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『19歳』
しおりを挟む「想像以上に・・・大所帯なんですね。」
おっとりとした雰囲気の陸都は、夫たちとすぐに打ち解けたようだ。
落ち着いた印象の彼は大人びて見えるけれど、年齢が19歳と聞いて驚く。
早速桜雅と耀亮の洗礼を受けたが、彼は物怖じすることなく屈託ない笑顔を見せている。
「悪かったな・・新しい家族とは知らないで、あんな態度とっちまって。」
「俺の方こそ、勝手に中庭に入り込んだりしてすみません。」
耀亮が謝ると、陸都はいえいえ!と感じよく応え、自らの落ち度を詫びた。
「この二人に凄まれたら引くよね。怖い顔だけど、根は優しいから安心して。」
「慶斗さん、そういうフォローの仕方やめてくれねぇ?」
「たくさん兄さんができたみたいで、なんだか嬉しいです。」
慶斗と桜雅の掛け合いにも、彼は嬉しそうに人懐っこい笑顔を浮かべ場を和ませている。
陸都は3人の兄がいる家庭で育ったが、例の大爆発で家族全員が消息不明なのだと聞いた。
(大人びて見えるのは、いっぱい苦労したからなのかな・・・・)
彼の境遇を想って、胸が痛む。
新しい家族に囲まれて、彼の心の傷が1日でも早く癒えるように願った。
♢♢♢
「陸都君、まだ10代なんて信じられない・・・全然見えないね。大人っぽくてびっくりしちゃった。」
年下と分かった途端「君呼び」になるのは失礼だろうか。
年上の夫たちに囲まれても物怖じせず、落ち着いた態度で話す彼は、とても大人びて見えた。
明日引っ越しの荷物が到着するという彼に、ひとまず客間を用意する。
「俺・・こう見えて、実はものすごく甘えっ子なんですよ。」
二人きりになると、彼が急に距離を縮め私の手を取った。
恋人繋ぎのように指を交互に絡める仕草が、妙にセクシーで鼓動が高鳴る。
赤茶色の髪が、間接照明の柔らかい光に染められてとても綺麗だ。
甘ったるいタレ目でじっと見つめられると、身体の奥がジンと熱くなった。
「陸都・・君・・・?」
(大胆・・・♡かっこいいなぁ・・♡本当に10代・・・?)
「繭さん・・・朝まで一緒にいてくれませんか?」
「あ・・・朝まで・・??」
「もちろん、繭さんが嫌がることはしません。約束します。ただ・・そばに居たいんです。」
私たちはほとんど眠らずに、お互いの生い立ちや結婚への思いなど、色々なことを夜通し話して朝を迎えた。
♢♢♢
「繭ちゃん・・・まさかもう陸都に手出した?」
翌朝、客間から出る瞬間を桜雅に見られてしまった。
怪訝な顔で私を見る桜雅に、力一杯否定の言葉を返す。
「ち・・違います・・・!そんなんじゃなくて・・・」
あたふたする私を、背後から陸都が優しく抱きしめる。
「桜雅さん、俺が無理言って朝まで一緒にいてもらっただけで、まだ何もしてないです。もっと・・・繭さんのこと知りたくて、わがまま言っちゃいました。」
ふふ、と嬉しそうに微笑む陸都は、純粋すぎるのか確信犯なのかもはやわからない。
「うわ・・なんか見せつけられた気分・・・陸都、俺の前で繭ちゃんにベタベタすんのやめてくれねぇ?」
「すみません、つい嬉しくて・・・俺、繭さんのこと大好きでたまらないんです。」
「うわ、マジか。・・・言っとくけど、俺も繭ちゃん大好きだから。愛してるから。」
ムキになる桜雅を見て、妬いてくれているのかと嬉しくなる。
「分かってます、すみません。離れますね・・・」
陸都はもう一度私を抱きしめると、名残惜しそうに身体を離した。
「繭さん・・・また後で、ギュッってしてもいいですか?」
(わぁ・・・19歳イケメン夫が・・・甘えっ子すぎて・・・可愛い・・・・ッ♡)
寂しそうな顔で私を見つめる陸都の顔と、不機嫌全開でこちらを睨んでいる桜雅の顔を見比べる。
イケメン夫二人に挟まれ、私は幸せな朝を堪能していた。
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