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『ブラコン』

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2階から階段を降りていくと、ちょうど夫のらんが帰宅したところだった。

「蘭君、おかえりなさい。」

「こんにちは。」

(こんにちは・・・?)

玄関で黙ったままこちらを見つめている蘭に、違和感を覚える。

(蘭君・・・何だかいつもより目つきが鋭いような・・・・?)


「へぇ。君がまゆ?思ってたのと、全然違うな。」

品定めするように、頭のてっぺんからつま先まで視線を往復させている彼は、やはりいつもと様子が全然違っていた。

おっとりとした可愛らしい声が特徴的な彼が、妙にサバサバした口調で話す。
玄関から一歩も中に入ろうとせず、黙って私を見つめている。


「蘭君・・・?どうしたの・・・?」

「自分の夫かどうかも、わからないんだ?俺は、そう。蘭の双子の弟だよ。」

「え・・・?え~~~~?!」


(蘭君って双子だったの・・・・?!こんな可愛い男性がこの世に二人もいるなんて、あり得る・・・・!?)



♢♢♢



蘭と奏は、一卵性双生児らしい。
自分の夫だというのに、まるで見分けがつかない。

ゆっくり話す蘭と、責め口調で話す奏。
妻としては情けない限りだが、話し方で見極めるしかなさそうだ。

「繭さん、ごめんなさい。奏は口が悪いから・・何かひどいこと言われませんでしたか・・?」

「嫌だな。蘭の奥さんに失礼なことなんて、言うわけないだろ?」

奏は、かなり重度のブラコンらしい。


「蘭を傷つけるようなことしたら、俺は絶対にアンタを許さない。わかってるよね?」

蘭に聞こえないように、小声で圧力をかけまくってくるので落ち着かないけれど、その威圧的な笑顔もやはりイケメンには違いなかった。
可愛い顔に似合わずキツイ口調で攻め込んでくる様は、まさにギャップ萌えというやつで、私はすっかり奏に魅了されてしまっている。

(蘭君の可愛い顔で虐められるのって、なんだか変な感じ・・・目が離せなくなっちゃう・・・)


「しばらくここに居て、君が蘭にふさわしい女なのかどうか、じっくり見極めさせてもらうよ。」

好戦的な奏の言葉に、私は激しくときめいていた。

「蘭君の大切な弟さんなんですから、どうぞゆっくりしていってください。」

私の言葉に拍子抜けしたような表情で、彼は「ふーん。」と意味深に呟いた。



♢♢♢


「ねえ、蘭との夫婦の営みって、どんな感じ?」

「え・・・!?」

しばらくの間、我が家で暮らすことになった奏を、客間に案内する。
二人きりになった瞬間、彼は壁に私を追いつめて、とんでもない質問を口にした。

(ち、近い近い近い・・・・!!イケメンのドアップは、心臓に悪いってば・・・!!)

挑発的な瞳で見下ろしてくる彼に、私の心臓は簡単に破裂しそうになる。


「蘭って・・・どんなセックスするの?」

「そ・・そんなこと聞いてどうするんですか・・?」

「ただの興味本位だよ。双子って、シンクロすることが多いんだ。」

「シンクロ・・・?」

「そう。別々に暮らしてても、同じ日に同じ場所で出会でくわしたり、テストで全教科同じ点数を取ったり、不思議なものだよ。同じ人を好きになったり、ね。」

彼は意味深な視線と共に、見事な「壁ドン」を披露し、私を落としにかかる。


「蘭が好きになったってことは・・・俺も、君を好きになっちゃうのかなぁ・・・?」

「え・・っ・・・?!」

「俺と蘭がシンクロしてるかどうか・・君の身体で、確かめてみる?」

「奏・・・さん・・・ッ・・・困ります・・っ」

唇が触れ合いそうなほどの、至近距離。
いつの間にか、両手首は彼にがっしりと掴まれて身動きが取れない。
ふわりとしたベージュの綺麗な髪が、私の顔に触れる。
本当に彼は、夫の蘭にそっくりだ。

唇が重なるという瞬間。


「あはは、冗談だよ。本気にした?」

ぎゅっと目を閉じた私の顔を見て、彼が声を上げ笑い始めた。


揶揄からかわれたというのに、私は彼の笑顔に見惚れてしまう。
先ほどまでの挑発的で意地悪な表情は、消え失せていた。

「君、揶揄からかわれやすいでしょ。」

恥ずかしさと悔しさでいっぱいになりながら、ジロリと彼を睨む。
彼は、ポンポンと優しい手つきで私の頭を撫でて、微笑んだ。

「ごめんごめん。繭って、可愛いね。」

その微笑みが、あまりに強烈なイケメンオーラを放っていたので、私は思わず息をのむ。
最近私の身の回りには、夫以外の誘惑が多くて困ってしまう。

まるで初恋を経験したばかりの少女のように、呆然と彼の笑顔に見惚れてしまった。


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