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『行方不明』

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綾人あやとさん、俺のまゆちゃんを独り占めすんのやめてもらえません?」

ゆずると手を繋いでいたのを目撃された私は、一晩中夫の綾人にお仕置きされ、翌朝は思い切り寝過ごしてしまった。

自室に居ない私の行方を、夫たちが手分けして探していたらしい。
裸のまま綾人と寝入っている私を、桜雅おうががベッドサイドに立ち不機嫌マックスの顔で見下ろしている。

「桜雅のエッチ。夫婦の寝室に勝手に入り込むなんて、ルール違反だろ。」

容赦無くぶつけられる桜雅のキツイ視線を物ともせず、綾人は軽口を叩く。
寝起き姿も、相変わらず美しい。

綾人は昨夜のブチギレ事件などまるでなかったかのように、爽やかな王子様スマイルを桜雅に向けている。
寝室に乗り込まれたというのに、いつも通りの余裕な態度で、もう一人の夫と見つめ合う。

寝乱れた髪をかきあげる姿に、思わず見惚れてしまった。

「ルール違反はどっちっすか。みんなどれだけ心配したと思ってんの。朝起きたら繭ちゃんの姿が見えねぇから、行方不明だって大騒ぎになってんだよ。」

大きく膨らんだお腹を庇うように手で包みながら、桜雅はドスの効いた声で言うと、キッと綾人を睨みつける。

「行方不明だなんて、大袈裟だな。」

「ご・・・ごめんなさい・・・・。」

こんな事態になったのは私のせいなんです、と昨夜の失態を白状しようとして、綾人にさえぎられた。

「大人気なく嫉妬して繭をめちゃくちゃに抱いた俺のせいだから、大目に見てよ、桜雅。」

男でも惚れ惚れしてしまうような妖艶な微笑みで、綾人は桜雅の頭を撫でる。


「あんたほんと嫉妬深いよなぁ。繭ちゃんに酷いことシてねぇだろうなぁ?」

頭を撫でている綾人の手を跳ね除けながらも、彼の頬は少し赤い。
二人はとても仲が良く、いつもこんな風にじゃれあっていた。

お互いに気を許し合っているのだとわかる、距離感。


「嫌だな、桜雅。俺は繭に、気持ちイイことしかしてないよ?」

ね、繭?と囁いた綾人は、私の額にチュッと音を立てて口付ける。
ふわりと彼の香りが鼻を掠め、条件反射で身体が熱くなった。

昨夜の情景が一気に目の前に広がって、私は鼻血を吹き出しそうになる。

(た・・・確かに気持ち良かったですけど・・・っ!綾人さん、本気で怒ってたわけじゃ・・なかったんだ・・・良かったぁ・・・・♡)

彼がもう怒っていないのだとわかり、胸を撫で下ろす。
怒りに任せて激しく求めてきた昨夜の彼は、思い出すだけで濡れてしまうほど扇情的だった。


「あぁ~、綾人さん、マジでうぜぇ。繭ちゃん早く服着て。みんなリビングで待ってるから。」

脱ぎ散らかしてあった私の服を手渡してくれた桜雅は、綾人に対抗するように私の唇にキスをする。

「桜雅・・君・・・・っ」

(あ・・綾人さんの前で・・・キ・・キス・・・・!桜雅君・・・相変わらず男前でかっこいいなぁ・・・・♡)

何度も抱き合いお互いの身体を知り尽くしていても、キスだけでときめく。
鼓動はうるさいほどに、ドキドキと高鳴っていた。


「桜雅、俺の前でそういうことすんの、マジでやめて。」

「あんたに言われたくないんだよ。裸でいつまでも俺の繭とイチャイチャしてんじゃねぇ。」

「繭は、俺の、奥さんね。」

「いや、俺の妻でもあるんだよ。」

「俺の前で、繭に触れるの辞めろ。今後絶対禁止な。桜雅は、俺が嫉妬深いの知ってるだろ。」


仲が良い二人は、お互い一歩も譲らず顔を寄せ言い合っている。



朝から二人のイケメン夫に挟まれ、取り合いされる私は、世界で一番幸せな妻に違いなかった。



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