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『妊活』

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まゆ、次の当て日から、本格的に妊活始めたいんだけど、いいかな・・・?」

緊張した様子で私を見つめるしずくの顔が、赤く染まっている。
出産が無事に終わり、桜雅は息子のシノブと共に我が家に帰ってきた。

終始彼を側で支えてくれた雫は、子どもを持つことについて決意を固めたようだ。

「雫さん、嬉しいです。もちろん、よろしくお願いします!」

妊娠出産は、夫の身体に負担がかかる。
安易に子どもが欲しいだなんて産まない私からは言えないけれど、夫が願ってくれるのは純粋にとても嬉しいことだった。



「妊娠」するための性行為と言っても普段と何も変わらないはずなのに、なぜだか妙に緊張してしまう。

透き通るような白く美しい肌、サラサラの黒艶髪、爪の形が細長くて綺麗な指、優しいけれど芯のある黒目がちな瞳、線の細いスラリとした身体。
彼を構成するすべての要素は、美しい。
子どもに全部遺伝すればいいなぁと、願いながら彼と抱き合う。

私は、彼の全てが大好きなのだ。


「繭・・っ・・中に・・・たくさん・・出すよ・・・っ・・・」

「雫さん・・っ・・・中に・・・いっぱいください・・・!」

「愛してる・・・っ・・繭っ・・ぅ・・・あ・・・・イク・・・ッ!!!」

いつもより、さらに深く彼が私を求めているのがわかる。
二人の愛の結晶。まさにそんな言葉がピッタリくるような、愛の交わり。



「繭も、ここにいて?」

情事の後の医療的処置。
医師の慶斗けいとが、妊娠に必要な処置をしてくれる。

性行為が終わった後すぐにしなければならない処置のため、どうにも気まずい空気が流れるこの瞬間は何度経験しても慣れそうになかった。雫は私の手をぎゅっと握りしめている。


「雫、入れるから力抜いてて。」

タオルがかけられていて見えないけれど、雫の体内に私たち二人の体液がゆっくりと注入されていく。
何度経験しても、不思議で仕方ない男性妊娠の仕組み。


「繭、お腹触って?」

雫が、私の手をお腹へと導いた。


「俺のここに・・二人の赤ちゃんが、きてくれますように。」

(雫さん・・・っ!!・・か・・・可愛い・・・・♡)


彼の細く綺麗な身体の中に、子どもが宿る神秘を想う。
何度想像してみても、やっぱり不思議で実感が湧かなかった。



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