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『朝帰り』

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音弥おとやと一晩中、素敵なホテルで夢のような時間を過ごした。

「朝帰りなんて音弥ずる~い。」

「朝帰りって響き・・・なんかすげぇエロイ・・!!」

玄関を開けるなり、学生組の夫たちが集まってきた。
マイペースな天然キャラの晴日はるひと、まるで中学生のように大袈裟に騒ぎ立てるムードメーカーのいつき

「マユたんが行ってみたいって言ってたホテルに、行って来たっす・・・」

エロイ!エロイ!と騒ぐ樹に、真っ赤な顔で俯く音弥。
どちらが年上かわからない。

ちょうど2階から降りてきた桜雅おうがが玄関を横切って、一瞬目が合った。

「へえ・・・そうかよ。」

(冷たい・・!やっぱりまだ桜雅君怒ってる・・・ぅ・・・・)

「え?あれ、おうちゃん、なんか怒ってる・・?!」

音弥と桜雅は仲が良い。
音楽の趣味が合う彼らは、よく一緒にライブに行っている。

一言だけ吐き捨てるとリビングへ消えていった桜雅に、私は心底落胆した。

「どこのホテルに行ってきたの?」

おかえりなさい、と顔を出したしずくと目が合う。
女性と肩を寄せ合って歩く彼の姿がフラッシュバックして、思わず目をそらしてしまった。

「・・あ、マユたんが前に雑誌で見て気に入ってた山葉町のホテルっすよ。」

音弥がフォローしてくれたけれど、鋭い雫は私のおかしな態度に気づいただろう。

(あ~もうどうしてこんな感じになっちゃうかなぁ、私・・・)

昔の自分に戻ったみたいだ。
モテなくて卑屈で一生結婚なんて出来ないと悲観していた、あの頃の自分に。

恋愛経験が乏しい私にとって、怒っている夫を宥めることも、夫の浮気疑惑を解消することも難しすぎる課題だった。






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