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『おあずけ』

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リビングに置き忘れていたスマホを届けるため、大和やまとの部屋に入ったら、突然抱きしめられた。

まゆ、そんな風に無防備に、部屋に入ってくるなよ。」

切羽詰まったような、余裕のない彼の声。
この部屋で二人きりになるのは、新婚初夜以来だった。

最近の彼は、あの頃とはまるで別人のようだ。
横柄おうへいな態度はなくなり、他の夫たちともうまくやっている。
しずくとも和解したのか、最近二人でよく出かけているらしい。


「二人きりになると、ついお前に触れたくなる。」

悪い、と小さな声でつぶやいた彼は、無許可で私を抱きしめたことについて謝っているようだった。

(大和さんの身体・・・・服の上からでもわかる男らしさ・・・♡)


彼の背中に腕を回し、抱きしめ返す。

驚いたように、ピクリと彼の身体が震えた。


「いいのか・・・?」

熱い胸板に耳を押し当てると、彼の鼓動の速さが伝わって、こちらまで緊張してくる。

「大和さん・・」

「どれだけおあずけされたと思ってるんだ。一度OKされたら、途中で辞めるなんて、出来そうにない。」

欲望を押さえ込もうと努力する、彼の声。
低くて、官能的な、男の声。


「嫌なら、今そう言ってくれ。」

「嫌じゃ・・・ないです・・。」

欲しい、と素直にいうことが出来なかった。


大和の真剣な顔を見ると、今でも少し怖いと感じる。
精悍な顔立ち、広い肩幅、大きな背中、筋肉隆々の腕や脚。
彼の身体は、どのパーツを取って見ても、たくましい。

彼の身体を見るたびに、心がひどくざわつくのは、恐怖心が理由ではないのだと、今気付いた。

この感情は、激しく狂おしいほどに彼を求めている証なのだと、今ならわかる。


「繭、愛してる。」

「大和さん・・・」

「お前の嫌がることはしたくない。お前が望むような・・・良い夫になりたいと思ってる。」


(本当に同じ人・・・?!紳士的な大和さん・・素敵・・・・♡)

紳士的な彼の態度に、ただでさえイケメンに弱い私の心は簡単にぐらついてしまう。


(当て日でもないのに、昼間から、大和さんと初エッチ・・・?!)


リビングには桜雅おうがしずくもいるし・・学生組も帰って来ちゃうし・・・と、脳内で忙しく考えながらも、大和の持つ魅力に抗えそうにない。


「抱いても・・良いか?」

頬を優しく撫でる彼の指の感触だけで、変な声が出てしまいそうなほど、私は興奮していた。



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