんな予感を抱えながら、シェアハウスの中に足を踏み入れた。
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