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『夫婦デート』
しおりを挟む久々に夫の楓と二人きりのデート。
子どもが生まれるとどうしても二人で過ごす時間が少なくなる。
「僕は結婚してすぐ妊娠したので、繭さんとゆっくりデートする休日に憧れてたんです。」
「ハルが生まれてもっと幸せになったけど、二人きりの時間は・・なかなか難しいもんね。」
「今日は僕が、繭さんをエスコートしますね。」
ニコッと天使のような笑顔を向ける夫に、これだけで充分幸せなんだよなぁとしみじみ思う。
楓の運転で、隣町までドライブ。
森林地区の多い青葉街は、ピクニックやキャンプの人気スポットが多い。
「緑が多くて、すごく気持ちいい!!」
人工的に作られた森林であるとわかっていても、開放的な気持ちになる。
楓が早起きして作ってくれたサンドイッチを一緒に食べたり、手を繋いでお散歩したり、幸せそうな彼の顔を見て過ごす時間は、何より私を癒してくれた。
夕方、突然降り出した雨に、あたりが急激に暗くなる。
「こっちの天気予報、見るの忘れてました。」
あまり遠出することのない私たちは、隣町の天気予報をチェックしていなかった。
この世界では定期的に人工の雨を降らせる。
人気のないキャンプ場の片隅に、雨宿り出来そうな小さなロッジがあった。
「うわ~びしょ濡れになっちゃった、楓君大丈夫?」
「大丈夫です、天気が良いのに人が少ないなぁと思ったら、大雨予報だったんですね。」
「濡れた服、脱いじゃった方がいいよね?ちょうどパーカーが、二人分あるよ。」
楓にプレゼントしようと思っていた、お揃いのパーカー。
着ていたTシャツを脱いで、クマとウサギがプリントされた可愛いパーカーをリュックから取り出す。
「楓君も、服脱いでこれ着て?」
彼の身体にあてて見たら、やはりとても似合いそうで得意げな気分になった。
雷が窓の外、遠くでピカッと光る。
「楓君・・・?」
私の手首を掴んだ彼の手が、ひどく冷たい。
「え・・・楓く・・・ん・・?」
「びしょ濡れで・・下着姿の繭さんを見て・・平気でいられると思ってるんですか?」
「か・・楓君、身体冷えてるよ、」
「僕だって・・・男なんですよ?」
彼の食い入るような視線に、心臓が破裂しそうになる。
一気に顔が赤くなったのを誤魔化すように目を伏せた。
「繭さんのそんな顔見たら・・・我慢出来ないです。」
雷光に照らされた彼の顔は、初めて見る男の顔をしていた。
強い力で引き寄せられ、唇を奪われる。
(か・・・楓くんじゃないみたい・・・!強引でかっこいい・・・っ)
「可愛い」というイメージが強い夫の、新たな一面。
「繭さん・・・僕が相手だからって、無防備すぎです。」
「楓君・・・だめ、ここじゃ・・・」
(こんなところでシちゃうの・・・?)
「繭さんと・・子作りじゃないセックスがしたいです・・・っ」
ダメとは口で言いながらも、私は流されるまま、珍しく強引な夫に身を委ねた。
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