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『出会い』(SIDE 泰莉)
しおりを挟む初めて雫さんを目にした瞬間、世界がスッと透明になったような違和感があった。
中庭の真ん中にうずくまって花壇をじっと見つめていた彼が、立ち上がって俺を見る。
肌の白さと漆黒の髪のコントラスト。
彼を包む世界だけが澄み渡っていて、ワントーン明度が高い。
「こんにちは。ここのお家の方ですか?」
成人男子の「お家」発言にツッコミを入れたい気持ちと、俺のこと知らねえのかよという不貞腐れた気持ちが入り混じる。
「そうだけど、あんたは?」
「今日からお世話になる月館 雫です。」
特に目立つパーツはない中性的な顔立ちなのに、目が離せないのは何故だろう。
本当に実体があるのかと手で触れて確かめたくなるような、現実味のない透明感を放つ男。
「俺は小城元 泰莉。」
「泰莉君、今日からよろしくお願いします。」
常識人っぽい見た目なのに、初対面で遠慮なく君呼びかよ。
警戒心も毒も気後れも無く、真っ直ぐに差し出された手を握り返す。
「よろしく。」
足を踏み入れてはいけない、秘密の花園。
そんなイメージが浮かんだのは、今稽古中の舞台のせいだ。
女みたいにキメの細かい肌質の指が、俺の手をぎゅっと握る。
この手が離れていくのを名残惜しいと感じるのは、人肌に飢えているから。
この瞬間を、俺は人生で何度も思い出すことになるだろう。
そんな確信があった。
「泰莉、こんなとこにいたんだ。何してんの?雫さんも、中にどうぞ。」
俺を呼ぶ声に振り返ると、恋人の弥弦さんが怪訝な顔でこちらを睨んでいる。
「あ~今行く。」
光を反射して鈍く揺れるシャボン玉が前触れもなくパチンと消えるように、胸がざわついていた。
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