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『愛と煌大』

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あい・・・おい、大丈夫かよ・・・っ・・・?」

「・・・っ・・・ん・・・うぅ・・・」

「なぁ・・・愛・・・愛・・・っ!!」

「あ~もう、うるさいっつうの・・・!!煌大こうだい・・お前・・俺の半径1キロ以内に近づくな・・・!!」

「な・・っ・・・1キロ・・?無理だろ・・・?!」

ただならぬ叫び声に慌てて愛の部屋へ飛んできた私は、彼の足元にうずくまる煌大の図に一瞬何が起きたかわからなかった。華のあるイケメンが、しょんぼりと体育座りでうつむいている姿はなかなかにシュールだ。

「愛ちゃん・・・?煌大くん・・・?どうしたの?」

「見てわかんない?煌大がうるさすぎるから、これ以上俺に近づくなって罵倒してたとこ。」

「全然・・・わかんない・・・」

第一子を妊娠中の愛は、最近つわりがひどい。

ほとんど固形物が喉を通らず、飲むゼリーのようなものでなんとか凌いでいる。
吐き気がひどい彼は食べ物のにおいにも敏感で、夫たちの食事中はリビングに降りてくることさえ叶わなかった。

「煌大がさぁ・・大丈夫かっていちいち耳元でうるさいんだよね。こっちは吐きそうで具合悪いってのに、ギャアギャア騒がれたらたまったもんじゃない。」

妊娠によるホルモンバランスの急激な変化で、愛の毒舌はいつにも増して勢いづいている。

「お前が心配で見てられないんだよ・・!すげぇ具合悪そうだし・・何か俺に出来ることがないかって思って・・・」

煌大はここ最近、すっかり反省のポーズが板についてきた。
何度罵倒されても妊娠中の愛を思いやりそばに寄り添う彼の優しさに、私はこっそり感動している。

「つうかさ、煌大・・お前最近ちゃんとご飯食べてなくない?」

「お前がそんな状態なのに、俺だけ普通に食べるとか無理だろ・・?!」

「全然わかってない・・・!お前は誰より元気でいてくれなくちゃ困るんだけど?この子の父親なんだし・・・!」

愛は、愛おしそうに自分のお腹を優しく撫でながら、煌大を見る。

「愛・・・」

「ごめん、煌大。俺・・・イライラして、自分でも訳わかんないんだけど全然止められなくて、」

「わかってる。お前は初めての妊娠で大変なんだから、俺に何でもぶつけてくれていい。」

(え・・・何この二人・・・・夫婦・・・・?尊い・・・・♡)

妻そっちのけで愛情を深めている二人に、私も何かしなければと気が焦る。
愛のお腹に宿っている子どもは、私の子でもあるのだ。

「落ち着くまで、俺が一緒に寝てやろうか?」

「はぁ?それを言うならまゆでしょ。俺・・繭に・・・一緒に寝てほしい・・・。」

珍しく甘えた表情で私を見た夫に、ドキンと胸が高鳴る。

(愛ちゃんが甘えてくれるなんて・・・珍しい・・・♡)

「もちろん・・・!喜んで!!」

「何かずるくないか・・・?」

「はぁ?意味わかんないんだけど。」

「俺だって愛と繭と一緒に寝たい。愛のことが心配だし、繭とも最近一緒に寝てないし・・」

「お前、絶対変なことすんなよ?今夜繭に手出したら、一生許さないから。」

愛は私を引き寄せるとぎゅっと抱きしめた。

(愛ちゃんに抱きしめられるの久しぶり・・・嬉しい・・・・♡)

「そ・・・そんなことしない・・!俺だって、それくらいの分別は持ち合わせてる。」

「どうだかぁ・・・?嘘ついたら、お腹の子に言うからね。」


愛と煌大。この二人は本当に仲が良い。
私たちは寝る直前までこんなふうに盛り上がりながら、3人同じベッドで眠りについた。
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