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『出産恐怖症』
しおりを挟む「愛ちゃん・・・?!」
煌大のアトリエに差し入れを持って行くと、離婚協議中の夫の姿があって驚いた。
「久しぶり。荷物整理しに来ただけだから、そんな顔しないで。」
淡々とした口調で突き放した愛に、怯まず抱きつく。
「愛ちゃん!!会えて嬉しい・・・・っ」
「俺が、呼んだんだ。」
煌大が、気まずそうに私から目をそらす。
「ほら、お前ウジウジしてないでさっさと言えって。」
可愛い顔立ちに似合わず、相変わらず男らしい愛に急かされ、
煌大が観念したように、私の前へ歩み出た。
「繭、ごめん。俺・・・お前の子どもを、産むことが出来ない。」
「え・・・っ・・」
(まさか煌大君も・・・子どもを産めない身体に・・・・?!)
愛に告白された、あの日の記憶がまざまざと蘇る。
まさか煌大まで、私との離婚を申し出るというのだろうか。
身体から一気に力が抜けていき、私はその場に座り込んでしまった。
♢♢♢
「出産・・恐怖症・・・?」
この世の終わりかというような深刻な表情で、煌大はゆっくりと重い口を開いた。
「桜雅さんの出産に立ち会って、産むのが怖くなったんだ・・・。」
壮絶な出産を目の当たりにして、産むのが怖くなった。
妊娠したいという想いが、揺らいでしまった。
それが今の彼の、正直な気持ちなのだという。
「愛に相談して、一緒に病院に来てもらった。医者には出産恐怖症だって言われて・・・。」
「こんな制度が普及してるけど、恐怖症で産めない男性もかなりいるみたいだよ。」
黙り込んだ煌大を、愛がすかさずフォローする。
病院に付き添ってくれたという彼の優しさに、私は感動してしまった。
子どもを産むことが出来ないと診断された病院に足を運ぶのは、覚悟のいることだっただろう。
煌大の言葉に多少のショックはあるけれど、それ以上に共感できる部分が多くて妙に納得してしまう。
女性が産むのが当然だった頃、私も出産に恐怖心を抱いていたから。
命がけで新しい生命を産み出す。
それがどれほど尊くて素晴らしいことだとわかっていても、恐怖心は拭えない。
「妊活始めたいって申し出たのは俺だけど・・・・少し考えさせて欲しい。」
夫の真剣な言葉を前に、私はただ黙って頷くしか出来なかった。
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