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『好きな人が出来ました。』
しおりを挟む「煌大君・・・私、志方さんのこと・・・好きになっちゃいました。ごめんなさい!」
こんな世界になる以前であれば、この言葉は別れの常套句として使われていた。
「・・・・そんな気がしてた。」
それでもやはり言われる側にとって、ショックな言葉であることに変わりはない。
煌大はベッドに座り私を見上げながら、今までに見せたことのない複雑な表情をしている。
「繭があいつと一緒にいるのを見た時・・嫌な予感がしたんだ。」
「ごめんなさい、煌大君。」
愛に相談した結果、やはり自分の口からきちんと彼に伝えるべきだろうと覚悟した。
夫の友人と結婚するのは初めてじゃない。
雫と大和、慶斗と譲・・彼らは元々友人関係で、当時はそれなりに複雑な思いがあった。
今回は、私から逆プロポーズをするという意味合いで、これまでとは全然違う。
「謝らないでくれ。繭、俺の愛情はこんなことで簡単に変わったりしない。」
煌大は華のある顔立ちのイケメンで、どこにいてもよく目立つ。
映画のワンシーンのようにカッコよく言葉を紡ぐ彼に、私はつい見惚れてしまった。
「繭をこんな風に追い込んで・・悪かった。」
「え・・・?」
煌大の言葉の意味が、わからず戸惑う。
謝罪しなければならないのは、間違いなく私なのだ。
「繭の気持ちに・・・後ろめたさを与えるような態度をとって、苦しめたよな・・・俺の幸せは、お前がいつも幸せでいてくれることなのに、自分の気持ちを優先させたりして・・・ごめんな。」
「煌大君、違うの、私が悪いの・・・!」
「今回のことで・・・煌大は繭にどうあって欲しいの?って愛に言われてハッとした。俺は繭にいつでも幸せでいて欲しい。そのために必要なことは、何でも受け入れたいし、応援したい。」
彼がそんな風に私を想ってくれていたなんて知らなかった。
「これからも・・・何があっても俺は一生繭を愛してる。死ぬまで・・いや、死んでからもずっとだ。だから、どんなことがあっても、全部俺に話してほしい。繭と一緒なら、俺はどんなことでも絶対に乗り越えられる自信があるんだ。」
煌大からの思いがけぬプロポーズのような言葉。
どんな出会い方をしたとしても、私は必ず煌大を愛していただろう。
好きな人が出来たという告白を優しく受け止めてくれた夫の愛の深さに、私はまた幸せな涙が止まらなかった。
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