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『プロゲーマー』
しおりを挟む長期出張から久々に帰宅した一路が、客人を連れて来た。
「弟の双葉だ。」
「どうも、兄さんがお世話になってます。」
ニコリともしない無愛想な表情で私たち家族を見まわした彼は、深々と頭を下げる。
まるで定規をあてたように真っ直ぐなオン眉のパッツン前髪、ド派手なピンク色のボブヘアが印象的だ。
大きな猫目、一瞬女性と見前違えてしまうような小柄な体躯。
(に・・・似てない・・・・!!けど、可愛い・・・・♡)
クールでお堅いイメージが強い一路の弟だけに、そのギャップをなおさら大袈裟に感じてしまう。
(一路さんの弟が、まさかの可愛い系イケメンだとは・・・・!)
「なぁなぁ、双葉って俺と同じ歳くらい?」
コミュニケーションの鬼、最年少の樹が身を乗り出して笑いかける。
「18だよ。あんた誰?めちゃくちゃ馴れ馴れしいじゃん。」
(愛ちゃんレベルの毒舌・・・!でも顔が可愛いから全然OK・・・♡)
「俺は樹!やっぱ同い年じゃん!よろしくな!双葉ってプロゲーマーだよね!普段はどんなゲームやんの?」
双葉はeスポーツプレイヤーとして有名らしい。
「泉は俺らの一個年上!俺らもゲーム好きなんだ~!」
「お前らは、どんなゲームやんの?」
若い子は若い子同士、わいわい話し始めたので安心する。
彼らの様子を見守る一路は、父性溢れる優しい表情をしていた。
♢♢♢
「双葉君、この部屋使ってね。パジャマとタオル、ここに用意しておいたから。」
お客様用の寝室に案内すると、彼は黙ったまま部屋を見まわし、私に向き直る。
「兄さんが絶賛してるからどんな女なのかって期待してたんだけど・・アンタ、全然大したことないね。」
満面の笑みで彼が放った言葉。
何を言われたのか理解するのに時間がかかる。
(うわぁ、びっくりしたぁ・・・可愛い顔して言うこと辛辣だなぁ・・・)
彼の言葉がナイフのように胸にグサリと突き刺さって、ズキズキ痛む。
「確かに・・・本来だったら一路さんと結婚できるような女ではないよね・・・。」
認めざるを得ない。
人に言われる以前に、日頃から私が一番感じていることだ。
「アンタに兄さんはもったいないよ。俺は、離婚して欲しいって思ってる。」
真っ直ぐに私を見つめる双葉の瞳には、明らかな悪意と敵意が見てとれた。
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