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『俺を染めて』
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スイートルームをとってある、なんて言われたから、新婚初夜のあれこれがあるだろうと覚悟して来た。
覚悟というより、期待だったのだと気付く。
スイートルームで待つ夫が、シャワー後のバスローブ姿で出てくるのを想像して来たのに、一路はいつも通りスーツを身に纏ったまま出迎えてくれた。
「何か飲むか?ルームサービスでも頼もうか。」
この世界は、男性にとって厳しい。
今までモテモテで女をより取りみどりであっただろう我が家の夫たちは、今や女性と知り合うことさえ難しい。
女性の数が、極端に少ない世の中なのだ。
欲望のコントロールは、女である私が想像している以上に大変だろうと思う。
それなのに、一路は実に穏やかな態度で、私と向き合っている。
「あの・・・シないんですか・・・?」
「なにを?」
「新婚・・・初夜ですよね・・・私たち。」
「あぁ、」
まいったな、と言うように、彼が苦笑した。
「確かに新婚初夜だが、まだ君のことをよく知らないし、よく知らない男に抱かれるのは、君も嫌だろう?」
全然っ嫌じゃないです!!と内心オールウェルカムな私が大声で叫んでいるけれど、何とか欲望を抑える。
スーツ姿の男性は、どうしてこんなに魅力的なのだろう。
仕事がデキる、経営者としての彼。
私は彼のその顔しか、まだ知らない。
「俺は結婚なんて、一生しないと思っていた。一番優先すべきは仕事で、何より好きなんだ。」
私も結婚なんて出来ないと諦めていた。
人生なにが起きるか、わからない。
「だけどこんな世界になって・・・帰る場所がある幸せを、手に入れてみたいと思った。」
「わかります。家族が笑っていてくれるだけで、幸せだなって毎日思います。」
「会社では社員たちに特別扱いされて威張ってるくせに、家庭では妻にどう接していかもわからないなんて、情けないな。」
大きな窓から夜景を見下ろしながら、一路がこちらへ手を差し出す。
「俺に、一から教えてくれるか?」
「一路さん・・・」
「妻の扱い方については、ど素人だ。君の好きなように、俺を染めて欲しい。」
世界を飛び回る凄腕経営者の彼に、そんなことを言われるとは。
「どんな夫が君の理想なのか、知りたいんだ。」
彼の指が、髪に触れる。
私の髪に指を絡める仕草は、大人の男の色香全開だった。
覚悟というより、期待だったのだと気付く。
スイートルームで待つ夫が、シャワー後のバスローブ姿で出てくるのを想像して来たのに、一路はいつも通りスーツを身に纏ったまま出迎えてくれた。
「何か飲むか?ルームサービスでも頼もうか。」
この世界は、男性にとって厳しい。
今までモテモテで女をより取りみどりであっただろう我が家の夫たちは、今や女性と知り合うことさえ難しい。
女性の数が、極端に少ない世の中なのだ。
欲望のコントロールは、女である私が想像している以上に大変だろうと思う。
それなのに、一路は実に穏やかな態度で、私と向き合っている。
「あの・・・シないんですか・・・?」
「なにを?」
「新婚・・・初夜ですよね・・・私たち。」
「あぁ、」
まいったな、と言うように、彼が苦笑した。
「確かに新婚初夜だが、まだ君のことをよく知らないし、よく知らない男に抱かれるのは、君も嫌だろう?」
全然っ嫌じゃないです!!と内心オールウェルカムな私が大声で叫んでいるけれど、何とか欲望を抑える。
スーツ姿の男性は、どうしてこんなに魅力的なのだろう。
仕事がデキる、経営者としての彼。
私は彼のその顔しか、まだ知らない。
「俺は結婚なんて、一生しないと思っていた。一番優先すべきは仕事で、何より好きなんだ。」
私も結婚なんて出来ないと諦めていた。
人生なにが起きるか、わからない。
「だけどこんな世界になって・・・帰る場所がある幸せを、手に入れてみたいと思った。」
「わかります。家族が笑っていてくれるだけで、幸せだなって毎日思います。」
「会社では社員たちに特別扱いされて威張ってるくせに、家庭では妻にどう接していかもわからないなんて、情けないな。」
大きな窓から夜景を見下ろしながら、一路がこちらへ手を差し出す。
「俺に、一から教えてくれるか?」
「一路さん・・・」
「妻の扱い方については、ど素人だ。君の好きなように、俺を染めて欲しい。」
世界を飛び回る凄腕経営者の彼に、そんなことを言われるとは。
「どんな夫が君の理想なのか、知りたいんだ。」
彼の指が、髪に触れる。
私の髪に指を絡める仕草は、大人の男の色香全開だった。
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