上 下
86 / 182

『二人きりの夜』

しおりを挟む


ライトアップされた、夜のテーマパーク。
夜景が一番綺麗に見えるスポットに、しずくが案内してくれた。

これから花火が上がるらしい。
どの辺に見えるのか聞こうと顔を上げたら、彼と唇が重なった。

もう一度、チュッと音を立てて、彼が唇を重ねる。
周りの男性たちが、ギョッとしたのがわかった。


「ごめん、少し大胆過ぎたね。」

赤い顔で苦笑する雫を見て、キュンとなる。
周囲の目を気にせずに行動するなんて、彼には珍しいことだった。

今度は私の方から、衝動的にキスをした。

閉園間際の花火が上がる。


「ホテル、戻ろう。」

しばらく黙り込んでいた彼が、繋いでいる手にぎゅっと力を込める。

「でも、まだ花火が・・・」

「繭と、早くシたい。」

(雫さんのこんな顔・・・初めて・・・・っ)

男性の荒々しい部分をあまり見せない中性的な彼が、男の顔をしている。



ホテルの部屋。
扉がバタンと閉まる音と同時に、深く口付けられた。

もう待てないと焦る彼が、トレンチコートを脱ぎ捨てる。
乱暴な手つきで私の服を脱がすと、彼は私の胸元を吸い、赤く痕を残した。

大きなベッドに押し倒され、身動きが取れない。


「繭、もう我慢できない・・・めちゃくちゃに、抱いてもいいかな・・?」

ハァハァと肩で呼吸する彼は、切なそうな表情で私を見下ろしている。
ギリギリ理性を保っているのだとわかる官能的な表情。

「雫さんに・・・めちゃくちゃにされたいです・・・っ」

自らスカートを捲し上げて、腰を揺らす。
彼は私の下着を勢いよくおろし、細く長い指で私の内側を探った。

「あっ・・・んぅ・・・ぅ」

「すごい・・・溢れてるよ・・繭も、俺が欲しかった?」

「雫さんが・・・っ欲しくてたまらなかった・・・っ」

「今すぐ、あげるね。」

ぐんと最奥に入り込んだ彼の熱に、息を飲む。
二人きりの部屋に、雫と私の喘ぎ声が響いた。



「繭をずっと・・俺だけのものにしたい。」

「雫さん・・っ・・・」

いつもは抑えている、彼の本心。
他の夫たちを気遣い、私を困らせないように伏せている、雫の独占欲。

「大丈夫。心配しなくても、ちゃんといつもの俺に戻るから・・帰るまでは、俺だけの繭でいて・・・?」

甘えるような彼の声。
彼は返事も待たず、私の中に欲望を何度も何度も突き立てる。


「繭・・・っ愛してる・・・っ」

身体の奥深くに彼の熱を感じながら、私は意識を手放した。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

潰れた瞳で僕を見ろ

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:21

チェンジ

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1

風ゆく夏の愛と神友

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:766pt お気に入り:1

疲労熱

BL / 完結 24h.ポイント:603pt お気に入り:4

息抜き庭キャンプ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,384pt お気に入り:8

雪の王と雪の男

BL / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:20

俺の妹になってください

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,327pt お気に入り:9

十年目の恋情

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:42

処理中です...