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『セックスレス?』
しおりを挟む桜雅の出産が終わったら、と妊活を申し出てくれたのは、雫だけではなかった。
楓や桜雅の出産を経て、新しい家族が増える喜びに触れたことで、子どもを産みたいという願望が強くなるのは自然なことなのかもしれない。
芸術家として活躍している煌大も、その一人だ。
煌大との、久々の当て日。
無理矢理じゃないと興奮しないという性癖はどこへやら、彼との交わりは穏やかで優しいものに変わっていた。
作品に打ち込みたいと言う彼の要望で夜の営みはしばらくお預けだっただけに、期待が膨らんでいく。
「煌大君・・・・・?」
同じベッドに入った彼が、一向に何もしてこない。
サービス精神旺盛な煌大が、ベッドで私に背を向けるなんて初めてのことだった。
「どうしたの?具合悪い・・・?」
「ごめん・・・繭・・・今夜は、出来そうに無い。」
背を向けたまま言う彼に、不安がよぎる。
体調が悪いのだろうか・・?
「大丈夫?何か温かいものでも持ってこようか?」
「・・・ゆっくり休みたいから、一人にしてくれないか?」
「でも・・・心配だから、隣で寝ちゃダメ・・・?」
「・・・ごめん。」
こちらを見ようともしない彼に、心がざわつく。
(煌大君・・・一体どうしちゃったの・・・・?)
♢♢♢
「そういうの、セックスレスって言うんじゃないの?」
年下の夫があどけない表情で放った一言にズキンと胸が痛んだのは、きっと心当たりがあるせいだ。
「な・・・お前急に何言い出すんだよ。」
樹の言葉に反応した泉の顔が、みるみるうちに赤く染まっていった。
年下の夫たちは、ウブで可愛い。
「だって律さん、繭たんともう3ヶ月もエッチしてないんでしょ?俺なら絶対耐えられねぇ~!!」
樹はいつでも直球で、悪気なく爆弾発言をするから気が抜けない。
まるで自分の子を見るような優しい眼差しで、律は優しく笑った。
「セックスレスとは少し違うかな。仕事が忙しいから、当て日を調整してもらったんだ。」
仕事が忙しい律は、最近家を空けることが多かった。
多忙による疲労や体調不良など、夫たちにもそれぞれの事情や都合がある。
たった一度拒まれたくらいでセックスレスと決めつけるのは早計すぎるだろう。
(まさか・・・作品に打ち込みたいって当て日を先延ばししてたのも・・・・私とシたくないから・・・・?)
いつもと違う煌大の態度に、不安は募るばかりだった。
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