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『お仕置き』

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お風呂に直行するというゆずるけいとは廊下で分かれ、自室に戻ろうと歩き出すと、前を歩いていた綾人あやとの部屋に、突然引き込まれた。

「どうして俺が引き留めたのか、わかるよね?」

バタンと、扉が閉まり、壁ドンされる。
一瞬目があっただけで、怖い、と身構えるほどの迫力に、驚いた私は動けなかった。

綾人の視線がひどく冷たい。
彼が怒っているのだと、肌でビリビリと感じる。身動きできない。

「あ・・・あの、綾人さん・・・・?」

夫だというのに、彼のことを何も知らない。
こんな表情を見るのは初めてで、どうしたら良いかわからず慌てる。

「さっきのアレ、何?手、繋いでたよね。」

衝撃に、身体が大きく震えた。
テーブルの下で、譲と手を繋いでいたことに、彼は気付いていたのだ。

(綾人さん・・・気づいてたんだ・・・・どうしよう・・・っ)


「俺のこと、ナメてる?」

普段とはまるで別人のような、彼の視線。
責め立てるような口調。

冷や汗が出て、一気に身体が冷えていった。

「俺のこと、ナメてんの?それとも、挑発してるとか?」

私をにらみつけながら、彼はスーツのジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩める。

どうしよう・・そんな言葉しか、頭に浮かばなかった。

彼が怒っているのを、初めて見る。
いつもどれだけ優しく接してくれていたのかと、彼の冷たい視線を浴びながら、痛感した。


「夫の目の前で、夫以外の男に触れるって、どういうことかわかるよね?」

「ご・・ごめんなさい・・・」

「夫の俺を差し置いて、他の男に手を握らせるような、ふしだらな女だったんだ?」

「綾人さん・・・っ・・・」

至近距離に迫る彼の顔を、まともに見ることが出来ない。
王子様という言葉がぴったりなイケメン夫が、見知らぬドSな表情を浮かべて立っていた。


(ど・・どうしよう・・・綾人さん・・・怒った顔もかっこいい・・・・!)

まるで場違いな、呑気なセリフを吐きながら、私の頭はフリーズした。


「お前にはガッカリだよ。」

シュルリとネクタイを引き抜いた彼が、私をベッドに乱暴に押し倒した。
噛み付くような、激しいキス。

(お前呼び・・・か、かっこ良すぎ・・・・♡)

反省すべき状況なのに、目の前の夫のかっこよさに、見惚れてしまう。


「ごめんね、繭。俺、知らなかったよ。自分がこんなに嫉妬深い男だったなんて。」

声を荒げているわけではないのに、恐怖を感じる静かな声。
あざけるように、彼は続ける。


「めちゃくちゃに抱くから覚悟して。俺は繭の夫なんだから、いいよね?」

普段あまり本心を見せない綾人の、き出しの感情。


「たっぷりお仕置きしてあげるよ。」

引きちぎるようにブラウスの胸をはだけさせた彼の顔を見ながら、私は自分が興奮しているのを他人事のように傍観していた。


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