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『テーマパーク』
しおりを挟む夫の仕事関係者から、テーマパークの招待券を数枚もらった。
せっかくなので夫婦でデートしようということになり、私の知らないうちにじゃんけん大会が行われていたらしい。
勝ち残った数名の夫たちと、それぞれ日程を合わせてテーマパークデートをすることになった。
「俺、激しいのは苦手で・・・なるべく落ち着いたアトラクションだと嬉しいかな。」
苦笑しながら申し訳なさそうに私を見た夫、雫の言葉にホッとする。
「私もあまり激しいのは得意じゃないんです。」
回転したり、急激に落下したりする乗り物は、苦手だった。
最年少の夫、樹はぐるぐるまわる激しいアトラクションが大好きらしい。
彼と一緒に来たら、早々にリタイアする羽目になりそうだなと苦笑する。
「じゃあ、これなんてどうかな?」
テーマパークの地図上で雫が指差したのは、可愛いゴンドラに乗って世界遺産や大海原、素晴らしい景色の中を旅するアトラクション。
「楽しそう。行きたいです!」
テーマパークでデートなんて初めてのことで、テンションが上がり切った私の大声に、彼は一瞬驚いたような表情を浮かべた。
次の瞬間、目を細めて優しく微笑む。
(し・・・雫さんの笑顔・・・眩しすぎ・・・♡)
夫の笑顔に、見惚れてしまう。
顔が赤くなっているのを自覚しながら、目をそらした。
「手、繋いでも良いですか?」
こちらへ手のひらを向けた雫が、うっすらと頬を赤く染め、私の返事を待っている。
「もちろんです。・・・雫さんの敬語、久々に聞いたのでびっくりしました。」
初めて肌を重ねるまでは、彼が敬語で話していたことを思い出す。
彼の初めての相手が、自分だということも思い出した。
「繭とデートだって思ったら、なんだか緊張して・・・夫婦なのに変だよね。」
困ったように笑う彼が、可愛い。
彼の手を取ると、緊張しているのが伝わってきてこちらまで緊張してしまう。
雫の雰囲気がいつもと全く違って新鮮だった。
ラフなパーカーの上に、トレンチコートというコーディネート。
普段は落ち着いた服装が多い。パーカー姿というだけで、非日常感がすごかった。
「初デート、だね。」
想いを伝える時に首を傾げる彼の癖が、私は大好きだ。
黒艶髪がサラリと音を立てるように綺麗に揺れる。
黒目がちな彼の瞳。白肌に、上気した頬。
彼は、とても美しい。
「初デートですね。」
私たちは付き合いたてのカップルのように初々しく、恋人繋ぎをして歩き出した。
♢♢♢
「繭、お昼なに食べたい?」
雫はいつも、私の意見を聞いてくれる。
「えーっと・・・なんでも良いです。」
主体性の無い返答をする私に彼がくれるのは、いつも最適な提案。
「このカフェは、繭が好きな苺と生チョコのパンケーキセットがあるよ。」
「わ~美味しそう!」
「デカフェコーヒーもあるし、そろそろランチにしようか。」
雫は提案するのが上手い。
相手の好きなもの、傾向を把握し、心地よく過ごせるようにいつも配慮してくれる。
私が決められないのを想定して、お店の下調べをしてくれていたのだとすぐにわかった。
「繭ってすごく幸せそうに食べるよね。」
テラス席でパンケーキを口いっぱいに頬張る私を見て、彼がふっと優しく笑う。
「今すごく幸せですもん、私。」
苺とチョコレートの、甘い組み合わせ。
目の前には、優しくてルックスも抜群の夫がいてくれる。
「俺もだよ。繭と結婚して良かったって、毎日思ってる。」
手を伸ばして私の頭を優しく撫でる彼の目は、愛情に溢れていた。
(雫さんに・・・頭、撫で撫でされた・・・っ・・・!!ものすごい破壊力・・・・!!)
「繭の可愛い一面をいっぱい見たから・・・俺、今夜は燃えちゃいそうだな。」
(え・・・?!今、なんて・・・・?!雫さんが・・・燃え・・・っ・・!?)
彼が小さく呟いたその言葉に、私は心底驚いた。
今夜はテーマパーク内にあるお城のようなホテルに、彼と二人きりで宿泊するのだ。
動揺して挙動不審になっている私に、彼は意味深な表情で微笑む。
ホテルのベッドの上で妖艶に迫る彼の姿が頭に浮かび、私はそれを慌てて打ち消した。
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