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『土下座』
しおりを挟む「桜雅君・・!!ごめんなさい!私が悪かったです。この通り・・・!お許しください!!」
リビングに桜雅が現れた瞬間、私は周りがドン引きするほど美しい土下座を披露した。
「なっ・・・繭ちゃん・・?」
当事者の桜雅も、見事にドン引きしている。
「繭、何もそこまでしなくても・・・・」
雫が慌ててフォローしてくれたけれど、私はその場を一歩も動かないと決めていた。
「うわ!?何してんの?桜雅さんが・・・繭たんを虐めてる・・・!?」
リビングに居合わせた夫全員が、何事かとこちらに注目している。
「私は桜雅君のこと本気で愛してます!これからもずっと大切にするので、離婚なんて言わないでください・・・!」
向き合うことを避けてきたせいで、愛する人を失うことになるのは御免だ。
雫とのことで、話すことの大切さ、向き合うことの重要性を痛感した。
「何これ・・・公開プロポーズ?」
「それを言うなら、公開謝罪じゃね?」
樹と泉がコソコソと耳打ちし合っている。
恥も外聞もない。私は桜雅と仲直りするためならどんなことでもすると、誓ったのだ。
「繭ちゃん・・・マジで土下座辞めて。俺が悪かった・・・・」
夫たちの注目の中、桜雅は罰が悪そうに口を開く。
「くだらねぇヤキモチ焼いて、大人気なかったっつうか・・・俺も仲直りしたかったから・・サンキューな。」
桜雅の言葉に、外野の夫たちから拍手が上がる。
マジで恥ずいわ・・と赤い顔で呟いた桜雅は、しゃがみ込むと私の身体を抱き上げた。
「桜雅すごーい!お姫様抱っこしてる~!」
「え、何やってんの?なんのイベント?」
ちょうど帰宅した晴日と愛が、事態を飲み込めず異様な光景に驚いている。
(私、桜雅君にお姫様抱っこされてる・・・♡桜雅君、やっぱりかっこいい・・・・♡)
「あ~、悪いけど、これから夕飯の時間まで繭は俺が独占するから。よろしく。」
それだけ言い残すと、私を抱えたまま彼は軽々と階段をのぼり、自室まで連れ戻った。
「マジで土下座とか勘弁。繭ちゃんは何やるかわかんねぇからほんと怖いわ。」
ソファに私を下ろすと、彼は「俺が悪かった」ともう一度低い声で口にする。
「私が悪いの!この前はごめんなさい。桜雅君が心配してくれたのに・・・」
「良いって。さっきも言ったけど、俺のくだらねぇヤキモチ。ほんとガキみたいでカッコ悪いけど・・・お前のこと独占したいって気持ちが・・未だにうまく消化できねぇ。」
「桜雅君、」
「ダセェよな。結婚してしばらく経って、他の男にお前が抱かれるって状況にも慣れて・・シノブも生まれて・・・。なのに、あの男と嬉しそうに話してるお前見て、繭は俺のもんなのにってムカついて・・・ほんとガキだわ。」
「桜雅君・・そんなふうに思ってくれてたの・・?」
「あ?それ以外何があんだよ。他の男に触らせたくないし、俺だけのもんにしたいって、本心ではいつもそう思ってる。」
「私と離婚したいのかと思ってた・・・」
「はぁ?繭ちゃんの思考回路って結構ぶっ飛んでるよな。離婚したいと思ってたらこんな執着して、、ダセェことになってねぇわ。」
「雫さんから相談されたとき、桜雅君が離婚するしかないって言ってたの聞いて・・なんだか不安でいっぱいになったの。」
「あ?あぁ、あれは雫さんの後輩の話だろ?大体結婚してんのに他の奴好きになるとか俺はねえから、そういう半端な奴は離婚するしかなくねぇ?と思っただけで、」
「そうなの?」
「なに、繭ちゃんは俺の気持ち疑ってんの?」
「そ、そういうわけじゃないけど・・・」
「ガキみたいな態度とって不安にさせたんだから、俺の責任だよな。心配させて悪かった。でも・・愛してなかったら出産とかマジむりだって。」
「そう、だよね。」
私はいつも都合よく忘れてしまう。
自分の中にある不安がどんどん大きく膨らんで、周りが見えなくなる。
夫たちが私に与えてくれている愛情や思いやりを、一切無かったことにしてしまうのだ。
桜雅の身体に抱きついた。
「ずっと・・こうしたかった。桜雅君に、甘えたかった・・・」
「繭、悪かった。俺が愛してんのは、一生お前だけだから。」
首筋に熱いキス。
キツく吸われてピリッと痛む。
「夕飯の時間までじゃ、全然足りねぇ。」
チラリと時計を見た彼が、私を抱え上げてベッドに押し倒す。
「桜雅君、大好き・・・」
律が夕飯に呼びに来るまでの間ずっと、私たちはベッドの中でお互いの愛を確かめ合った。
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